男はつらいよ | ロロモ文庫

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二十年前、父と喧嘩して故郷の葛飾柴又を飛び出した車寅次郎は、父も死に秀才の兄も死に、妹のさくらだけ生き残っていることを知り、二十年ぶりに故郷に戻ってくる。「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎。人呼んでフーテンの寅と発します」

帝釈天の祭りで調子に乗って纏を振う寅次郎は、帝釈天の僧侶である御前様に挨拶する。「あっしですよ。車平造の息子の寅ですよ。庭先に入り込んでは、トンボを捕まえようとして、御前様に怒られた、不良の寅ですよ」「ああ、覚えとる、覚えとる」寅次郎は叔父夫婦の竜造とつねの経営する団子屋「とらや」に現れ、不肖の妹を今まで育ててくれてありがとう、と竜造夫婦に感謝の言葉を述べる。

さくらは近所の女工でもやってるのか、と聞く寅次郎に、とんでもないと答える竜造。「オリエンタル電気の電子計算機係なんだよ」「そりゃ大したもんだよ。今の世の中、なんてったって電子だからね」戻ってきたさくらがあまりに美人になっているのを見て驚く寅次郎。さくらは最初は寅次郎を見て、この人誰なのと怖がるが、兄と知って感激する。「お兄ちゃん、生きてたの」「さくら。苦労かけたな」

オリエンタル電子の下請け会社の社長の息子とさくらの見合いの日となるが、出席するはずだった竜造は二日酔いの上、ホテルのような立派なところに行くのは嫌だと言い出す。じゃあ一人で行くわ、というさくら。「この話は部長さんから押し付けられたんだもの。あまり乗り気じゃないの」結局、付き添いとして寅次郎が行くこととなる。そのホテルのでかさに驚く寅次郎。

いよいよ見合いが始まり、下品にスープを飲む寅次郎。出版関係の仕事をしているという寅次郎は次第に酔っ払い、本性を現していく。「さくらは本当は漢字なんで「櫻」なんです。これは二階の女が気がかかるって意味です。いや漢字ってのは面白いですな。しかばねに水と書いて「尿」、しかばねに米と書いて「屎」。あっしが変だなと思うのはしかばねにヒ二つ書いてなんと「屁」。どうして屁がヒか。つまりおならはピーっていう洒落かと思って。へへへへへ」「お兄さん、やめて」「何、さくら、お前ビール飲むか」「結構よ」「いや、結構毛だらけ、猫灰だらけと言ってね。そして尻の回りは糞だらけと続くんだ」

さらに泥酔する寅次郎。「ねえ、不思議でしょう。こんな美人の妹に、こんなぶっこわれたツラの兄貴がいるなんて。これと俺とは種違いなんだ。あたしの親父ってのは大変な女道楽。俺のおふくろは芸者なんですと。その親父が言うにはね、あたしは親父がへべれけになった時の子供なんだって。親父はいつもあたしのことをぶん殴る時に言ってたね。お前はへべれけの子供だから、生まれついてから馬鹿だとよ」「お兄ちゃん」「真面目にやってもらいたかったよ、本当に」当然のごとく、見合いの話はお流れになる。

寅次郎は弟分の登が本を売っているのを見て、もっとましなバイが出来ないのかと嘆く。「兄貴。寅の兄貴じゃねえか、俺は随分探したんだぜ」「てめえみてえな愚図は田舎帰って肥溜めでも担いで親孝行しろと言ったのがわからねえのか」見事な弁達で本の叩き売りを始める寅次郎。たちまち寅次郎の回りにできる人垣。

とらやに登を連れてきて、面倒見てやってくれと竜造に頼む寅次郎。つねはお前のせいで縁談を断られたと寅次郎を非難する。「こんないい縁談はないんだよ。こう言っちゃなんだけど両親も財産もないさくらちゃんだよ。今まで人に言えないつらいことがあったんだよ」「俺みてえなやくざな兄がいるから、これが嫁に行けないってわけか」

