続・男はつらいよ | ロロモ文庫

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全国を旅するフーテンの寅こと車寅次郎は妹のさくらの出産の噂を聞きつけて、ぶらりと故郷の葛飾柴又に戻ってくる。「とらや」に行き、さくらの子供を見て、俺にそっくりだなあと涙ぐむ寅次郎は長居ができないと言う。「頼む。旅に行かせてくれ。俺を止めないでくれ。それじゃ達者でな」さくらやさくらの夫の博や竜造とつねの叔父夫婦に別れを告げて立ち去る寅次郎。

寅次郎は英語塾を経営するかつての恩師の坪内で出くわして挨拶する。「あっしのこのツラに見覚えありませんか。葛飾商業で先生に英語を習っていた車寅次郎ですよ。勉強できねえって先生にぶん殴られて、口惜しいってんで先生とこの鼻たれ娘を苛めてた不良の寅ですよ。忘れちゃったかなあ」「いいや。忘れとらん。覚えとるよ」坪内の家に行く寅次郎。「ところであの鼻ったれお嬢ちゃんは元気ですか」「ほおれ。そこに立っとる」美しく成長した夏子を見て、目を見張る寅次郎。

坪内の家で酔っぱらって上機嫌になる寅次郎。「でも先生、よく俺のことを覚えていてくれたね」「お前の顔は一度見ると忘れん顔だからな」しかし寅次郎は胃痙攣を起こして、市民病院で入院する羽目となる。退屈した寅次郎はテキ屋の手口を患者相手に教えて、爆笑を買う。そんな寅次郎を注意する青年医師の藤村。「君大人しくしなさい。ここをどこだと思ってるんだ」「どこだと思うってお前さんどこに勤めているんだい。ええ。てめえインテリだな。大したもんだよ、カエルのしょんべん。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどしだよ」

啖呵を切る寅次郎であったが、夏子を見て急に大人しくなる。「寅ちゃん、具合はどう」「ええ、まだ、ちょっと」いいもの食べ過ぎて胃がびっくりしたんでしょう、と夏子に話す藤村。「まあ明日にでも退院できるでしょう」「どうもいろいろと」「あなたはあの方の御親戚の方ですか」「いいえ。違いますけど」「そうでしょうね。そうでしょうね」

寅次郎はうな丼を食いたいと藤村に申し出るが、断られたため弟分の源吉と病院を飛び出す。僕はあんな男は初めてだ、と夏子に言う藤村。「正直言って病院に戻ってきてほしくないですね」「はい。すいません」「いや、なんだか、あなたを責めるような言い方になって。すいません」

寅次郎は焼肉屋に行くが、金を持っていなかったため、無銭飲食のとがに問われて留置所送りとなる。警察を出た寅次郎は俺はすぐに調子を乗って羽目を外す馬鹿な男だ、と坪内に言う。「とてもみっともなくてこの街にいられねえから、旅に出ますよ。いえ、止めないでおくんなせえ。そのうちきっと御恩返しさせていただきます。お体を大事にして、きっと長生きしてくださいよ」「うむ」

一か月後、京都旅行をした坪内と夏子は弟分の源吉とテキ屋稼業に励む寅次郎と再会する。まともな仕事をする気はないのか、と寅次郎を一喝する坪内。「いや、ないわけでもないんです。この前も別府の友達から旅館の仕事をしないかと」「じゃあなぜ別府に行かん。なぜ京都あたりでグズグズしてる」「京都は景色もいいし。そのほかに、まあ理由にならないんだけど、おふくろがいるんでね」「おふくろ?」「いや、いるらしいってんで、まだ会ったことはねえんですけどね」

説明する寅次郎。「芸者やめて関西のほうで仕事やってるってのは、人づでで聞いてましたけど、一カ月前に仲間が居所知らせてくれたんですよ。なんとかってホテルで働いているそうですよ。別に会ったってなんてことないし、先生の言うとおり、別府でも行きますよ」「何言ってるのよ。寅ちゃん。お母さんと会いたいでしょう」

「ええ。でも俺を捨てたおふくろですからねえ。向こうは会いたがっているかどうか。それにあっしはやくざな暮らしをしている男だし、おふくろが立派な暮らしをしていたら、きっと迷惑じゃないかと思って」お前のおふくろが死んでしまったらどうする、と怒鳴る坪内。「その時になったら遅いんだぞ。さあ会いにいけ。生きてるうちに」「じゃあそうしますかねえ」「夏子。お前ついていってやれ」

