作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(475)」 | ロロモ文庫

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遺産の真価

俺の友達の姉の主人が急に死んで遺産相続でもめていると山岡に言う南村。「その人は正岡笛子って名前で40歳。死んだ夫は70歳。ということで甥と姪たちは笛子さんは財産目当ての結婚と決めつけた。問題になってるのは残された美術品で、富岡鉄斎の絵は50点残している。笛子さんはそれを自分のそばに置きたいが、甥と姪たちはそれを処分しろと言っている」「富岡鉄斎の絵の真贋ならうってつけの男がいる」「紹介しろ」

笛子に目利きの藤田を紹介する山岡。「私はあの絵が本物でも偽物でもいいのです。ただ甥と姪たちが財産分与のために富岡鉄斎の絵を知りたいので鑑定をお願いするだけです」「偽物でもいいと」「はい、主人が愛した絵というだけで十分です。主人の愛していた絵のために美術館を作ってやりたい。偽物なら公開しないで私のそばにずっと置いておきたいのです」「なるほど」

50点の絵を鑑定する藤田に聞く甥と姪たち。「どうです?」「藤田さんは鑑定かとして権威なんです。ほかの美術商が見守ってますよ」「藤田さんならどのくらいの値段を」「はあ。値段はここにいる美術商の方たちに聞いてください。私は棄権させていただきます。では失礼」動揺する美術商たち。「藤田は何も買わないとはどういうことだ」「いいものとなれば金に糸目をつけない男だぞ」「藤田が絵の真贋を間違えるわけはがない」「じゃあ贋作?」「帰ろう」「帰ろう」「出直そう」

南村と笛子を岡星に連れて行く山岡。「財産分与の方はついたけど、甥と姪たちは富岡鉄斎が偽物とわかると不動産や株を奪い合って、笛子さんは貧乏になったそうです」「いいんです。お金のことで争うなんてまっぴら。たとえ偽物でも主人の残した絵があるから私は十分」「今日は富岡鉄斎の絵にちなんだ料理だ」「これは何の肉?」「アヒルだ。アヒルの皮つきの薄切り肉をスープと一緒に煮たものだ」「やわらかくて美味しいわ」「白身魚とチンゲン菜の煮物だ」「プリンプリンした歯ごたえがいいわ」「鶏の肉とセロリの炒め物だ」「このササミ、上品なお味。よほどいい鶏なのね」

今の料理は全部偽物だという山岡。「アヒルも魚も鶏もみんな湯葉と生麩だ。最初のアヒルは湯葉だ。湯葉を厚めに作っていったん揚げて、香料と調味料で蒸し焼きにした。魚は生麩だ。生麩に海苔を張り付けて、油で揚げて、さっと軽く煮る。鶏のササミは生麩を鶏肉に見える形に切って、炒めたものだ。これは中国の精進料理の技法を借りた料理だ」

そうかと呟く笛子。「今日の料理は富岡鉄斎にちなんだとはそういう意味だったのね。にせのお肉料理でもこれだけ楽しめたから、偽の富岡鉄斎でも主人は楽しんだ。だからだまされた主人をだまされたと悲しむのはやめろと言うんでしょ?」「全然違う。今の料理は精進料理。重要な計画を始める時は成功を祝って、精進潔斎して身を清めるのだ」「重要な計画?」

そこに現れる藤田。「笛子さん、正岡美術館設立企画案だ」「え。だってあの富岡鉄斎はみんな偽物」「とんでもない、偽物なんて私は一言も言ってない。全部本物だ。あんたの主人の目は確かだぜ」「嬉しい」