作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(241)」 | ロロモ文庫

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究極の披露宴(中)

考え込む栗田。(おめでたいことを祝うのにふさわしい飲み物であるからには、豪華でなければいかないわ。もうすぐ桜が咲く。折角きれいに桜の花が咲いても、このままじゃ荒川さんと田畑さんの心は花は咲かずに。桜。結婚式。桜の花)「あ、これ、使えるんじゃないかしら。良三君、手伝って」「はい」

完成した飲み物を海原に見せる栗田。「うむ。表面に浮かんでいるのは肉桂の粉。そして中に漂っているのは桜の花。塩漬けにして保存してあった八重桜をもどして塩出しした物。そして、この桜色の液体。これはサクランボ酒を水で割って桜の花を入れたもの」

「問題はこのサクランボ酒だ。最高のサクランボを氷砂糖を加えて、焼酎につけ、サクランボのエキスが出尽くしたところで、サクランボを取り出し、最低10年は寝かせないと、このような深みのある味に練り上がらない。む。このサクランボ酒は」

「そうです。海原さんが10年前に作って寝かせてあってサクランボ酒です。サクランボのリキュールだと、もう一つスッキリしないと悩んでいたら、中川さんが海原さん秘蔵のサクランボ酒があると持ってきてくれたんです。美食倶楽部にあるものは、全て自由に使ってよいと言うことでしたので」「ぬう」

説明する栗田。「昔から結婚を祝う際には、八重桜の塩づけを使った桜湯を用いますし、ちょうと桜の開花時とも重なることだし、桜の花を使おうと決めたのです。肉桂の香りがうまい具合に桜の花とサクランボ酒の二つの香りを結び付けてくれました。色といい、香りといい、全体にウキウキと心の浮き立つ楽しい飲み物が出来上がったと思います」

「ふ。桜湯からの発想か。それにサクランボ酒を結びつけるとは、なんとも容易な」「……」「しかも、祝い事が起こるのは春と限ったわけではないから、桜の花が常にふさわしいとは限らない。さらにアルコールが入っているのは万人向きではない。アルコールを飲めない人はどうするのか」「う」

「しかし、日本人にとって、桜の花は特別な意味を持つ。例え季節外れでも、祝いの場に桜の花を飾りたいのが日本人の心情だ。アルコールがはいっているとはいえ、昔から御神酒と言って、めでたい席に酒はつきもの。アルコールに弱い人間も、これなら見るだけで、めでたい気持ちになる。この演出は使える。不満な点はあるが、祝いの飲み物として認めてやろう」

「では、木曽先生には」「私から披露宴に是非出席するよう説得しよう。木曽さんはイヤとは言うまい」「海原さん、ありがとうございます」「喜ぶのは見当違いだぞ」「え」「こんな不十分なモノを、祝いの飲み物として認めてやったのは、至高対究極の披露宴のメニュー対決を成立させるためだ。今、喜んだことを披露宴対決の際に、死ぬほど後悔することになるだろう。あのまま対決が流れていた方がよかったとな」「……」