純潔革命 | ロロモ文庫

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大成貿易に勤める牧原溪子は同僚の小泉と恋仲であった。溪子の友人の戸川葵の母の戸川文子は女流作家で葵を女手一つで育てて、新聞で人生相談をしていた。小泉の同僚の佐竹の妹の瑞枝は佐竹の友人の北と交際していたが、北は就職できずにアルバイトを送る毎日であった。文子は恋人がいるけど見合いの話が来たらどうかという相談に対して、見合いなんか断るべきだと回答する。

これはちょっと行きすぎじゃないかと言う母に、そんなのは今時の常識よと答える溪子。家賃も払えない北は僕は戦争で死ねばよかったと瑞枝に言う。「軍艦であのまま沈んでればよかったんだ。なんで一生懸命泳いだんだろう」「どうして」「中学で一緒だった佐竹がサラリーマンなのに、僕は海軍行ってたおかげで遅れちゃってさ」「ダメよ。そんなこと考えちゃ」

溪子と小泉と葵と佐竹と瑞枝と北は休日を利用して、小泉の実家である片山津の温泉に遊びに行く。佐竹と葵は同じクリスチャンということもあって心ひかれるものを感じる。旅の解放感から小泉は溪子と接吻しようとし、激怒した溪子から絶交を言い渡される。「私たち結婚まで、そんな。不潔だわ」「溪子さん。僕たち愛し合っているなら、不潔なことなんて」「もう私はあなたのことを軽蔑するわ」

家に戻った溪子に外交官の卵との見合い話が持ち込まれる。その話を聞いて激しく落ち込む小泉。

外交官の卵なら結婚すればいいわと溪子に言う文子。「小泉さんを愛しているなら別よ」「……」「今、軽蔑してるって言ったじゃない」「だって私をまるで変な女扱いなんですもの」「じゃあ、今日のお見合いの方を真剣に考えたら」「でも、おばさま、いつか新聞に書いていらしたでしょう。お見合いよりか恋愛を選ぶべきだと」「それは理想よ。あなたのお見合いには未来がある。パリやロンドンに行けるかもしれない。ちょいとまぶしいような人生」「……」「こんなこと言うと軽蔑されるかもしれないけど、現代は功利主義。あまりおセンチになると人生に負けちゃうわよ」

佐竹と葵はデートを重ねるようになる。瑞枝は子供ができたと北に告げる。北はやったと喜ぶが、瑞枝に今の二人で子供が育てられるかと聞かれ落ち込む。「佐竹にはまだ言ってないのか」「兄さんは厳格だからまだ言わないほうがいいかと」「やつは妙にピューリタンなところがあるからな」なんとか子供を産もうと言う北。「僕も明日からは強力なアルバイトを探すからさ」

私はもう死にたいと溪子に言う葵。「佐竹さん、ママにあって私との交際を認めてもらいたいと言うの」「まあ、いい話じゃないの」「でもダメなの。私、佐竹さんとおつきあいできないの」雑誌記者の森本に酒に酔わされて純潔を奪われたと話す葵。でも死ぬなんて言ったらダメよと言う溪子。

「思い切って佐竹さんに打ち明けてみたら。きっと許してくれると思うわ」「ダメ。佐竹さんは私をきれいな女だと思って愛してくださってるのよ。打ち明けるなんて」「じゃあ、ママに相談してみれば。そういう場合のこと、おばさまならよくわかると思うわ。自分の口で話すのが嫌なら一般的問題として新聞の人生相談に投書するのよ。そうすればママがきっといい意見を書いてくれると思うわ。でもその森本って人はひどいわ。男ってみなそうよ。心の中では醜い欲望しか持ってないのよ」

葵のダンス発表会に行った小泉は溪子に見合いしたんだってと聞く。「それがどうしたの。あなたとは関係ないことでしょう」「今日は君に謝りに来たんだ」「私は男の人が信用できないの」

佐竹は今日はあなたのお母さんにお目にかかってあなたとのことをお願いするつもりですと葵に言う。「葵さん。僕と結婚してください」「佐竹さん。ママにお会いになる前に、新聞のここのところをお読みになって。それ、投書したのは私なんです」

<私は19歳の女性です。最近ある男性Sと知り合い、お互いに深く愛し合っています。私はプロポーズされましたが、私は酒の過ちから純潔を奪われた暗い影があります。Sはクリスチャンで潔癖感の強い人ですから、まだそのことを打ち明けていません。私はSに愛される資格があるでしょうか><純潔を女性のみに求めるのは不合理なことです。純潔とは肉体のみでしょうか。私はむしろ精神の純潔を大事にしたいと思います。あなたの場合はすぐに打ち明けるべきです。深く愛し合っているならその男性は当然理解してくれるはずです>葵はダンス発表会の途中で席を立った佐竹を見て卒倒する。

強力なアルバイトは見つからないと瑞枝に言う北。子供はあきらめるわと泣きながら答える瑞枝。森本との過ちを葵から告白され激怒する文子。「なんてとりかえしのつかないことを」「じゃあママが新聞で書いてたのは嘘だったの。あの純潔を奪われたという投書を書いたのは私だったのよ」「え」「私、死にたいと思ったけど、ママがああ書いてくれたんで救われたと思ったの」「あなたってなんて人。あんな投書でママを試そうなんて」「ママ」「あれがあなたと知っていたらママはあんなことを書きはしないわ」「どうして」「どうしてって」「私なら違うの」「当たり前よ。そんなふしだら、ママは許しません」

葵は逢ってくれと佐竹に電話するが、佐竹は無言で電話を切る。ショックを受けた葵は公園で睡眠薬を飲んで自殺を図り病院に運びこまれる。葵がいなくなったと溪子に泣きつく文子。北は佐竹に瑞枝と結婚させてくれと申し出る。「いや、実際はもう結婚してるんだ」「君たちは清い交際じゃなかったのか」「瑞枝さんには子供ができた。だけど僕たちには育てる能力がないので、実は今日」「じゃあ、君は瑞枝を。なんてことをしてくれたんだ。僕は君たちを信用していたんだ」

純潔を踏みにじった君たちを許さないという佐竹に、兄さんは純潔をどういうものだと思っているのと聞く瑞枝。「お互いの心が愛し合っていたら、体なんてなんでしょう。私たちは純潔なのよ」「しかし、妊娠中絶なんて罪悪だ」「じゃあ兄さんは喜んで私がそんなことをしたと思ってるの」「……」

小泉は葵がお前あてに遺書を書いて自殺を図ったと佐竹に知らせる。純潔を失った私はあなたと会わせる顔がないと書かれた遺書を読む佐竹。病院で私の思慮が足りなかったと反省する文子。病院に現れた佐竹に葵はあなたしかいないのよと言う溪子。「葵は自分の命よりあなたのことを愛してたのよ」佐竹は寝込む葵の手を握りしめる。「葵さん。僕が悪かった。許してください」涙する葵。

仲直りしてデートする小泉と溪子。「僕を恋人として認めてくれるんだね」「あなたがエチケットを守ってくれるなら」「ちぇっ。いつまであんなことにこだわっているんだい。僕だって衝動で君を愛してるんじゃないよ」「でも精神が純潔なら体は問題じゃないって考えたはもう古いわ」「古い?」「そうよ、私のはもっと新しい。絶対純粋。一種の革命よ。純潔革命」「時代遅れだよ。現代女性のくせに」「不潔よ。紳士のくせに」二人は仲良く口争いしながら石畳を歩くのであった。