ある日ぼくはきみたちを迎えに行って連れ帰ったけれど、きみたちが聴かせてくれた調べはぼくの空間の中でゆがんだまま固まってなかなか本当の姿になって響こうとしなかった。それだけのことだった。だからぼくは何度もきみたちの歌や演奏をぼくの部屋で鳴らし続けたんだ。実はかなりの度合いで自棄気味な気分を抱えたまま。
きみたちの存在をぼくに教えてくれたのはミュージックライフという月刊誌だった。なかなかの厚みを持った洋楽専門誌だったけれど、今にして思えばそれはどちらかと言えばきみたちの奏でるような音楽とは正反対の種類の音楽を鳴らすバンドを中心に扱っている雑誌で、そこできみたちを知ったなんて奇跡に近い出来事だったのかもしれない。
でもとにかくきみたちのことをぼくに教えてくれたのは他ならぬミュージックライフだったんだ。ミュージックライフの、確か東郷かおる子さんには本当に感謝したいと、45年以上たった今でも本気で思う。そう。きみたちとの出会いがなかったら、今のぼくはどこにも存在していなかっただろうから。