明日は月給日 | ロロモ文庫

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日本一産業株式会社の会計課長を務める石原鉄太郎は妻の雪乃との間に五人の子供をもうけていたが、長男の圭一郎は病死し、未亡人となった由美は息子の太郎を石原家に預けて、料亭・若竹を切り盛りしていた。次男の英二は鉄太郎と同じ日本一産業に勤務し、長女の夏代は銀行員の古垣と結婚して石原家の隣に住み、次女の龍子は大阪で働くサラリーマンの清水と結婚し、三女の末子は大学生であった。

木曜日の朝早くからへそくりを隠していたのがばれて、夏代に追い回される古垣。それを見て笑う英二と末子。デパートの実習はどうだと末子に聞く鉄太郎。「楽しいわ。でもとてもお腹がすくわ」鉄太郎にお金を貸してくれと頼む英二。「明日の月給日には返しますから。友達がお金がいると言うもんで」「その友達はどんな人かな」「ではその話はまた後で」朝八時になり、一斉に出勤する鉄太郎と夏代と古垣と英二と学校に行く末子と太郎。

石原家にやってきた由美に縁談の話があると話す雪乃。「石原の会社の平専務の紹介なの。あなたも圭一郎が亡くなった後、いつまでもうちの籍に入れておくのはどうかと思って。勿論太郎も引き取っていいというの」鉄太郎に給料支払いのための現金を渡す古垣。会社の金庫に現金を入れる鉄太郎を呼ぶ専務の平。

「石原君。明日の給料を支払う前に私に連絡してくれ。原料輸入の手付に現金がいるかもしれん」「すると月給を出さずにあの金を」「月給は延期するかもしれん」「しかし明日の月給を出さないと言うのは」「君は心配しなくていい。それに交渉次第で手付は手形で済むかもしれん。ところで例の話はしてくれたかね」「ああ。あれは家内からしてあります」

僕は結婚したい人がいると鉄太郎に言う英二。「ですから、今晩、若竹でお父さんにその人と会っていただきたんです」「わかった。会ってみよう。お金もその時でいいな」「わかりました。じゃあ五時にお願いします」英二の恋人は高島屋デパートの食堂に勤めるはる子であった。はる子の父は落語家の今昔亭なん馬で、なん馬の弟子のとん馬ははる子に惚れていた。最近稽古が身に入ってないが何かあるのかととん馬に聞くなん馬。「師匠。実は惚れた女がいるんで」「何、それは誰だ」「いや。まだあっしなんかがまだそんなことを言うのは早いんで」「そうかい」

高島屋の屋上でまだあなたのことを父に話してないのと英二に言うはる子。「うちはお父さんと二人きりでしょう。私がいなくなるとお父さんが寂しくなると思って」「だったらお父さんはうちに来ればいい。親父だって賛成すると思うよ。今日そのことを話すから」「あら。英二さんもまだ私のことを話してないの」「うん。でも夕方君と一緒に会うように話しておいたから」

マールソン商会と明日取引をするので君のお父さんに三百万用意するよう念を押してくれと英二に言う平。石原家に現れる清水に出張ですかと聞く雪乃。「ええ、まあ。あの龍子は来てませんか」「いえ、来てませんが」「じゃあ、由美姉さんのところかな」若竹に行く鉄太郎。「由美さん。あんたも忙しいだろうが、もっと太郎に顔を見えてやらないと」「はい。今度の月曜は祭日ですから、日曜と月曜は帰らさせていただきます」「それがいい。あの子も甘えられるのはあんた一人だからね」

縁談の話は考えさせてくれと鉄太郎に言う由美。英二の奴は遅いなと言う鉄太郎。「ここに会わせたい人がいると言ってたが」「じゃあ、きっとはる子さんのことですわ。ここに何回か英二さんは連れてきました」「ほう。それでそのはる子さんはどんな人かね」「とってもいい人ですわ」

父が入院費で借りたお金のことをお父様に話すつもりなのと英二に聞くはる子。「実は親父にちょっと話してあるんだよ。大丈夫さ。親父は物分りがいいんだ」「私はいやよ。初対面の人にお金の話をするなんて」「でも借金はどうするんだい」「なんとかするわよ」結局、はる子は帰ってしまう。

英二は一人で若竹に行くが、鉄太郎は会社に戻るために店にはいなかった。若竹に現れる毎朝新聞の記者で圭一郎の親友だった田中。僕は圭一郎君が羨ましかったと由美に言う田中。「でもあなたが幸せになることを心から願ったんです」「……」「由美さん。あなたに言いたいことがあるんです」

閉店間際になって若竹に現れる龍子。「姉さん。ここに泊めてください」「どうして」「私、家出してきたんです」「清水さんが何か」「男なんて嘘つきだわ。あの人は一度も私に給料袋を渡してくれないの。清水は給料一万五千円貰っているって言いながら、私には九千円しか渡さないの。あとは自分で握っているの。そんなの私に対する侮辱だわ」「とにかく今日は泊まりなさいよ」

金曜日の朝、昨夜はどうしたんだと鉄太郎に聞かれる英二。「それがちょっと。それで、お父さん、平専務からの言伝てがあるんです」「なんだい」「マールソン商会の人が今朝会社に来るので、三百万渡すようにと」「それは現金かね、手形かね」「それを聞き忘れたんです」「困るじゃないか。手形ならいいけど、現金だと月給は延期だぞ」「すいません。専務は午後じゃないと帰らないそうです」マールソン商会はよくない噂があると鉄太郎に言う古垣。「その会社はよく調べないと現金を渡すのは危険ですよ」

