大谷紀子「すくってごらん(14)」 | ロロモ文庫

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14匹目

(団体戦に出て初めてわかったことは、個人戦で勝った時よりも喜びが3人分の3倍になるんだってこと)「準決勝112匹で1位通過や」「やっぱ王寺がおると、俺らのチームは安泰やな」「王寺のおかげで優勝間違いなしやもんな。ほんまに王寺さまさまやで」「なに言ってるの、違うよ。3人の力で勝つんじゃないか」(自分の力が誰かの役に立つ。それが嬉しくて人が生きる意味ってこうゆうところにあるんじゃないかと思った。自分の力を、チームメイトの力を信じていた。だから信じられなかった。まさか竜がポイに細工するなんて)

決勝戦でポイに防水スプレーをかけて臨む竜。「竜、なんで」「おい、王寺。お前何を」竜のポイを中指で破る王寺。そして失格となる王寺のチーム。

「王寺、俺らと優勝する気なんかなかってんな。もおええわ、こんなチーム。今日でおしまいや」「竜、なんであんな小細工したの」「なんでって、勝ちたいからに決まっとるやん」「あんなことしなくたって勝てたんだ。竜は最初から信じてなかったんだ。自分の力も、僕と淳の力も」「せや。どうせお前の力だけで勝って、俺と淳はお飾りコースやと思っとった」「え」

「天才型のお前にはわかんねえよ。団体戦で勝ったかてどうせお前の手柄になるのはわかっとる。どうせ脇役に回るくらいなら一度でいい。お前の鼻あかして、俺の力で勝ったって言わしてみたかった」「なにそれ。それじゃあズルしようとしたのは僕のせいだと言うの」「さあな。もうどうでもええわ。俺、金魚すくいやめるし。たかが遊びで熱くなるのもアホらしいわ」

その時、父は王寺に自分の帽子をかぶせたと言う吉乃。「あの日から、あの人、人前では帽子脱がへんのです。にいさんのあんな表情見たの、後にも先にもあの時だけ」「金魚すくいをする時は、帽子をかぶると影になるので禁止されています。それってもう競技として金魚すくいはしないって意思表示なんでしょうか」「だと思います。そやけど香芝さんが来てから、にいさんちょっと変わったような気がするんです」「え」「初めて香芝さんがここに来て、金魚すくった時、あんなに楽しそうに金魚すくう姿、久し振りに見ました。あの人、やっぱり金魚すくうの好きなんですよ。引っ込んでたらあかん人なんですよ」「吉乃さん」

王寺にその帽子を取れと命令する香芝。「くそ、吉乃さんに心底心配されおって」「え、なんですか」「仕事でした失敗が仕事でしか挽回できないように、あんたの中で枷になっているソレも、やっぱり同じソレで払拭するしかないのだと思う」「え」「高みの見物を決め込んでいるんだか、逃げているんだが知らんが、この際だから言っておきたい。できるのにやらないなんてのは罪だ。いいか、埋もれている有効な資産ってのは有効に活用しなきゃいけないんだ」「待って。一体何が言いたいんですか」「私があなたとやりあってみたい」「え」「ズルをしなきゃ勝てないと思った君に強さって一体どのくらいなんだ。気になるじゃないか。一度でいい。あんたの一生のうちの3分間を俺にくれよ。吉乃さんのためにも」「やっぱりあなたは面白い御仁だ」「え」「さあ、やりましょう。香芝さん」帽子を脱ぐ王寺。