作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(625)」 | ロロモ文庫

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家庭崩壊防止計画

日本の家庭を崩壊から救う会を結成した3人の同期の女性社員と焼きそばを食べに行く栗田。「ああ、いい匂い」「ねえ、店を変えへん」「賛成、私が食べたい焼きそばはこんなんじゃない」「だってこれ、ソース焼きそばよ。私たちが食べたいのはちゃんとした中華料理の焼きそばなの」「確かに伝統的な中華料理とは無縁なものね。ラーメンと同じ麺を使い、キャベツや豚肉などと一緒に炒めて、ウスターソースで味付けをする。ウスターソースという西洋の文化と焼きそばという中国の文化を取り込んで、自分のものにしてしまう日本文化に特性をよく表しているわ」「日本文化の特性もええけど、ちゃんとした焼きそばを食べたいわ」

「ああ、肉焼きそば。これが本当の焼きそばよ」「日本人にはとても馴染み深いわね」「うちが食べたいのはこんな焼きそばちゃうわ」「え、あなた、ちゃんとした中華料理の焼きそば食べたいって言ったじゃないの」「これは中華料理ちゃうわ。香港では最高の広州料理が食べられるが、その広州料理の焼きそばはこんなもんちゃうわ」「私、以前に世界各国の中華街に行った時、同じことを感じたわ。この焼きそば、麺はラーメンと同じ。豚肉とタケノコの細切り、チンゲン菜が具に入って、スープがたっぷりあって、それにとろみがついて、味付けは醤油。とても日本人に馴染み深い肉焼きそばだけど、実は日本以外ではなかなかお目にかかれないの」「え。それは本当の広東風焼きそばって、どんなものなの」「うちについておいで」

「この肉焼きそばよ。極細の麺をバリバリに焼いて、豚肉の細切り、モヤシ、黄ニラを炒め、少量のスープを加えて、濃いめにとろみをつけたアンをかける。味付けは塩味よ」「確かに日本以外に出て来る典型的な焼きそばのひとつね」「ふん、こんな細い麺をバリバリ焼いて塩味?こんなまのは焼きそばじゃないわ」「バカ。焼きそば言うからにはパリに焼かんとあかん」「バカ。若い人はみんなソース味が好きよ」「バカ。幼稚な味ね」「うるさい、ブス」「なんやて、あんたのほうがブスやないの」「よく言うわ。あんたが一番ブスよ」

岡星に栗田たちを連れて行く山岡。「味噌汁です」「嬉しいわあ。白味噌のお味噌汁。この香り、この上品な味、生き返ったような気がする」「気持ち悪い。こんな甘い味噌汁なんて」「なんやて」「味噌汁です」「わあ、八丁味噌。この引き締まった味、奥行きの深い香り。ほっとするわ」「まあ真っ黒。こんな渋い味噌汁飲んだら。舌も曲がるし根性も曲がるわ」「なんですって」「味噌汁です」「仙台味噌ね。これこそ本物のお味噌汁よ」「田舎臭い味だわ」「なんですって」

そこまでだと言う山岡「この分ならお前らの日本の家庭を崩壊から救う運動は成功間違いない」「え」「今日の味噌はお前らの出身地の味噌だ。京都の白味噌。名古屋の八丁味噌。宮城の仙台味噌。家庭の団欒は食事からだが、日本の家庭の食事で欠かせないのは味噌汁だ。ところがその味噌汁をめぐって、お前らは罵り合った。これを各家庭でやったらどうなる?」「一家団欒どころか崩壊するわ」「逆だ。罵り合って以前より相手のこと理解する。一番まずいのは互い互いに冷淡な家庭だ。相手を深くするのは喧嘩が必要だ」「そうか、互いに冷たくて無関心は家庭は崩壊する」「逆に喧嘩して仲直りする家庭は崩壊せえへん」「家庭の活性化ね」「だからお前らもブス同士、食い物のことで仲良く喧嘩しろ」