作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(497)」 | ロロモ文庫

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まり子の晩餐会(後)

理事たちに落ち着けという山岡。「それはヤシの実の刺身だ。殻の内側の白い果肉を薄切りに削いだものだ。黙って食え」「切れの良い歯ごたえがいい」「脂があるせいか味にコクがある。ワサビ醤油とあう」「刺身は食べたことはないが、本物の魚の刺身はこんな味か」「ヤシの実なんかスリランカでありふれたものだが、こんな食べ方があるとはなあ」

今日はうまい精進料理だと言う山岡。「日本の仏教は生臭ものは受け付けないから、基本的に菜食主義だ。これならどんな宗教の戒律に接触しない。精進料理は単に菜食というだけでなく栄養価も考え、美味しく食べることも工夫している。だったら精進料理を出せばいいが、それじゃあつまらん。だからそれからもっと工夫した。では次の料理だ。心して食え」

「これはスープだ」「中に入ってるの白いものはなんだ」「不思議な歯ごたえだ。滑らかだがさっくりした歯ざわりだ」「山岡、説明しろ」「スープは日本料理に欠かせないすまし汁だ。普通ダシを取るのに鰹節を使うが、今日は昆布と干しシイタケで取った。味付けに使った淡口醤油は原料が大豆だ」「む。西洋料理のコンソメスープより軽やかで上品だ」「動物性のものが一切入らないことが、この典雅な軽やかさを生み出したのか」「山岡、白いものはなんだ」

「寄せとろろだ。煮てとかした寒天にすりおろした長芋を加え、型に流して固めたものだ。寒天の材料は長芋は昔から山のウナギと呼ばれるほど栄養価が高い」「これは人の心を安らげる味だな。胃もスッキリして、食欲が増してくる」「寄せとととの清新な味わいはどうだ。体中がすがすがしくなる感じがする。まさに精進」「次の料理が来たぞ」

「むう。これは肉だろう」「そんなわけないだろ。粟麩だ。小麦粉のタンパク質、グルテンから作ったものが麩で、それに粟を加えたものだ。その粟麩をフライパンで焼いて、タレを漬けて、炭火で焼いた」「もちもちしや生麩の舌触りの間に粟のプチプチした感じが混じっている」「純植物性のものと思えぬ力のある味だ」「中国でも麩の類を用いた精進料理はあるが、この日本風のやり方のほうが、自然で素直な味だ」「次の料理が来たぞ」

「むむ。野菜の炒め物だが、肉片がはいってる」「そんなわけないだろ、セロリの細切りと白菜と固めた葛を短冊型に切って、油で揚げたものだ」「おお、もっちりした歯ごたえで、豚肉の脂身に似た舌触りだ」「これは歯ごたえも心地よいし、淡泊な旨味もあって楽しめる」「いい料理だ」「大原、お前を会長にしてやろう」「ありがとうとございます」まあこんなものだろうと海原は呟くのであった。