男の紋章 喧嘩状 | ロロモ文庫

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飯塚組の花会に出席した大島組の若親分の竜次は、代貸の雄造に賭場に出てくれと頼まれる。「いくら博奕が嫌いでも賭場に顔を出すのが昔からの渡世人のしきたりです」賭場に刑事の深田が現われ現行犯で逮捕すると騒ぎ、飯塚組の代貸の伊三郎は深田に金を渡して、その場を納める。

みっともないところを見せたな、と竜次に詫びる飯塚。「ついうっかりしてイヌに餌をやるのを忘れたんだよ」これじゃ稼業にならねえとボヤく伊三郎。「深田はサツを笠に着て酒はせびる。賭場の上がりはかすめる。挙句のはてに気に入った女に手をつける」「奴を怒らせると都合が悪い。大人しくするんだな」

ばくち打ちの清二は花岡組のイカサマ賭博に引っかかり、借金のカタに恋人の智恵を花岡にとられてしまう。「清二。口惜しかったら三百円もってこい」「畜生」智恵を深田に提供する花岡。ボコボコにされた清二を助ける大島組の虎鮫と辰。清二の手当てをする竜次。

竜次に事情を話す清二。「イカサマに引っかかったあっしも悪いんですが、深田の奴は前から智恵に目をつけてたんです。深田の奴は犬畜生なんです」深田が犬畜生なら、あなたは犬畜生に劣る男だ、という竜次。「清二さん。あなたは愛している女を博奕のカタに渡した。それが男のすることですか」「親分。勘弁しておくんなさい」

雄造に明日、大島組で花会をやると告げる竜次。「貸元衆に連絡をつけといてくれ」「花会を?何のために賭場を開くんです。博奕と喧嘩をやらないのは大島組の看板じゃありませんか」「胴元はこの俺だ」

花岡と酒を飲む深田の前に現れた竜次は金を深田に渡す。「明日、大島組が花会を行うことになりました。大切な客人や貸元衆に間違いがあると大変なことになります。そこのところをよろしくお取り計らいくださいますように」大金をもらってホクホク顔で帰る深田。花岡に三百円を渡す竜次。「これで智恵さんを返してください」

竜次が花会を開くと聞いた竜次の幼馴染の晴子は、なぜ開くのですか、と竜次の母で村田組の親分のきよに聞く。「賭博は法律で止められているのに」「竜次が渡世稼業を引き継いで初めて博奕の胴元を務めようというからには、何か理由があるはずだよ。私は竜次が何をしようとあれを信じているよ」

大島組の花会は開かれ、滞りなく終了する。飯塚に飯塚の息子の紋次が警察にいることは間違いないと伝える伊三郎。「十日前にこの町に舞い戻ってきて、深田の奴に御用になったそうです」「深田に話を通せ。金ならいくらでも出す」「それが、深田の奴、若親分に会わせもしないんで」深田から拷問を受ける紋次。「俺を賭場荒らしにでっちあげようとしてもそうはさせねえぞ」「神妙に白状しろ。警察をなめるなよ」さらに拷問を浴びせる深田。

賭場のテラ銭を持って警察に出頭する竜次に、なんの真似だ、と聞く署長。「花会のテラ銭です。証拠物件として提出します。私はどのような処分も受けますが、花会を開くにあたって、深田刑事の許可を得ており、彼に儲けの一部を渡しております」「大島君。私が深田を調べて、それ相応の処置をする。賭博開帳の件に関しては、後で君に沙汰する。このことが外部に漏れると警察の信用にかかわる。今日のところは黙って引き取ってくれ」「私はあの男が権力を笠に着て横暴を振るうのを許せなかったんです」深田に今後は行動を慎んでくれと言う署長。「今回のこと私の胸に納めておく」畜生、大島の野郎、と怒りを燃やす深田。

晴子は竜次が自分が捕まることを覚悟に悪徳刑事を告発しようとしたことを知って、ほっとすると同時に、警察に対抗して大丈夫かと心配する。清二は智恵を連れてきて、これから博奕から足を洗って真面目になると竜次に誓う。しかし智恵を奪われて頭に来た深田は清二を傷害罪で逮捕してしまう。

