男の紋章 花と長脇差 | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

兵舎工事を巡るトラブルで、満州あがりの佐原徳三は関東衆の親分と対立し、徳三は子分に親分衆の暗殺を命じ、大島組の若親分の大島竜次を亡き者にしようとするが、汽車に轢かれて死ぬ。親分衆は結城を始め三人の親分が殺され、徳三が竜次の母である村田きよの腹違いの弟であったことから、結城の弟分であった郷田は結城の息子の仙次にこのままでは済まされないと言う。

「村田の婆あは絶対許せねえ」「叔父貴。親父を殺したのは徳三だ。村田を恨んで喧嘩するのは死んだ親父も喜ぶまい」「馬鹿野郎。お前はまだ若い。この機会に売り出すんだ。村田は大島と組んで縄張りを広げようとするに決まっている。まごまごしてるとこっちも食われてしまうぜ」

父の庄三郎の三回忌法要をすると幼馴染の晴子に言う竜次。「それで君のお父さんの勘三の法要も一緒に行いたいんだ。全国の貸元衆も来てくださる。親父も勘三叔父貴もきっと喜ぶだろう」「その心配ならいりません。父は死んで初めて私のとこに戻ってくれたのです。父の法事ならどんなに小さくても、カタギの私の手でやります。悪いけど、渡世仁義の法事ならお断りします」「晴ちゃん」「勘忍して、竜次さん」「謝るのは俺の方だ。晴ちゃんの気持ちも知らないで」

弾丸道路建設について竜次に説明する県の土木部長。「軍も将来軍事物資を運ぶ軍用道路として大いに県に期待している。問題は川辺村の民家だ。どうしても立ち退こうとしないんだ。そこで工事を請け負わせてくれと結城組の代人の郷田が第二案を出した。それはこの民家を迂回して弾丸道路を作ると言うものだ。土木工事の専門家としてどう思う」「当然、第一案の直線道路を作るべきでしょう。完成後の輸送力が全然違いますからね」「しかし立ち退かんだろう。郷田も手を焼いて第二案を持ち出してきたくらいだ」「誠意をもって話し合えばわかってくれると思います」「大島君。国のためにやってくれんか」

竜次が弾丸道路建設に乗り出したと聞いた郷田は流れ者の大垣の安吉にうちで遊んでくれと頼む。「そのうち、お前の手を借りる時が来るかもしれん」「その時は力を貸すぜ」竜次は川辺村の住民に国家のために立ち退いてくださいと訴えるが、それはできないと拒否される。郷田は迂回道路周辺の土地を買い占めていると竜次に言う大島組の代貸しの雄造。「迂回工事になれば奴は莫大な金額を手に入れます」「そうか」「川辺の連中は郷田に脅かされているに違いありません」

きよを尋ねる仙次。「実は大島の親分のことで、村田の親分に相談に乗ってほしいことがあります」「竜次のことで?」「申しにくいことですが、大島の若は立ち退きを嫌がっている川辺村の人たちを強制的に追い払おうとひどいことをしておられます。そこで村田の親分さんに大島の若に言って聞かせてもらえばいいのではと」「わかりました。竜次は我が息子。よく言ってきかせます」「ありがとうございます。まだ私は駆け出し者で、親分におすがりする始末。亡くなった親父に代わって勘弁してください」「先代が徳三のために命を落した遺恨も忘れて、よくこだわりを捨てて相談に来てくれました」

郷田にあんたの言うとおりに話してきたと言う仙次。「だが俺はもうこんな役は嫌だ」「仙次。お前も結城の二代目だ。村田と大島を憎め。親父を殺した奴は村田の弟だ。そいつを忘れるな。村田と大島の親子喧嘩が俺たちの付け目だ」

仙次から話を聞いたと竜次に言うきよ。「お前、道路工事のためにカタギの衆に迷惑をかけているそうだね」「母さん。それは誤解です。川辺の人たちは立ち退きたいんですが、結城の衆がそれを阻んでいるんです」「二代目は今までの遺恨を捨てて、私を頼ってきた。私はそれを反故にできない」「私はただ川辺の人に立ち退いてもらって、県の測量工事をしてもらおうとしてるだけです。結城の二代目にそうお伝えください」

実は郷田に脅されていたと竜次に話す川辺村の住民。「本当はここを出たいんです」「よくおっしゃってくれました」8年ぶりに出所した島津の為吉は島津の縄張りを返してほしいと仙次に訴えるが、郷田はもう結城の兄貴はこの世にいないと言う。「お前さんに島津の縄張りを返すわけにはいかねえ。さあ帰ってくれ」

郷田は子分に為吉を殺せと命令するが、為吉は竜次に救われる。結城の貸元は子煩悩だったと竜次に話す為吉。「だが一粒種の仙次さんは渡世の道を歩くには気が少し弱い方だ。今では弟分の郷田が結城を取り仕切り、島津の縄張りを預かった覚えはねえと言う」「口惜しいでしょうが我慢してください。その代わり、私が為吉さんの面倒を見させていただきます」

為吉が竜次に拾われて不機嫌になる郷田。「しかも川辺村の住民が立ち退けば、こっちの計画はオシャカだ。大島に島津の縄張りを奪い返させるように仕向けるんだ。安吉さん、やってくれるかい。2、3人叩き斬るんだ」「おもしれえ。久しぶりに人を斬るか」安吉は大島組の子分になりすまして、結城組を襲って、三人をあの世に送る。「島津の縄張りは大島がいただく。ここはもともと為吉の縄張りだ。大島が為吉ともどもいただくと二代目に伝えろ」

お前を見損なったと竜次に言うきよ。「こともあろうに結城の縄張り荒らしをするなんて」「何かの間違いです」「覚えがないと言わせない。為吉はお前の家に匿っているだろう」「私の家にいます。でも為吉のために島津の縄張りを奪い返そうなど、そんなことは思っていません」「お前が島津の縄張りを奪い返さなかったことを証明できるまでは、村田の敷居をまたがせるわけにはいかん」

郷田の子分は竜次はいないかと為吉に聞く。「若親分は祭りに行ってる」「そうか。じゃあこれを必ず大島に渡せ」竜次への果たし状を読んだ為吉は単身郷田らの待つ河原に行く。「為吉。なんでお前がきやがった」「郷田。俺じゃ不服か。てめえみたいな悪党は俺一人で充分だ」しかし為吉は安吉に叩き斬られてあの世に行く。もうこれ以上争いたくないと言う仙次を叩き斬る安吉。

為吉の死を悲しむ竜次は県の測量技師を郷田組が半殺しにしたと聞き、堪忍袋の緒が切れて、郷田組に乗り込む。虫の息できよの所に行く仙次。「村田の親分。大島と郷田は喧嘩になります。若親分を助けに行ってください」竜次は安吉を地獄に送り、郷田を血祭りにあげる。そこに現れるきよ。「竜次」「母さん。わかってくれるな」「ああ」