作:雁屋哲、画:花咲アキラ「美味しんぼ(476)」 | ロロモ文庫

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うどんの茹で方

俺はうどん振興協会を作ったというイラストレーターの長野。「うどんは冷遇されすぎだ。ラーメンの大人気ぶりはどうだ。ラーメン屋の前には順番待ちの行列はできるけど、うどん屋の前に行列が出来たなんて聞いたことないぞ。そばを食べる人間は粋?スパゲッティ食べるのがお洒落?ラーメンは日本人の国民食?ぬうううう。山岡、うまいうどん屋に連れていけ」「まかせろ」

力やうどんに長野を連れて行く山岡。店主の大谷と口げんかする長野。「こんな男のうどんを食うのはまっぴらだ」「それはこっちのセリフだ。うどんのことをなんも知らないくせに、うどん振興協会?聞いてあきれるわ」「ぬう。俺は帰るぞ、山岡」

昔は長野にお世話になったと山岡に話す大谷。「家で美味しいものを友達に食わせたいから生麺をわけてくれというから、それだけは嫌だと断った。すると私がうどんを茹でられないとでも思ってるのかと長野さんは激怒した。それから犬猿の仲だ」「なぜ断った」「俺は長野さんの家の台所を見たからだ」「なるほど。お前が悪い」「なんで」「俺に任せろ。これから長野さんの家に行く。お前は生麵を用意しろ」「むう」

あれと呟く大谷。「これは長野さんの家?マンションじゃないの」「バカ。違うんだ」「来たな。まあ入れ」「すごい。業務用の中でも最高の火力を持つカスレンジ。この余裕たっぷりの鍋。それに茹でた麺をすぐに洗うことのできるたっぷりとしたシンク」「大谷よ、いつかお前を連れていったのは私の事務所なんだ」「そうか」「それくらいわかれ。でなきゃ家でうどんを茹でたいというわけないだろ。さっさとうどんを茹でろ」「ぬう」

うどんを茹でる大谷。「うどんの美味しさの決め手は弾力のある歯ごたえとなめらかな舌触りだ。それを出すためにはたっぷりのお湯でなるべく短い時間で茹で上げることが必要だ。でもお湯の温度が高すぎてグラグラ沸き立つと、うどんが動きすぎて表面が荒れるが、これだけ火力が強くてお湯がたっぷりだと、うどんはちょうどよい具合に動く」

うどんを美味く茹であがるかは、うどんのでんぷんを上手に糊化するかにかかっているという山岡。「でんぷんは炭素と水素でできた分子が鎖状につながり、生の状態ではその長い分子が束になって一定の方向に固まっている。さらにそういう束が集めって、でんぷんの粉を作っている。束になって一定方向に固まっているから崩れやすい。だからボソボソ粉っぽい感じがする。これをβでんぷんと言う」

「それに水を加えて過熱すると、水の分子はでんぷんの間に入り込んで、でんぷんの分子の向きはバラバラになるが、同時に互いに絡まりあって、身動きできない状態になる。つまり簡単に離れないから、粘り気が出る。これをαでんぷんと言う。粉は糊の変わるから糊化だ。でんぷんは水に溶けやすいからでんぷんの分子の間に水がはいる。お湯の温度が低いと糊化する前に水を必要以上に含むから、だらりと腰のないゆであがりになる。だからたっぷりのお湯とそのお湯を高温に保つ強力な火力が美味しくうどんを茹で上げるには必要だ。おい、大谷、できただろ」

「おお、茹で上がった麺をできるだけ冷たい水でもみ洗いして表面のぬるぬるを取る。これが最後の大事な仕上げだ。こうすると表面がなめらがで腰があってもちもち弾力のある最高のうどんになる」「よくやった、大谷」「ぬうう」