消えた常識のわげ | 愛と平和の弾薬庫

愛と平和の弾薬庫

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目には笑みを。
刺激より愛を。
平穏より平和を。
音源⇨ https://eggs.mu/artist/roughblue

なんつうか、昔、20数年も前、僕はタクシーのお客さんだった。

つうか今でもお客さんになろうと思えばなれるんだが、

現在、主にやってるのは運転手のほうなんで、

お客さんだった時代は昔のこととする。


で、そんな時代、我々にとってけっこう大きな「タクシー問題」に、

「一万円札でタクシー代を払おうとすんじゃねえ!」

という問題があった。


別に誰に言われたことでもない。

ただなんとなく、いつのまにか、そういう命題が常識として、

肉体と意識の中にしみついていたのである。


だのに今は。


なんだか消えたのね。

「一万円札だけ持ってタクシーに乗るな」っつー常識が。

知らんうちに勝手に解消されてんのね。

けっこう大きな「タクシー問題」。


レジスター載せて走ってるわけじゃねんだからさあ。

んなことしたらたちまちタクシー強盗の餌食だべ。

年末に限らず、年中がタクシー受難の季節になっぺした。

そごらじゅうにタクシーの運ちゃんの死体が累々と積まれるごとになっぺさ。


だがらね、タクシーはレジスター載せで走んねの。

んでね、てえげえの運転手は10枚ほどの千円札だけポケットさ入れで、会社を出発すんのっしゃ。


そごにきて朝一発目にワンメーターに万札出さってみらい。


まあ、しゃあねえがら9千なんぼ釣銭出すっちゃ。

あーあ、もう千円札一枚しかねえよわ。商売なんてできねっちゃ。

しゃあねえがら買いたぐもねえ、タバコ買ってみたりガム買ってみたり、

すっとコンビニのあんちゃんもあ~んまりいい顔しねえよ、マジで。

されだどあるもんね、若えあんちゃんに、あーあ、タクシーの運ちゃんときたら

朝っぱらからこれだかんね、なんて顔されたこと。忘れもしねえ、七十一のXX店だげどね。


今は万札出されたくらいでグダグダいう運転手は減ってるさ、確かに。

でも本音は、


参ったニャ……


なのっしゃ。

消えた常識だげっとも、意味や理由はあったんだよ、ぼーや。


タクシー運転手の死体が累々と積まれる、

そんな光景を生まないための、そいづは常識だったのっしゃ。



ほんでまず、またのご乗車、よろしくね。