作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(550)」 | ロロモ文庫

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よくぞ日本人に生まれけり

盆栽は誰も相手にしなくなったと嘆く高畠。「若い者は髪の毛まで西洋人に似せようと染めやがる。道を歩けば店の名前はみんな外国語。国鉄も電電公社も英語になった。盆栽は値上がりを見込んで投機的に買う、日本の文化としての盆栽を愛したわけじゃない。身なりも言葉も魂も失って、金と物しかない国民なんて世界の笑いものだ。こんな国に生まれるんじゃなかった」「今度よくぞ日本人に生まれけり料理大会をやる。お前も参加しろ」

「日本人は何といっても米の飯。それも飯盒で炊いた飯の味が一番だ。飯盒の飯は中蓋にこうして、おてんこ盛りによそおう。おかずは泣く子も黙る鯨の大和煮。これこそかつて日本人を育ててくれた貴重な味。西欧人のおかげで捕鯨ができなくなった今、この味を取り戻すことを忘れちゃいけない」「日本人に生まれてよかった」

「まず納豆を細かく刻む。十分に粘らせてからワサビ漬けを混ぜる。醤油で味をつける。それで飯を食う。納豆は日本独自の大豆発酵食品。日本独特の香り野菜わさびを日本酒の副産物酒粕に漬けたのがわさび漬け。それらを混ぜて醤油で味をつけたものこそ日本人しか味わえない味。それをアツアツご飯で食べる」「日本人に生まれてよかった」

「これが世界に誇るカツカレーだ。カツはもともとフランス料理のコートレットを日本の天ぷらの技法で洗練したものだ。それにかけるカレーはもともとインド料理とはいえ、この黄色くてメリケン粉でとろみを出したカレーは日本だけのもの。もともと異国から来たこの二つを一緒にさせてしまったところが日本人の叡知のすばらしさ」「日本人に生まれてよかった」

「日本人にとって一番大事な魚は鯛だ。鯛は刺身にして食べるのが一番うまい。しかし鯛のすごいところはその皮もうまいところ。刺身にする時に剥いだ皮を炭火でこんがりぱりりと焼く。それに醤油をひとたらしして熱いうちに飯に乗せて食べる。この皮の香ばしさ。皮の裏の脂肪のこくがあるが上品な味」「日本人に生まれてよかった」

「松茸の焙烙焼き、松茸ご飯、松茸のお吸い物。松茸料理の三役登場だ。松茸こそは日本を代表する宝物。他の国の人間は松茸の味と香りを理解しない。この松茸こそ日本の味」「「

日本人に生まれてよかった」

「日本人ならおじやだ。昨晩に残ったお味噌汁に大根、ニンジンの細切りを加え、ご飯をほぐして、ふっくらと煮えたらとき卵を流し込んで出来上がる。昆布の佃煮を細く切ったものをその上にかけて食え」「日本人に生まれてよかった」

「これが決定版だ。冷えた味噌汁、冷えたご飯、そして冷酒。冷えたご飯をひとかたまり冷えた味噌汁の中に落とし込む。それをすくって食べる。ご飯は冷えていると温かい時より甘みが強い。味噌汁は冷たくなると香りが引きしまる。その冷えたもの同士があわさると、鮮やかで力があってじみじみした味わいが立つ。そこできりりと冷えた冷酒をぐいと」「日本人に生まれてよかった」

ぬうううと叫ぶ高畠。「どれもこれも日本人はなんと素晴らしい国民か物語る料理をみんな大事にしている。みんな日本人に生まれて幸せだと言っている。こういう気持ちを受け継いでいく限り、日本は大丈夫だ。日本人に生まれてよかった。俺の料理は梅干しに砂糖をかけたものだ。梅干しは日本人の叡知の産物だ。それに砂糖をかけたものは日本が貧しかったころ、田舎の人間にはまたとないお茶うけだったのだ。食ってみろ」「日本人に生まれてよかった」