作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(561)」 | ロロモ文庫

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フグと刀(後)

「山岡、どういうことだ」「千造、フグの刺身のうまさはなんで決まる?」「フグ自体の良し悪しは一番の決め手だ」「良いフグなら誰でも美味い刺身にできるのか」「バカ言うな。いかに上手にフグを引くかだ」「今引くと言ったな。なんでフグは引くというんだ」「フグの刺身はタイやマグロに比べて薄い。そのために包丁の刃の長さいっぱいに使って引かなければならいからだ」

「じゃあなぜフグの刺身は薄くする必要がある」「フグの身は弾力があるからタイやマグロのように厚く切った歯ごたえが強すぎてまずい」「じゃあ薄ければ薄いほどいいのか」「いや、少し歯ごたえのあるのがいいと言うやつもいる」「その厚さをどの程度にするか。そこにフグの刺身の味の決め手があるんだな」「そうだ」「お前はどうやって一番いい厚さを極めた?」「ぬ、それは先輩の調理を見習って」「バカ、自分で極めろ」「ぬうう」

「雄山がお前に「これで満足してるのか。まだフグのなんたるかを理解しておらんな」と言いやがったのはそこだ。フグの刺身を一度に何枚も食べるやつがいる。そうして食べると美味しいこともある。だが調理人の腕を試そうという時はそんなことはしない。厚さ、形、大きさを確かめるために、一切れ一切れじっくり食べるはずだ」「じゃあ、雄山が二切れ一度に食ったのは」「その意味をつかめと挑発してる。一切れ味わうには物足りない。三切れ一緒では多すぎる。お前のフグの刺身がちょうど良い厚さでないと言ってるんだ」「ぬうう」

「さらに雄山はお前が先輩の仕事を見習ったものと見破り、どのフグも同じに扱ってることにフグを理解していないと言った。本当ならフグ一匹ごとに性質が違うから、フグによって微妙に刺身の重さを違えないといけないのに、お前はそこに気づかなかった」「どうすればいい」「簡単だ。今度はそれぞれのフグに合わせて刺身を引けばいい。そこで問題なのはお前のフグ引き包丁だ。完璧な切れ味が必要になるから、お前の親父の力が必要になるんだ」「ぬ」

山岡に怒鳴る月岡。「わしをなんだと心得る。武士の魂の宿る数多くの名刀を研いできた刀研ぎ師だ。こんな料理人風情の使う包丁など研いだら砥石が汚れるわ」「おい、刀が武士の魂なら、包丁は料理人の魂だぞ」「ぬ」「料理人の魂が武士の魂に劣るのか」「ぬう」「つべこべ言わずに息子のフグ引き包丁を研げ。そして親子仲良くしろ。俺達みたいになるな」「ぬうう」

千造のフグの刺身に満足する海原。「む。皿が4枚。こちらの二つは一枚引き。こちらの二つは二枚引き。一枚引きはフグの身を薄く切り取ったもの。形は三角形だ。二枚引きはフグの身をやや厚めに切り取り、それにさらに包丁を入れて開いて作る。形が四角形になり、幅が広くなるので、食べた感じがたっぷりして食べごたえがある。むう、一枚引きも二枚引きも皿によって一枚ずつの厚さを違えている。むうう、千造、合格だ」「やったぜ」