作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(551)」 | ロロモ文庫

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辰さんの贈り物

妊娠した冬美に安産間違いなしの縁起物だと言って、うみたなごの煮つけを渡す浮浪者の辰。「うみたなごは知らねえかな」「知ってるけど、私の田舎ではうみたなごを食べると安産どころか赤ちゃんは逆子になって難産になるって言われてるわ」「ぬううう。俺はなんてことをした。あんたに合わす顔がねえ。だから会わない」

辰のところに行く山岡と岡星と冬美。「うみたなごが出産に関する縁起物になってるのは、うみたなごは魚では珍しい卵胎生だからだ。普通の魚は卵を岩場や海藻など外部に産みつける。小魚はそういう場所で孵化して生まれる。だがうみたなごは卵を外部に産みつけず、自分の胎内に卵を持ち続ける。小魚は親の胎内で孵化して、外に出ていく。うみたなごは卵を産むのではなく、子供を産むんだ」「へえ、変な魚だな」

「問題はうみたなごを縁起がよいという土地と縁起が悪いという土地があることだ。東北地方では安産の縁起ものだが、島根では逆子を産むから縁起が悪いとされている」「へえ、紛らわしいな」「私は島根出身だけど東北地方でいくわ、逆子でもなんでもうみたなごは安産するんだから」「そうだな、そっちにしろ」「ということでうみたなごを食え。煮つけと焼いてから煮つけたものだ」

「味は淡泊だが、味わい深いな」「味がいいのは初夏の子供を産む頃とか、その後、9月頃だと言うけど、俺の経験では形さえ、いつでもいい味が楽しめる」「ただの煮つけのほうはあっさりした味わいだけど、いったん焼いてから煮つけたほうは身がしまって、そのぶん味わいが濃厚になったみたい」「こういう磯の魚は我々のような料理人にとってはあまり料理をする機会がないんです。でももっと磯の魚の味を見直すべきですね」「ああ」