博奕うち | ロロモ文庫

ロロモ文庫

いろいろなベスト10や漫画のあらすじやテレビドラマのあらすじや映画のあらすじや川柳やスポーツの結果などを紹介したいと思います。どうぞヨロピク。

流れ者の博奕打ちである海津銀次郎は舎弟の義松を連れて、黒田組の賭場に現れ、黒田組の客人である丈吉と勝負をして見事に勝ちを収める。賭場を出る銀次郎に声をかける女郎屋・錦楼を経営する山波新吉。「あんさんの腕を見込んで是非お願いしたいことがあるんです。わて生きるか死ぬかの瀬戸際なんです」「生きるか死ぬかの瀬戸際でわいらに女郎買いさせろと言うのかい」

銀次郎と義松を錦楼に連れていき、小菊と小花に相手をさせる新吉。明後日までに借金を返さないとこの店は黒田の親分に取られると新吉に言う女房のおとき。「わかってるがな。わかってるから足りん分のゼニ作ろう思うて、賭場行ったんやないか」「3000円の借金があるのに、まだ500円足らん言うのに。だいたい3000円の借金を作った元は何だす。みんなあんたの博奕やおまへんか」

「だから足りん分を作ろうと」「それでお金はできたんですか」「……」「できるわけないやろ。また100円損したんか」「心配すな。博奕の負けは博奕で返したる」「あんさん、まだそんなことを」「わしが博奕やるんやない。二階に来ている海津銀次郎ちゅう人に頼むんや。あの人に勝つ博奕打ちはどこにもおらへん。大阪で一番いう黒田組の客分の桜井丈吉はんが歯が立たないくらいや」

銀次郎は小菊から錦楼の経営状況を聞く。「借金の期限はあと二日とか」この店が他の人のものになるなんてイヤやわと言う小花。「あんないいおかみさんはいないわ」そこに現れる黒田組の代貸の大関は、小菊が銀次郎と一緒にいるのを見てむっとするが、大人しく錦楼を出る。

このままだと店はあの大関のものになると言う新吉。「銀次郎はん。ワイの力になってくれ。二日後に600円作らんことには、この店は黒田親分に取られてしまうんです。でもあいつらにこの店取られたら、この子らもどんなひどい目に会わされるかわかりまへん。明日、阿倍野の寺島親分の盆が立つんです」

早速、銀次郎は寺島の賭場に行くが、老博奕打ちの市岡に負けて持ち金をすってしまう。あきらめて帰ろうとする銀次郎に金を貸す市岡。その金を元手に稼いだ銀次郎は600円を新吉に渡して、市岡と飲みに行く。そこに現れる丈吉。「おや、あんさん」「昨夜はお世話になりました」

二人は知り合いかと笑う市岡。「丈吉は一年前から黒田一家に世話になっているわしのたった一人の弟子ですたい。丈吉、わしは海津さんと友達になった。最近の博奕打ちはゼニばかり眼を向けるが、海津さんは札に命を賭けて、それで負けてもええと思うとる。わしはそれに惚れたんじゃ」「へえ。あっしも昨日、これが本当の博奕打ちなんやと勉強させてもらいました」照れくさそうに酒を飲む銀次郎。

新吉は600円を元手に散髪屋で素人相手の賭場を開いて、さらに一儲けしようとするが、それが大関にバレて、ショバ荒らしをした見せしめに600円全部持っていかれてしまう。銀次郎は大阪城に小菊を連れ出す。店で勤めてこんなの初めてと感激する小菊。「小菊。これからたびたび二人で出かけようやないか」「ほんとに?」二人を尻目に小花といちゃつく義松。

借金が払えずに錦楼が黒田組に渡ると聞いた銀次郎は、錦楼にやってきた黒田にもう一日待ってくれないかと頼む。「銀次郎はん。この証文は法律や。法律には神も仏もあらへん」銀次郎に警告する大関。「海津はん。あんた店の女を勝手に連れ出したそうだが、ワイがそんなことはもう許さんで。おまはんも博奕打ちならそれくらいのこと知ってるやろ」

