作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(622)」 | ロロモ文庫

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寿司に求めるもの(後)

また見ただけで海原は帰ってしまったと嘆く平田。「利尻から仕入れたエゾバフンウニをその場で殻から出して握ったのに、「この男は寿司とは何かわかっていない。新鮮な材料を使えばいいのなら寿司でなくてもいいだとう。その材料をそのまま食べたほうが手間が省けるし味も純粋だ」と言われてしまったぜ」「ぬう」

ジュディにオーストラリアのシャルドネは嫌いだと言う団。「フランスのに比べるとオーストラリアのはオークに匂いが強すぎる。第一、ブドウの香りとオークの香りとの組み合わせは不自然で不愉快だ」「じゃ日本酒の吟醸酒は何なの。あのわざとらしい果物っぽい香り。あれもつけた香りでしょ」「きちんとした蔵元の吟醸酒は香りづけなんかしてない」「でも私は嫌い。米の香りと果物の香りとの組み合わせこそ不自然で不愉快よ」「ぬう」「どうした、山岡」「あんたらに感謝する。平田、汚名挽回できるぜ」

もう一度海原を平田の店に連れて行く京極。「まずはこれだ」「む。ダシ、醤油、酒、スダチの汁を合わせたものにウニをつけておいたな。そうやってつけることでウニの身は引き締まるから、海苔で巻かずとも寿司飯の上に乗せることができる。まずこれと言ったな。他に何ができる」「これだ」「ぬ。海老のかわりにかつらむきにしたキュウリで軍艦巻きを。キュウリの瑞々しい香りがウニの存在を際立たせ、ウニのきつい癖のある味も上品に和らげる。これは見事や。こんなウニの寿司は食べたことないで」

説明する海原。「最初、お前はホウ酸処理のウニを出した。次にウニは生のものをここで下して出した。それはいいが、そこで惰性的に海苔を使った軍艦巻きにした。ウニも海苔も潮の香りが強い。その組み合わせは互いに相手の価値を減じる。鮮度の高いものをただ乗せるのが寿司ではない。極めて繊細な微妙さを要求される料理なのだ。その点、今日の寿司は最初のものはウニをつけ汁につけて味をひきしめ、しかも鮮やかさを保っていて、生のウニより数段洗練されている。身も締まってるから海苔で巻く必要がない。そしてキュウリ巻きは見事だ。キュウリの香りとウニの潮の香りが互いに引き立てあって、新しい味覚と香りの取り合わせの境地を切り開いた」「やったぜ、山岡」「ぬ。何か言ったか」「ウニ以外にもあるぜ」「ぬう」