作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(611)」 | ロロモ文庫

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夫の愛、義父の愛

つわりになった栗田のために食事を作る山岡。「昨日、魚の匂いが生臭いと言ったな。今日は生臭く感じようと思っても感じられない献立だ。この野菜スープはニンジン、タマネギ、ジャガイモ、セロリ、トマトを刻んで煮ただけだ。味付けも塩だけだ。まずこれで食欲を目覚めさせろ」「だめ、セロリの匂いがきつくて」「ぬ。セロリ好きだろ」「好きなはずのセロリだけど、今はだめなの」

「じゃあカリフラワーのグラタンだ。カリフラワーはあっさりしてるし、パルメザンチーズがこんがり焦げていい香りだろ」「なんだか不潔な雑巾のような匂い」「ぬ、カリフラワーの匂いじゃないか」「でもそんな風に感じるの」「じゃあ、しめじの炊き込みご飯と大根の味噌汁はどうだ。牛肉は赤身を酒と醤油でショウガと一緒にじっくり煮た」「だめ。いつもは美味しく感じる牛肉の匂いが獣臭くて。しめじの匂いも何か蒸れたような。大根も青臭くて」「ぬうう」

困ったとチヨに言う山岡。「ホウレンソウのポタージュ、高野豆腐とレンコンの煮物。タイの切り身の酒蒸し、これは全部だめだ。どれも癖のないあっさりした味なのに。いつまでもこのままじゃ母体が弱ってしまう。子供を産むどころじゃないよ」「ぬう。チヨに任せなさい」

まず5時に夕食を食べろと栗田に言うチヨ。「たったこれだけ」「いいから食べて。半分のカブをコンソメスープで煮込んだもの」「半分だけなんて何の抵抗もないわ」「ジャガイモを薄切りにしてホワイトソースで煮込んだものよ」「こんなのほんの一口よ」「4分の1の食パンに自家製のトマトソースを塗って、オーブンで焼いたもの」「ピザ風ね」

5時30分に2回目の食事をしろと栗田に言うチヨ。「まずこぶりのサトイモの煮物。出汁とお醤油だけの味つけ」「柔らかくてねっとりして美味しいわ」「ジャガイモと鳥のひき肉の一口コロッケ。塩だけで食べて」「塩味だからさっぱりしている。こんなに小さければ大丈夫」「にゅうめんよ。そうめん以外、何も入っていません」「コロッケの後ににゅうめんの取り合わせっていいわ」

7時に3回目の食事をしろと栗田に言うチヨ。「まずおひたしよ。菊菜のおひたしにスダチの汁をかけたわ」「スダチのの酸味と菊菜の風味の取り合わせがいい気分」「3枚におろしたキスを塩焼きにして、梅肉を出汁で伸ばしたものをハケで表面に塗りました」「キスの身の甘さは梅のすっぱさをさらに引き立てるわ」「最後はちらし寿司よ。中身はカンピョウ、シイタケ、レンコン、ニンジン。上にはお約束の錦糸卵」「とてもなつかしい味。何もかもお約束通りの味でホッとするわ」

驚く山岡。「俺の作ったものはダメで、どうしてチヨのなら食べれるんだ」「1回目も2回目もほんの一口ずつだから、たくさん食べなければという強迫観念を感じずに、気楽に口に入れられたの。そうしたらなんだか胃が落ち着いてきて、3回目の食事は本当に美味しくいただけたわ」「ぬううう」

説明するチヨ。「つわり対策の有力な決め手の一つはチビチビ食べること。お腹をすかせすぎちゃいけない。ちょっと食べたら休む。そしてまたちょっと食べる。お腹を空かせすぎないようにひんぱんにチビチビ食べることでつわりを克服できるの。それに料理の組み立ても大事。第1回目は口に入れられるように口当たりのよい優しい味のもの。第2回目は口当たりがよいけれど第1回目より質感のあるもの。第3回目はしっかり内容があるけど酸味をうまく使って喉を通りやすく仕上げるのよ」「助かったわ。これなら私、やっていける」

この料理は海原に教えてもらったと言うチヨ。「先生の奥様が同じようにつわりで苦しまれたんです。それを先生がこのやり方で救ってさしあげたんです」「そして今度は私を救ってくださったのね」「ぬううう」