寅次郎の母のお菊はラブホテルを経営している下世話な女であった。「今頃、何の用や。ああ銭か。ゼニならないで」「なんてこと言うのよ、おばさん。寅ちゃんは産みの親に会いたい一心でここに来たのよ」「そうやの。ほな部屋でも来てコーラでも飲もうか」寅次郎は夏子に「帰ろう、お嬢さん」と呟く。

「なんや、そんなすねた顔して。死んだ親父とそっくりな顔しくさって。見た事カタギやなさそうやな。こんな素人娘連れ込んで。そんなところも親父とそっくりだ」「馬鹿野郎。なんてこと言いやがるんだ。俺はこんな淫売上がりの女を見るためにノコノコやってきたんじゃねえんだい。てめえなんかどっかに消えてなくなれ。この糞婆あ」「ようそんなことが言えるな。産みの親に向かって」「てめえが産みの親?誰がてめえに産んでくれと頼んだ」「好き放題なこと言いやがって、お前こそ出て行け」喧嘩別れしてしまう寅次郎とお菊。さめざめと泣く寅次郎を、人生とは悲しいなあ、と慰める坪内。

傷心の寅次郎を連れて、葛飾柴又に戻ってくる坪内と夏子。寅次郎は38年間、母のことを考えて生きてきたんだと印刷工場の工員たちに涙ながらに訴えるが、夏子の顔を見ると急に元気になる。「だいぶ元気になったみたいね」「ええ、でもあの時のことを考えると、胸のこのあたりにしこりのようなものが」「そうねえ、今日家に遊びに来ない」「ええ。ありがとうございます」

坪内の家に行き、ご馳走になる寅次郎。「フーテンの寅公。お前は実に馬鹿だなあ。お前を退学させた校長の狸も馬鹿だが、校長をぶん殴ったお前はもっともっと馬鹿だぞ。その馬鹿さ加減がわかってるのか、お前は」

お父さん、やめなさい、という夏子に、止めないでください、という寅次郎。「今、あっしの馬鹿さ加減を叱ってくれるのは先生しかいないんです。先生、もっと叱ってください」世の中には寅次郎よりもっと馬鹿な奴がいると興奮しすぎた坪内はぶっ倒れてしまう。坪内を介抱しながら、寅次郎にまた来てねと言う夏子。「お父さんは会うと寅ちゃんの悪口ばかり言うけど、寅ちゃんが来るのを凄く楽しみにしてるのよ」「わかりました。また寄らせていただきます」

坪内に相談があると言われる寅次郎。「実はなうなぎが食いたいんじゃ」「冗談じゃねえや。相談があるから来てみたら、うなぎ食うのになんで俺がいちいち来なくちゃならねえんだ。そんなら丸甚に電話すれば、すぐ持ってきますよ」「魚屋で売っているのは養殖のうなぎだ。ありゃいかん。天然のナチュラルなうなぎが食いたいんだ。どうかね、江戸川で釣れんかね。五、六年前、近所の子供が釣ってきたのを食べたが、実にうまかった。あの味は忘れられんなあ」「それは昔の話。今の江戸川は汚いんだから」「わかった。もういい。わざわざ呼び出してすまなかった」「なんだい。そんなふうに言われると俺困っちゃうな」「もういい」「しょうがねえなあ」

うなぎ釣りを精を出す寅次郎に、昨夜お父さんに叱られちゃったと話す夏子。「京都の話をしてて、私、寅ちゃんのお母さんをひどい人だって言ったら、怒りだして。子供が可愛くない親はどこにいる。寅を捨てたことはそれだけの事情があったはずだ、他人のお前が生意気な口をはさむんじゃない、って」寅次郎は見事うなぎを釣りあげて、坪内に届けに行くが、坪内は眠るように死んでいた。

坪内の通夜でさめざめと泣く寅次郎を見て、叱咤する御前様。「寅。みっともない。泣くのはやめろ。悲しいのは誰も同じだ。しかし一番悲しいのは誰だ。あの娘さんだ。その娘さんが涙一つこぼさずにきちーんとしておられるのに、お前は何だ。こういう時こそお前がしっかりせねばならんのだ。それくらいのことわからんほどお前も馬鹿じゃなかろう」

気を取り直して、寅次郎は本葬をテキパキと取り仕切るが、涙をこらえていた夏子が、藤村の胸に顔を埋めて泣くのを見て、二人が恋仲であることに気づいてショックを受ける。心配するさくらに、どうってことないよと強がる寅次郎。「俺は慣れてるしよ。一応、先生の葬儀も取り仕切ったしよ。これでちったあ先生の恩返しもできただろう。あとのことは別にどうってことはねえんだよ。へへへ」

それから一年。藤村と新婚旅行に京都に出かけた夏子は、寅次郎がお菊に小遣をせびっているのを見て、なんともいえない感情に襲われるのであった。