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第33話 社長が末期がん、そして事件

 

うつ病を克服し、一人暮らしをするために、実家から少し距離のある場所を選んで再就職をしてから数ヶ月、新しい生活スタイルにも慣れてきたのですが、採用面接から教室運営までお世話になっている塾経営の社長さんから驚くべき言葉が。

 

「末期の肺がん」

 

見た目にはがん患者だと分からないほど、社員よりも働いて、元気だと思っていたので、更に衝撃を受けました。タバコを吸っていないのに肺がんになったと。治療もされているようでしたが、詳しい話までは聞けませんでした。けれど、治療のために遠くまで行かれたりしたこともありました。

 

社長と言ってもまだ30代前半。子どもたちもまだ幼稚園児という幼さ。社員は他に数名いましたが、社長の弟さんや社長の奥さんが、社長の代わりに仕事をすることも増えてきました。

 

そしてとうとう入院してしまい、危篤状態に。入院直前まで元気に仕事をしていたと思っていたのですが、本当のところは分かりません。

 

そんな中、事件が起こります。アルバイト・パートの講師を含めたちょっとしたパーティーをした日、アルバイトの学生たちがデザートを買いにコンビニへ出かけた時、部屋に残されたのは私と、パートの60代の男性だけ。

 

このパートの60代男性に、前々からアピールされていたのは知っていたのですが、2人だけの空間になった時、背後から胸を揉まれたのです。その瞬間、まさかの出来事に恐怖とショックで動くことも話すこともできませんでした。

 

その後、学生がコンビニから帰ってきて、何事もなかったかのように過ごしたのですが、次の日からも、職場で2人きりになった時は、胸を触って来るようになりました。

 

これはおかしいと思いながら、どうして良いか分からなかったのですが、友達や知人に聞いて、警察に行った方が良いとか、上司に相談した方が良いとか、色々なアドバイスをもらって、これは犯罪だということを確信し、思い切って上司に相談しました。

 

社長は入院中で、そんなことを相談できる状況ではなかったので、社長の弟に相談しました。数人しかいない社員は皆男性だったので、話しにくく、普段は別々の教室にいるため、相談したとしても、きちんと対応してくれるかどうか、とても不安でした。

 

不安な気持ちのまま出社し、勤務する。そして、頼れる社長はいない。そんな状況で、気持ちは落ち着かず、市の相談やカウンセリング、弁護士さんなど、あらゆる機関へ相談に行きました。

 

そんなことをしている最中に、社長は32歳の若さで亡くなりました。社長が元気になって帰ってきてくれるまで頑張ろう、そんな気持ちで、気を強く持っていたのですが、社長が亡くなられて、私の気持ちも切れてしまいました。

 

会社に働きかけても、社長のいない会社はぽっかりと穴があいたよう。何もしてくれない会社ではなく、労働局や労基署にも相談に行きました。

 

そんなことをしながらも、切れてしまった気持ちを立て直すことはできず、社長が亡くなられてからは、出社することもできなくなりました。

 

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