もういいのよ、というさくら。「私、あきらめているんだから」「おおそうだよ。人間あきらめが肝心だ。だいたい見合いについてってくれと行ったのはてめえたちじゃねえか。愚痴っぽいばばあだね」「ばばあとは何だ」「おや、じじい。怒ったね」さんざん世話になった二人になんてこと言うの、と寅次郎を怒るさくら。「謝りなさいよ」「この野郎。妹のくせに生意気だぞ」さくらをぶん殴る寅次郎。怒りのあまり卒倒する竜造。寅次郎は登を残して、とらやを出て行く。

それから一カ月。奈良で御前様と寺巡りをしていた娘の冬子は、外人観光客のガイドをしている寅次郎と会う。「お前が出目金とからかった娘の冬子だ。冬子、覚えてるか」「ええ、寅ちゃんでしょう。ちっとも変らない」美しく成長した冬子を見て、一目ぼれした寅次郎は、外人観光客をほっぽり出して、御前様と冬子の世話係を買って出て、そのまま御前様と冬子にくっついて葛飾柴又に舞い戻ってくる。

さくらがとらやの裏にある印刷工場の若者たちと仲良くするのを見て、機嫌が悪くなる寅次郎。「断っておくが、うちのさくらを引っ掛けようとしても、そうは問屋がおろさないぞ。あいつは大学出のサラリーマンと結婚させるんだい。お前ら菜っ葉服の職工には高嶺の花だい。わかったか」

寅次郎に話があるという職工の博。「大学を出てない職工にはさくらさんは嫁にやれないと言うのか」「おお、そうだ」「じゃあ聞くけど、あんた大学出か」「え」「もし仮にあんたに好きな人がいて、その人の兄さんがお前は大学出じゃないから妹やれないって言ったら、あんたどうする」「え」「兄さん。あんた女の人に惚れたことがありますか」「え」「兄さんも男なら女の人を心の底から愛したことがあるでしょう」

あれ、と博に聞く寅次郎。「お前、さくらに惚れてるな」「……」「この野郎、女だとか愛だとか蜂の頭だとか蟻のキンタマだとか御託並べやがって、てめえ要するにさくらのこと女房にもらいてえんだろう」「いや、僕は親兄弟もいないも同然だし、大学も出てないから」「おい、こら、青年。お前は大学を出ないと嫁を貰えないと言うのか。てめえはそういう主義か。いいんだ、勝手にやったらいいんだよ。お好きなようにやりなさいよ」

飲み屋で女を掴むのは目だ、と博に説教する寅次郎。「といって、じっと見ちゃいけないよ。色気違いと思われるからね。だからちょっと流すんだよ。すると女の頬っぺにん電気がビビビと感じるんだよ」

ボートを漕ぎながら冬子に視線を送る寅次郎。「寅ちゃん、どうしたの。目にゴミでも入ったの」「いや、この辺も近頃ホコリっぽくなってきましたね。ははは」オリエンタル電気に乗り込んだ寅次郎はさくらにこの会社の男性社員は大学出かと聞く。「うん。大部分はね」「大したもんだ。カエルのしょんべんだね」「何しに来たの」「いや、通りすがりに来ただけよ。じゃあ帰るわ」「もう帰るの」「あ、そうだ。隣の博って職工どう思う」「どう思うって何がよ」「いややっぱり無理だろうな」「無理?」「なんでもない、なんでもない。社長に会わないで行くけどよろしくな」

博にさくらは脈がないからあきらめろ、という寅次郎。「あの、ちゃんと結婚してほしいと言ってくれたんですか」「ダメだよ。取りつくしまもないってのはあのことだ」「そうですか」絶望した博はさくらに別れを告げる。「工場に来てから三年間、毎朝あなたに会えるのが楽しみで、それだけが楽しみで。僕は出て行きますが、さくらさんは幸せになってください」

博にさくらのことはあきらめろ、と言ったとさくらに告げる寅次郎。「だってお前、気がないんだろう」「じゃあ、会社に来たの、そのことを確かめるために」「そうだよ。お前、つれなかったじゃないか」「馬鹿。お兄ちゃんの馬鹿」飛びだした博を追いかけて、一緒に電車に乗るさくら。戻ってきたさくらは博と結婚すると寅次郎に告げる。