錦楼を追い出された新吉は一軒家を借りるが、絶望したおときは首を吊って死んでしまう。ワイのせいやとおときの棺に話しかける新吉。「ワイ、もう博奕やらへん。ほんまや。だから、ワイをもういっぺん叱ってくれや」ボンボンの寛太郎を利用して小菊と小花は錦楼を抜け出して、おときの線香を上げに行く。

銀次郎に会えて小菊は喜び、義松に会えて小花は喜ぶが、二人を連れ戻しに大関が現われる。「女郎の足抜きしたら、どがいなことになるか知ってまんな」「私たちはここにお線香を上げに来たんです。銀次郎さんには何の関係もありません。私たち女郎だって恩や義理もあるんです」

やかましいと小菊をどつく大関にやめんかいと一喝する銀次郎。「ここは仏の前やで。それに女殴って男の価値があがるんかい」「海津はん。あんた、このおなごに惚れてるようやな。ほなら言うといたる。こんな言うこときかん女郎は明日でも上海に売りとばしたる。それがイヤやったら二人で600円、身請けする金を出したらどないだ」「……」

おときの葬儀が終わり、新吉に博奕はやめろと言う銀次郎。「ワイがこんなこと言うのもなんやけど、錦楼を取り戻すのが何よりの供養だっせ」「わかってま」「義松。お前、新吉さんと一緒に後始末の手伝いしてくれ」

義松にもう一度博奕がやりたいと言う新吉。「何やて」「この香典代でやりたいんや」「気でも違うたんか」「いいや。考えてみてください。小菊と小花は明日にでも上海に売られる言うんや。おときも二人を可愛がってた。それにあんたと銀次郎はんが二人のことをどう思ってるか、わてにもわかってます」「……」

「二人が上海に売られてもええんでっか」「兄貴に知れたらただじゃすまされんで」「これが本当に最後の最後だ。博奕のしおさめだ」「わかった。ただワイらのためじゃのうて、錦楼を立て直すためちゅう料簡やったら、兄貴もわかってくれるやろう」「おおきに」

内緒で作ったイカサマ札があると言う義松。「屏風言うてな。目が変わるように仕組んであるんや」「この札やったら負けることない。義松はん、なんで早う教えてくれんかったんや。これがあったら家取られることないのに」「勘違いしたらあかんで。こんなもんは滅多に使うもんやない。あんさんが最後の最後言うから使う気になったんや」

黒田組の賭場でイカサマ札を使って大勝する義松であったが、イカサマが大関にばれてしまう。呼び出されて黒田組に行く銀次郎。「海津はん。おまはんも偉い出来の悪い舎弟を持ったもんやな」「へい。話を聞きました」堪忍してくれと銀次郎に詫びる新吉。「みんなわてが悪いんだす。義松さんにイカサマさせたのはわてだす」ワイが悪いんやと言う義松。「兄貴。ワイのことなんかかまわんでおくんなさい」

銀次郎に全国に回状を出して博奕打ちで飯を食えないようにすると凄む大関に兄貴は関係ないと怒鳴る義松。「ワイを殺すなり好きにしてくれ」黒田に弟分の不始末をさせてくれと頼む銀次郎。「どうにでも好きにしてください」銀次郎に指を詰めろと言う大関。「ただ詰めるだけじゃないで。縦に裂いてから落すんじゃ」大関の言うようにドスで小指を縦に裂いて、斬りおとす銀次郎。「これで落とし前はつきましたな。さあ、帰るで」

ワイのせいで兄貴を片輪にしてしまってと銀次郎に詫びる義松。「兄貴。こんな出来の悪いワイと縁を切っておくんなさい」「馬鹿野郎。兄弟分の契りはそんなええ加減なもんと違うわい。弟分のためにワイが指詰めるのは当たり前やないか。こんな小指くらいで兄弟分の縁が切れる道理があるわけないやないか」「兄貴。すいまへん」