若竹を訪ねてくる清水。清水に会いたくないと由美に言う龍子。龍子は来たけど実家に帰ったと言う由美。明後日から連休なので伊豆の温泉でも龍子と一緒に行くつもりだと言う清水。「大阪では龍子に苦労させてますからね。少しはサービスしないと」石原家に行く清水。それと同時に石原家に行く龍子。「友達のところに泊まってたの。ごめんなさい」「龍子。あまり心配させるなよ」「許してほしかったら、給料袋を全部渡すこと」

「実は給料一万円しかもらってないんだ。でも一万五千円貰ってるって言ってたもんだから、嘘がばれるといけないと思って」「あなたみたいな嘘つき大嫌い」「もう嘘はつかないよ」「じゃあ許してあげる。そのかわり伊豆の温泉に連れていってくれるなら」「伊豆?急にそんなこと言われても」「あなたはお姉さんのところで、そう言ったじゃないの」「君、あそこにいたの」「もう嘘はつかないでしょうね」

父の借金を返すためにデパートを辞めてキャバレーで働くというはる子に、そんなことはさせないと言う英二。「私、本当は退職金が欲しいの」「そんなことをする前に僕にまかせてくれ。君の心配を取り除くのは僕の責任なんだ」鉄太郎がマールソン商会に手形で三百万支払ったと聞いて激怒する平。「そんなことで向こうの信用を損ねて、取引が中止になったらどうなるんだ」「はあ。しかし」「問題が起こったら、責任を取って辞めてもらうよ。今日の月給は延期だ」

給料延期になったと聞いて驚く英二。「おい、君の親父さんが騒動の元らしいぜ。親父さんはマールソン商会に手形で渡したけど、専務は現金で渡すように指示したかないかと怒ったら、承知で手形にしたと見栄を切ったそうだ」英二は鉄太郎を探すが、鉄太郎は若竹に行く。「由美さん。昨日話してくれた英二の相手のことだが」「はる子さんね」「あなたは賛成か」「勿論ですわ」「私も二人の仲を許そうと思う。それでその娘さんはどこの家庭かね」「それが今昔亭なん馬という落語家の」

大変なことになったとはる子に言う英二。「今日、会社で月給が出なくなったんだ」「まあ」「その上、僕の大失敗を親父がかばってくれたらしいが、その親父がどこに行ったか」英二は田中にマールソン商会の実態を調べてくれと頼む。家に戻ったはる子は、なん馬から鉄太郎を紹介される。

「はる子。お前、好きな人がいたのか。石原さんはてっきりそのことを俺が知ってると思って訪ねてきたんだ」どうも話がトンチンカンになってと笑う鉄太郎。「はる子。お前は英二さんのことが好きなのかい」「ええ」これで安心したと笑う鉄太郎。「私は親らしいことは何もできませんが、せめてこういう場合くらいは」英二が鉄太郎が帰ってこないと心配していると話すはる子。「そうですか。では私はこれで」

とん馬に泣いているのかと聞くなん馬。「勘弁してくれ、お前がはる子に惚れていることは俺は知っていた。薄情な師匠と思うかもしれねえが、この道ばかりは親の自由にはならねえからな」「……」「女にふられるのも落語家にはいい勉強だ」「つらい勉強ですね」「俺もはる子に去られて一人ぼっちだ。とん馬。俺と所帯を持とうじゃねえか」「汚い夫婦ですねえ」「まあ、ぱっと飲もうじゃねえか」

自宅に戻ってきた鉄太郎は退職願を出すかもしれないと雪乃に言う。「そうですか。長年勤めてらっしゃったんですもの。それもいいかも」「そうか」「なんとかやっていけますわ。末子だって大きくなったんですもの」そこに末子が初めての給料袋を持って帰ってくる。「末子、これをお兄さんにも見せてお上げ。きっと喜ぶぞ」圭一郎の位牌に給料袋を見せて手を合わせる末子。英二はマールソン商会と取引のあった会社や国際電話を掛けて、マールソン商会がインチキ会社であることを突き止める。

土曜日にマールソン商会の実態を平に報告する鉄太郎。「英二が新聞社の方と徹夜で調べてくれました。毎朝新聞も特ダネを掴んだと大変喜んでおります」「すまん。石原君。助かった。早速わが社の手形にも手を打たんと」「いえ。それは支払いを停止させております。銀行に娘婿がおりますものでな。いやあ、子供は持ちたいものですなあ」土曜日の午後、無事に給料を配られ、胴上げされる鉄太郎と英二。

日曜の朝、石原家で記念写真を撮る鉄太郎、雪乃、由美、夏代、太郎、古垣、龍子、清水、英二、はる子、田中、末子。龍子と清水は伊豆に出かけ、古垣と夏代は自宅に戻り、英二とはる子はデパートに行き、由美と太郎と田中は遊園地に出かけ、末子は友達の家に行く。嵐の後だねと雪乃に言う鉄太郎。「昔からですわ。あの子たちが学校に出たあとの寂しいような気持ち」「ははは。いや。みんなどんどん大きくなって」「お茶でも入れましょうか」「まあまあ。もう少しぼんやりしていようじゃないか。ははは」