作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(627)」 | ロロモ文庫

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新聞記者とトウモロコシ

俺はトウモロコシが嫌いだと山岡に言う木沢。「俺は終戦後の食糧難時代に育った世代だ。イモのしっぽ、アワ、ヒエ、コウリャン、マメカス。今では家畜の飼料にもならんものも食べた。道端の雑草も食べた。だから山菜料理なんてありがたがってる奴の気がしれない。ワラビ、ゼンマイ、コゴミ、ツクシ。そんなものは食糧難の時代にみじめな思いをして泣き泣き食べた」「今は笑って食ってるな」

「晩御飯は茹でたトウモロコシだけ。それが何日も続く。あの蒸れたような、すえたような鼻の奥までふさぐあのにおい。そしてあの感触。ごわごわボソボソしていやったらしい皮が口の中のどこかにいつまでも残るんだ。味なんかただの穀物。ただのデンプン。うまくもなんともない。トウモロコシを横にして見ろ。悪魔が黄色い歯をむき出して嘲笑しているように見える」「ほとんどビョーキだな。俺と一緒に大分県由布院に来い」

由布院で茹でたトウモロコシを食わされる木沢。「ぬ。これがトウモロコシか。この皮の柔らかいこと。これが穀物の実か?柔らかくてツユが沢山で、それがえらく甘くて香りがさわやか。またこの後味のすっきりと心地良い」「お前が夢中になるのは当然だ。これは普通のトウモロコシじゃない。スウィートコーンという種で、これを牛糞を混ぜた堆肥だけで育てたものだ。もちろん農薬、除草剤、化学肥料は一切使ってない」

説明する生産者の武田。「一本一本が、先端まで実がつまるようにトウモロコシの木には一本しか実らせない。通常二本できるが、一本は最初から取ってしまう。だから先端までびっしり実がついている。うちのは生で食える」「木沢、食え」「ぬう、これは果物だ。甘くて果汁があふれる」「トウモロコシは朝4時から7時までが一番糖度が上がって美味しいから、出荷するトウモロコシはその時間に収穫する」「ぬう。今は一番美味しい時間じゃないのか」「大分には海の幸、山の幸、美味しいものがたくさんあるぜ」「ぬう。日本全県味巡りの最初の県は大分県だ」