花岡に大島の縄張りが欲しくないかと聞く深田。「他の貸元連中が承知してくれるかどうか。飯塚のじいさんさえ、うんと言ってくれりゃ」「飯塚か。あいつには咽喉から手が出るほど欲しいものがある。せがれの紋次だ。まあ、俺にまかせろ」

花岡組は大島組が面倒を見ている鳶衆の松の内のしめ飾りの権利を寄こせと主張する。全ては総会で決めようと竜次に言う花岡。総会の席で、松の内のしめ飾りの権利は鳶衆のものだと竜次は主張するが、貸元の投票の結果、しめ飾りの権利は花岡組のものとなる。縄張りを奪われ怒り狂った大島組の虎鮫と辰は、花岡組に殴り込みをかけるが、あっさり捕まってしまう。

大島一家総出で殴り込みをかけるべきだと血気にはやる雄造に、それでは血の海を作ることになると押さえる竜次。子分を引き連れ花岡組に現れるきよ。「虎鮫と辰は返してもらうよ」「待ってくれ。話を聞こう」「松の内の権利は従来どおり鳶衆に扱わせること。大島の縄張り内の行事の一切に手を触れない事。今度の殴り込みの一切に関して水に流すこと」きよの貫禄に圧倒されて了承する花岡。そこに現れた竜次に、花岡の貸元は黙って私の条件を飲んでくれたよというきよ。竜次に引き渡される虎鮫と辰。「ありがとう。母さん」

竜次に警察から清二が心臓発作で死んだと連絡が入る。清二の死骸にとりすがって泣く智恵。清二の取調べに落ち度はなかったか、と署長に聞かれ、通常の取り調べを行いましたと答える深田。そして深田は大島を殺れと花岡に命令するが、花岡は大島と村田が組んだら逆にこっちがやられると弱気になる。そこに現れる紋次。「深田。俺を賭場荒らしにしやがったな」紋次は深田を斬る。深田は花岡を楯にして逃げる。ドスを腹に受けて死ぬ花岡。

部下を引き連れて飯塚組に乗り込む深田。「紋次を匿ってるだろう」「紋次は三年前に勘当同然でここを出た息子です。奴は確かに一度は旦那の手から返してもらいましたが、すぐに出て行ったんです」「紋次はこの俺を刺したんだ。恩を仇で返しやがったんだ。そして花岡を殺したんだ」

夜中になって、飯塚のところに逃げ込んでくる紋次。「とっつあん」「三年間、どこをほっつき歩いてたんだ。俺はお前の帰りをどんなに待ったかしれねえ」「とっつあん。俺は深田の野郎をこの手で殺してやりてえんだ」「俺はお前を逃がしてやる。深田の野郎はお前が殺らなかったら、俺が殺ってもいいような奴だ。あんな奴のために捕まることはねえ」

伊三郎は信頼できる貸元のところに紋次を逃がしてやるべきだと言う。「心底頼れる男は大島の貸元しかいません」「大島は頼れねえよ、伊三郎。この前の総会の時、俺は大島が正しいと知りながら、花岡に投票した。深田の差し金で紋次を釈放してやると言われてな。今さらどの面さげて」「しかし、親分。何もかも打ち明けて頼めば、大島の貸元だってきっとわかってくださるでしょう」

竜次に紋次を預かってくれと頼む飯塚。「紋次は深田を刺しやがった。こんなことを頼めた義理じゃないんだが、何も言わずに預かってくれ。警察の眼が薄らいだら安全な所に逃がしてやりてえんだ」もし竜次に断られたら、日本中の警察を相手にしても紋次を守るつもりだと言う伊三郎。「若親分を深田の手に渡したら、あいつは生かして返さないでしょう」紋次を預かることを了承する竜次。「私が預かる以上は、紋次さんの身柄は私にお任せいただけますか」「任せるも何も。お願いします」