結婚式の日となるが、寅次郎は博の父親が来ていると聞いて、それはおかしいと興奮する。「博の親父は北海道の百姓で、博と大喧嘩して親子の縁を切った、来るわけねえんだがなあ」しかし博の父親の諏訪は大学の名誉教授をしている立派な紳士であった。俺がグレて高校を退学になった時、もうお前の顔など見たくないと父に言われたという博。「今さら親父づらしてほしくない。息子の結婚式に出たのは世間体を悪くしたくないという考えからさ」

結婚式の間、にこりともしない諏訪に反感を覚える寅次郎。スピーチする諏訪。「本来なら新郎の父としてのお礼を言わなくてはならんところですが、私はそんな資格のない父でございます。実は私は八年ぶりにせがれの顔を見ました。皆さまに温かい友情とさくらさんの優しい愛情に包まれたせがれの顔を見ながら、私は親としていたたまれないような恥ずかしさを。一体私は親としてせがれに何をしてやれたのだろうか。なんという私は無力な親だったかと」

涙する諏訪。「この八年間、私にとって長い冬でした。そして皆さまのおかげでやっと春が迎えられます。さくらさん、博をお願いします。さくらさんの兄さん、二人をよろしくお願いします」感激する寅次郎。「お父さん、どうもありがとう。さくら、よかったなあ」号泣する寅次郎。

さくらがいなくなり寂しさを隠せない寅次郎に、冬子はいっしょに遊びましょうよ、と誘う。冬子をオートレースや焼き鳥屋に連れて行き、有頂天になる寅次郎は、冬子と所帯を持つことを夢見るが、御前様より冬子に大学の先生が婿に決まったぞとあっさり言われる。とらやにこっそり帰った寅次郎は、新婚旅行から帰ってきたさくらたちが自分の噂をしているのを耳にする。

「寅次郎はショックを受けて幽霊みたいな顔をしてたそうだぜ」「でも、お兄ちゃんはそんなに冬子さんのことが好きだったのかしら」「もう大変だよ。さくらちゃんがいなくなって、毎日寺通いして有名だったんだから」「あのお嬢さんは博愛主義者みたいなことろがあるんで、あのバカ勘違いしやがって」「可哀相にねえ、今頃何してんだろうねえ」「さくら。俺はもう疲れちゃったよ。枕出してくれよ」

押入れをあけたさくらはそこに隠れている寅次郎を見つける。「どうしたの、こんなとこで」「知らねえよ」「ずっといたの」「聞いてたよ」旅支度を始める寅次郎にどこに行くの、と聞くさくら。「ちょっと、旅に出ようと思って。前からそう考えていたんだ」「お兄ちゃん、私、なんて言ったらいいか」「いいんだよ。よくあることだよ」さくらに軽く手を振って、出て行く寅次郎。兄貴、と叫んで後を追う登。

上野駅の食堂で八戸行きの切符を登に渡す寅次郎。「そこがお前の生まれ故郷だろう」「ええ」「だからその切符で帰りな。親孝行しろよ」「兄貴。そんなこと」「いいか。お前もそろそろてめえの年考えなきゃいけねえころだ。ロクなバイできない癖に、俺の後ちょろちょろ追い掛けてもしょうがねえ。てめえの行く末考えたことあるのか。これからどうするつもりなんだ。俺みてえになりてえのか」

「そうだよ、兄貴。俺は兄貴みてえになりてえんだ」「俺みてえな馬鹿になりてえのか。てめえそれほど馬鹿かい」「一緒に連れてってくれよ」「馬鹿野郎」登を殴る寅次郎。「俺はてめえの甘ったれたツラをほとほと見飽きてるんだい。とっとと出て行け」「行くよ。行きゃいいんだろう、畜生」

それから一年。さくらは寅次郎そっくりの赤ん坊を産む。寅次郎は登とともにテキ屋稼業に励むのであった。