世界のブナの森 -4ページ目

ギフチョウ・ヒメギフチョウの産卵調査

今日は遠路来られた植物の専門家を朝日連峰に案内しようと考えていたのだが、昨夜からどうしてもギフチョウの調査時期を逸するのではないかと気にかかり、そちらに行ってしまった。平凡な里山(それでも東北の魅力は満載)でお待たせすることになり恐縮だったが、不安どおり、すでにヒメギフチョウの一部が孵化していた。

 

午後の数時間で、下刈りをしている範囲の食草2997枚の葉を数えるのに精いっぱいで撮影の余裕もなかったが、とりあえず穴を空けずにデータをとることができた。連休明けにはこの一帯に調査に通うことになるのだが、ヒメギフチョウは孵化後は急速に数を減らしてゆくし、草がより生長して食草が発見しづらくなる。それにしても、あと3枚で3000枚だったか。

 

、「3500 3000 下刈り実施区2 2500 40 激 2000 排 6 1500 祥 餃 1000 35 30 500 o 25 15 拥 激 20 2020 2021 10 2022 5 5 食草数 2023 0 ―ギフチョウ 2024 ―ヒメギフチョウ」というテキストの画像のようです
去年は5月10日に調査したが、ギフチョウはまだほとんど産卵していないと考えられた。11日からタイワンブナの林に向かうため、この日に調査したのだった。2021年は5月14日、2022年は5月13日に調査して、もちろんヒメギフチョウは孵化していなかった。今年の雪が極めて少なかったことに加えて、4月に2度続いた異常高温の影響がこうした場面に現れている。
これで、明日から心おきなく草原の火入れの現場に向かうことができる。

 

これまでの記録地から離れた場所で食草の群落を見つけてから通うこと5年目にして、初めてここでもギフチョウの生息を確認した。

大石田町、5月2日

里山の下刈りによる変化

下刈りを実施したヒメギフチョウの生息地。


上:2020年5月2日


下:2024年5月1日
もっとササの薮が深かった部分は2020年には踏み込めず、過去の写真は残っていなかった。2020年はササがわずかに入っていなかったスギ林の林縁でヒメギフチョウとギフチョウを1卵塊ずつ確認した。2002年秋から下刈りを実施し、トウゴクサイシンの株はかなり大きくなった。

 

 

同じく、下刈りを実施したヒメギフチョウの生息地。

上:2020年5月2日


下:2024年5月1日
この奥はササが密生していたが、現在ではトウゴクサイシンが散在しており、ギフチョウ・ヒメギフチョウの飛翔も見られるようになった。

 

 

さらに同じく、下刈りを実施したヒメギフチョウの生息地。

上:2020年5月2日


下:2024年5月1日
スギ林の下にはもともとササは限定的にしか入っていなかったが、それらを刈り、周囲の倒木を処理して落ちていた枝を拾うだけで、食草の株はずいぶん大きくなった。
あまりにも季節進行が早くて産卵調査を急がねばならないが、今日は所用があって500枚ぐらいまで葉を数えたところで時間切れ。いつもは5月下旬に多いブユが、雲のように体のまわりに集まってきた。

5月1日、大石田町

 

 

 

里山の環境の変化

ヒメギフチョウの生息地の環境の変化。去年は連休明けに定点を撮ったので、今年は比較できるよう時期を合わせて撮りに行った。しかし、2016年や2017年と比べると、季節進行があまりに早くなっていることは写真のとおり。
さまざまな集落での高齢化によって、共同作業で当たり前に行われてきた下刈りもできなくなっているし、個々の家のクリ林の下刈りも困難になっている。それが全国で一斉に進行している。


1枚目:2016.4.30


2枚目:2024.4.30

 

 

 

同じく、ヒメギフチョウの生息地の環境の変化。2008~2009年にはここにはヒメギフチョウしかいなかった。現在ではギフチョウ属の総個体数は1割以下になり、比率でもギフチョウのほうがずっと多くなっている。


1枚目:2016.4.30


2枚目:2024.4.30

 

 

さらに同じく、ヒメギフチョウの生息地の環境の変化。下刈りがなくなり、食草の量が1割以下になった。2016年に初めてギフチョウが現れ、現在ではギフチョウのほうが多いが、そもそもほとんど見られない。田起こしでトラクターに乗っておられた80代の所有者夫妻を久しぶりに訪ね、いろいろ話をした。


1枚目:2017.4.27


2枚目:2024.4.30

お祭り

4月29日は地区のお祭りのためギフチョウの調査も休み、朝から神輿を囲んで練り歩く。去年はコミスジとウスバシロチョウを見たが、今年はコミスジとクロアゲハを見た。4月のクロアゲハは初めてだが、民家の庭先で産卵行動をとっていた。2年前の水害のあとはすっかり改修が進んでいた。4月29日、山形市

アカネズミの食べ跡

アカネズミはオニグルミを食べる際に「縫合線から最小限の穴をあける」が、これまでに千個以上を見てきたなかで例外が数例しかなく、比較的寿命が短い生きものなのに学習段階が見られないことから、本能による部分が大きいと考えてきた。しかし、今回は複数の不規則な穴のあけ方を見たことから、3ヶ所でつい100個近くを探して拾い集めてしまった。

 

オニグルミは衣装箱2つになってしまい、これ以上増やすつもりはなかったのだが。4月28日、山形県

クリ林のカタクリ

28日はカタクリの絨毯になるクリ林が今も存続しているかどうかを確かめて回る。

 

1軒ずつ所有者を探し当てて挨拶をして回ったのは2009年頃だが、いくつかの場所はすっかり藪になっていた。この光景も、このままではあと20年でほぼ消えるだろう。山形県内

ヤグルマソウの若葉

ヤグルマソウの若葉が美しい。4月28日、山形県鶴岡市

鳥海山麓の火入れ

秋田県鳥海山麓の草原の火入れ

 

鳥海山麓のブナのトローニュ

 

日本海に浮かぶ飛島の上に沈む夕陽

4月27日

ギフチョウとヒメギフチョウ

帰国と同時にZoom会議の連続で、ともかく慌ただしい1日。午前中に時間を捻り出してギフチョウの調査。

 

 

 

 

刈り払いで再生している場所に、ヒメギフチョウとギフチョウが交互に産卵に訪れた。すでに食草の葉が開き、産卵に非常に時間がかかっている。4月26日

ナラ類のトローニュ

日本でのブナの「あがりこ」あるいは「台場クヌギ」は、すでに過去の利用の遺物となってしまい、伐られなくなって久しい。これらに相当するものを今も現役で伐り続けている場面をこの眼で見たことで、これまで推測で組み立ててきた過去の伐り方がほぼ間違いなかったことを確かめることができたのは大きな一歩だった。次はブナ属のトローニュを探しに行かねば。

4月22-23日、Perche, N.FRANCE