ワイを思い切り殴ってくれと言う新吉に、あんたが立ち直れるかはあんた次第やと答える銀次郎。あんたはよか兄貴を持って幸せじゃなと義松に言う市岡は銀次郎に頼みがあると言う。「あんたの女が明日にでも上海に売り飛ばされるちゅう話じゃが、できればわしにその身請けの金を用立てさせてほしか」「せっかくの話やけど、この金だけはどうしてもワイが作らないけん。ワイにも博奕打ちの意地がおまんがな」

黒田組の賭場で命がけの博奕をする銀次郎は600円を稼ぐ。「義松。新吉さん。この金で小菊と小花を自由にするんや」錦楼に行き、600円を大関に渡す義松。「小菊さんと小花の証文をいただきましょうか」「あほんだら。もう二人は700円で上海に売るちゅう話が決まってるんや」「代貸はん。ほなら二人とは言わん。小菊さんだけでええ。それだったらこれで足りまっしゃろ」

小菊にワイはどないしてもあんたと兄貴に幸せになってもらいたいと言う義松。「義松さん。あたしはその気持ちだけでいいのよ。あんたこそ、小花ちゃんと」「小花。堪忍な。ワイはお前に本当に惚れてたんじゃ」何をガタガタ言うとるんじゃと怒鳴る大関。「どないしても小菊を自由にしたい言うなら1000円出したら考えてもええで」「なんやて」「上海を売る女郎を元に戻すならそれくらいかかるのは当たり前やないけ」怒り狂った義松は大関に襲いかかる。

黒田は銀次郎の相手をしてくれと丈吉に頼む。「盆は組の看板や。頼むで」義松は大関に嬲り殺しにされる。銀次郎と丈吉は一進一退の好勝負を展開するが、銀次郎が勝利を収める。そこに義松が殺されたと言って現れる新吉。急いで錦楼に向かう銀次郎。大関に電話する黒田。「海津はそっちに向かった。奴はうちの金を全部持っていきやがった。なんとしても取り戻すんや」「わかりました。一人やるのも二人やるのも同じでんがな」

人力車に乗せられて錦楼を出る小菊と小花。入れ替わりに錦楼に着いた銀次郎は、義松の死体を見て愕然とする。そこに襲ってくる黒田組の三下を地獄送りにし、最後に大関もあの世に送った銀次郎は電話をとる。「おい。海津ばらしたんか。ゼニ取り戻したんか。大関、返事せんかい」

電話を切る銀次郎は、新吉に金を渡す。「これで店を買い戻して、今度こそ性根を入れてやってや。小菊や小花のような可哀相な女をちっとでも幸せにしてやってくれ」「銀次郎はん。すいません」「それから義松の葬儀を頼むわ。誰も身寄りのない奴や」「まかしておくんなはれ」「市岡はん。新吉さんのことを頼みます」「お前さん、黒田のところに」「ええ」

お前のような義理知らずは初めてやと丈吉をけなす黒田。「おのれのような奴は全国の親分衆に回状まわして博奕で飯食えんようにしたる。出ていけ」そこに殴り込みをかける銀次郎。「黒田。てめえのような出来の悪いガキは生かしておけんのじゃ」銀次郎の前に立つ丈吉。「丈吉さん。どいてくれ」「どくわけにはいきません」「こんなクズみたいな親分のために命を売るつもりか」「義理受けた親分を殺さすわけにはいきまへん」飛びかかる丈吉をやむなく刺した銀次郎は、黒田の腹のドスを突き立てる。

丈吉を抱く市岡。「おとっつあん。ワイは」「言わんでもわかっちょる。丈吉があんたさんに何か言いたがっちょる」おまはんのドスで死ねて本望だと言う丈吉。「丈吉はん。すまんかった」「ワイはな、本当はあんたと兄弟分になりたかったんや」「桜井。今からでも遅いことはあらへん。兄弟、しっかりするんや」「兄弟」事切れる丈吉。涙する市岡。兄弟と呻く銀次郎。そのころ小菊と小花は夜汽車に乗っていたのであった。