新・男の絞章 度胸一番 | ロロモ文庫

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1937年、日中戦争が勃発し、大島組の若親分の大島竜次は軍医として最前線に出兵する。そして竜次が除隊すると聞いて、大島組の代貸の雄造や暴れん坊の辰は大喜びするが、大島組に現れた虎鮫を見て、お前は誰だと聞く。「あっしは戦線で大島親分と知り合った者です。以後よろしく」「それで若親分は」「いえ、あっしと一緒に除隊したはずですが」竜次は清村組の親分である清村義三郎を尋ねる。「私の判断ミスで息子さんを死なせてしまいました」「いえ、あなたが悪いのではありません」「私にできることなら何でも言ってください」

清村組の鈴木が兵舎工事の資金の15万円とともに失踪し、佐原組の親分の徳三のところに逃げ込む。兄貴分の笹塚に清村も兄貴の縄張りじゃ工事ができないと笑う徳三。「ゼニがなけりゃお手上げってわけだ」「そういうわけよ」「俺は満州で育った男だが、今、日本はシナと戦争中だ。軍の御機嫌さえとっておけば金儲けはいくらでもできるってことよ」

徳三は15万円を出せと鈴木に言うが、鈴木は早く満州に連れてってくれと頼む。「内地にいれば俺の命が危ない」「心配するな。笹塚の叔父貴や俺がついている。早く金を出せ」「俺を満州に連れていくと約束するまで金を渡せねえ」「まあ、当分遊んで行け」

大島組に戻った竜次は幼馴染の晴子と会うが、晴子は嫁に行くと言う。「私は竜次さんが好きよ。でも渡世人の足を洗うことができないでしょう」「それはできない。俺には大島組300人の子分を露頭に迷わせることはできないんだ。晴ちゃんも俺の親父の代貸を務めた勘三兄貴の娘だ。わかってくれるだろう」

村田組の女親分で実母であるきよと会う竜次。「除隊おめでとう」「ありがとう、母さん」「お前の除隊を機会に母さんは跡目を譲りたいんだよ。大島組と村田組をお前に一つにしてもらいたいんだ」「それはいけません。村田には母さんのために修行した立派な子分衆がいるじゃありませんか。その人たちを差し置いて、私が村田を継ぐなどそんなことはできません」「お前らしいね」

鈴木が金を持ち逃げしたことを知った竜次は、清村に工事はどうなるんですと聞く。「あなただけの恥ではない。我々、軍工事関係者全体の恥になるんです」「あっしは軍に詫びて工事の中止を申し出るつもりです」「それはいけません。工事はやるんです」「引き受けた工事は笹塚の縄張り内です。あいつはあっしに工事をさせたくないんです。鈴木は佐原のところに逃げ込んだが、今度の一件では奴が絡んでいるに違いねえ」「あなたが表に立つと問題があるでしょう。私があなたの代人になり、工事一切を引き受けます。戦地で清村君を死なせた私です。その償いをさせていただきます」

竜次は清村の工事資金のために5万円貸してくれときよに申し出るが、あっさり断られる。「なぜです」「いいから、あなたも手をお引き」竜次は辰と虎鮫を引き連れ、笹塚の縄張りにある工事地の下見に乗り込む。早速笹塚は殺し屋を差し向けるが、竜次らはあっさり追い払う。

竜次を自宅に呼ぶ近藤。「俺はお前の父さんに大変世話になった者だ。イカサマをしてバレたところを庄三郎兄貴に救われた」「そうですか」笹塚は最低の男だと断言する近藤。「構うことはない。明日でも鍬入れをやってしまえ。だがここの町長と笹塚はグルだ。だから人夫は集められない」

竜次は第三師団本部に行き、中国戦線で共に戦った藤木大尉と会い、軍服二着を借りる。軍服を着て町長に会えと辰に命令する竜次。「町長にこう言うんだ。建設予定地の麦を刈り取っていい。大切な食糧だ。町役場に下げ渡す。ありがたく頂戴しろ、とな」中尉になりすまし町長と会って、麦を刈れと命令する辰。麦を刈れと命令する町長。誰が麦を刈っていいと言いましたかと町長に聞く竜次。「許可証を見せてください」「それが中尉さんが口頭で」

そんな中尉は知らんと言う憲兵隊長になりすました虎鮫。下手をしたら軍事裁判になると町長に言う竜次。「大島さん、助けてください」「私は軍に話して穏便に取り計らいます。そのために誠意を見せなくてはいけません。人夫を出してください」「わかりました」「予算は町の方で出してください」「わかりました。軍の方はよろしく」「わかりました」

竜次の思惑通り、鍬入れ式は行われ、兵舎工事が開始される。竜次に感謝する清村。怒り狂った笹塚は近藤の命を狙うが、返り討ちにあって死ぬ。私は自首すると竜次に言う近藤。「竜さん。しっかり頑張って工事を完成させなさい」「申し訳ございません」徳三は15万出せと鈴木を拷問するが、言うことを聞かない鈴木に業を煮やして責め殺す。

私は嫁に行くのをやめたと竜次に言う晴子。「やっぱり竜次さんが好きなの」「晴ちゃん」鈴木の情婦である芸者の芳子は15万円を竜次に渡す。「これは鈴木から預かったものです。これを清村親分に。鈴木は徳三に騙されたのです」「わかりました」清村に15万を渡す竜次。「何も聞かずに受け取ってください」「わかりました」

手詰まりとなった徳三は清村を暗殺する。関東の親分衆は徳三を許さないと激怒する。「満州帰りのゴロツキ野郎め」徳三を制裁するのは待ってくれと頼む竜次。「私は血の雨を見たくありません。何とか徳三を自首させます」きよに力を貸してくれと頼む徳三。「嫌だね。お前は自首するんだ。それがお前に残されたたった一つの生きる道だ」「姉さん。俺はあんたの血の分けた弟だよ」「……」

「俺は妾の子だ。芸者だった母さんと俺は紙くずのように捨てられた。最後は二人で満州落ちだ。それからどんな生き方をしたか、姉さんにはわからないだろう」「お前が苦労したことはよくわかる」「俺は満州に帰る。その資金を貸してほしいんだ」「ダメだね」「わかった。力には力だ。大島竜次は姉さんの子だったね。あの野郎は邪魔だから俺がバラすぜ」「勝手にするがいい」

子分たちに親分衆を襲えと命令する徳三。「大島は俺がやる」竜次に果たし状を送る徳三。操車場で対峙する竜次と徳三。「徳三。自首しろ。関東の親分衆はお前を許さない」「ほざけ。俺の子分衆が親分衆を襲っている」「なに」「貴様のために俺は全てを失った。俺は貴様をばらす。そして満州に飛ぶ」

竜次は徳三を叩き斬ろうとするが、徳三は待ってくれと頼む。「俺はお前の叔父だ」「なに」「お前のおふくろの村田の姐さんは俺の姉だ。本当だ」竜次がひるんだ隙に徳三は逃走しようとするが、汽車に轢かれて死ぬ。

きよに徳三は母さんの弟だったのかと聞く竜次。「ああ。徳三は亡くなった父が芸者に産ませた子。私も徳三に会うまで知らなかった。満州くんだりでどんな育てられ方をしたか。徳三も哀れな男でね。許してやってくれ」「いいんだよ、もう。俺だって出来のいい息子でないし、母さんだって褒められたおふくろではないからね」「馬鹿だね、この子は」「母さん、俺には人間の生き方と言うものが少しずつわかってきたような気がする」「竜次。母さんは古い渡世人の世界から抜け出せないけど、お前はお前なりの道を歩いてくれればいいんだよ」「母さん」