紋次が大島組に匿われているという情報を得た深田は、竜次を警察に連行し、拷問を加える。「言え。紋次をどこに匿った」「私がなんで紋次さんを匿う理由があるんです。たとえ紋次さんを預かったとしても、あなたには渡せませんよ。紋次さんは私が立派に法の裁きを受けさせます」「貴様はヤクザで人間のクズのくせに、警察相手に喧嘩を売る気か」さらに拷問を加える深田。「紋次さんは自首させます。しかしあんたの手には渡さない。法はそれをつかさどる者によっては凶器になる。あんたに紋次さんを渡すと、気違いに刃物を持たすのと同じことになる」「貴様は犯人隠匿罪だぞ」さらに拷問を加える深田。

紋次は村田組に匿われていた。私が紋次さんを連れて警察に行きます、ときよに言う村田組の代貸の佐平次。「このままでは大島の若親分は深田のために大変なことになります。今日で逮捕されたもう七日たちます」「佐平次。竜次は痩せても枯れても大島組の貸元だ。いったん引き受けた以上、命を賭けても男を通すのが渡世の道だよ」「申し訳ありません」晴子は北沢男爵に竜次を助けてくれと頼む。「先生は前に竜次さんに言いました。困ったときにいつでも相談に来いと」「よかろう。俺は女に弱い性質でな」

北沢に引き取られる竜次。「大島。紋次をどうするつもりだ」「自首させ、法の裁きを受けさせます。県外に連れ出して深田の手の届かないところで」「それじゃあ、警察の面目は丸つぶれだ。県外に一歩も出すまい。それに花岡組も親分を殺されて黙っちゃいまい。また飯塚も紋次を自首させ警察の手に渡すと聞いたら、これも黙っちゃいまい。こいつは見ものだぞ」「わかっております」「道中無事ではすむまい」「覚悟しております」「お前は好んで危ない橋を渡りたがる。まあいい。この世にお前ぐらい馬鹿な男が一人ぐらいいてもいいだろう。はっはっは」

紋次に自首するよう説得する竜次。「紋次さん。あなたはどこまで逃げるつもりですが。日本中逃げても警察から逃げることはできませんよ。生涯あなたは日陰者として暮らさなくてはいけないんですよ」「親分。あっしに死ねと言うんですか。深田がどんな悪党かごぞんじないからそういうことを言うんです」「深田のやってきた悪事を制裁できるのは、あなたの証言だけなんです」「……」「私に任せてくれますか」「はい」

竜次は紋次を連れて県外に向かう。竜次が紋次を自首させるつもりだと聞いた飯塚は、紋次を連れ戻せと言うが、伊三郎は待ってくださいと言う。「あっしが大島の若親分に会って話を聞いてきます」「……」「あんとき、親分は大島の貸元に任せるとおっしゃったじゃございませんか」「伊三郎。紋次のことはお前に任せる」深田は警官隊を引き連れて紋次逮捕に向かおうとするが、署長に止められる。「君は謹慎したまえ」

花岡組は船に乗って県外に出ようとする竜次たちを襲う。そこに現れた伊三郎は紋次に逃げてくださいと言うが、紋次は断る。「俺は逃げない。俺は大島の若親分と約束したんだ。こんな極道者だが、男の約束だけは守りたいんだよ。俺は自首する。親父に伝えてくれ。親不孝してすまなかったけど、長生きしてくれとな」花岡組はさらに攻撃を加えるが、駆けつけた警官隊のために一網打尽となる。

私はもう引退しますよ、と竜次に告げるきよ。「みんなのおかげで今日までたいした間違いもなく人の道を踏んできたが、母さんもう疲れたんだよ。もらって得にもならないやくざの縄張りだが、竜次、受け取っておくれ」「待ってください、母さん。村田にはたくさんの子分衆がいます。今日まで村田を盛り上げた子分衆をさしおいて、私が引き継ぐなんて」「竜次。誰もがお前を頭にと言っているんだよ」よろしくお願いしますと頭を下げる佐平次たち。村田組を引き継ぐことを了承する竜次。

夜道、竜次は深田に襲われる。「貴様のために俺は警察を追われた。死ね」逃げてくれと頼む竜次。しかし深田は竜次に斬りかかり、返り討ちにあって死ぬ。嘆く竜次。「逃げてくれれば、斬らずに済んだものを」