博徒対テキ屋 | ロロモ文庫

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浅草のテキ屋の菊屋一家の棟梁である貴島政吉の長男である竜太郎は手の付けられない暴れん坊で、政吉から勘当を受けて博徒の国分一家の兄貴分となっていた。カフェー「太陽」の女給である夢子をめぐってテキ屋の滝岡一家の滝岡親分と喧嘩になり留置場送りとなる龍太郎。滝岡の兄貴と話がついていると子分たちに言う馬賊の小松。「俺たちが菊屋の庭場で火をつけたら、後は滝岡の兄貴が引き受ける寸法だ」懸命に商売するお咲にそんな啖呵じゃダメだと笑う政吉の次男の勝男。「俺が見本をみせてやる」啖呵を切る勝男にイチャモンをつける小松。馬賊なんかになめられてたまるかと小松に殴りかかる勝男。

テキ屋の親方衆を集める長老の山形。「実は銀座の杉屋デパートがこの辺の土地を買い占めている」「なに。浅草にデパートが乗り込んでくるのか」この際、組合をしっかり固める必要があると言う滝岡。「俺たちが面倒見ている露天商から会費を出させるんだ。ネタにはガゼモノを売らせるんだ。テキ屋が売るのは啖呵だ」露天商から金を取るのは反対だと言う政吉。「ガセを売るのもどうかと思うな。それでなくてもテキ屋のネタはどうかと言われてるんだ」「いい加減にその古いペテンを切り替えないと、時代の波に乗り遅れるぜ」

くだらない騒ぎを起こしやがってと言う政吉に、そんなに俺のすることが気に入らないのかと怒る勝男。「それじゃあ、あんちゃんと同じように勘当してくれればいいじゃないか」「馬鹿野郎。竜太郎といい、お前といい、まるでわきまえがねえ」留置場にいる竜太郎を貰い下げに行く菊屋一家の大幹部の水野。「またお前か」「滝岡とやったそうで」「あんな奴相手にしなけりゃいいが、どうもむかっ腹が立って」

俺は家を出ると竜太郎に言う勝男。「あんな話のわからない親父とはこっちから縁を切ってやる」「……」「あんちゃんだって五年前に家を出たじゃないか。あんな親父の面を二度と見たくないって」「馬鹿野郎。ガキのくせにのぼせるな。親父がお前を怒るのはお前が可愛いからだ。それくらいのことがわかんねえのか」「長男のあんちゃんが勝手に飛び出して、よくそんな偉そうな口がきけるな」「……」

叔父貴の篠山を殺したのは誰だと言う勝男。「それはあんちゃんじゃねえか。なんとか一家でもみ消したけど、それからのあんちゃんは何だい。一家のメンツをつぶして歩いてるんじゃねえか」「……」「あんちゃんは急にグレだした。それには何かモサがあるんだろ。それを今日ははっきり言ってもらいたいんだ」「泣くな。みっともねえじゃないか」「あんちゃん、聞かしてくれよ。あんた、心から親父を憎んでるんじゃねえんでしょう。なりたくて博徒になったり、ゴロ巻いてるんじゃないんだろう」

勝男に俺は政吉の子じゃないと言う竜太郎。「俺はおふくろの不義の子なんだ。テキ屋が不義密通をしたらどんなことになるかお前も知ってるだろう。おふくろは秘密を抱いたまま死んだ。ところが篠山の叔父貴が五年前、そのことを俺に話した。俺は目の前が真っ暗になって何がなんだかわからなくなった」「……」「気が付いた時は篠山の叔父貴は死んでいたよ。俺の父親は篠山だったんだ。俺は本当の親父を殺してしまった」「……」「このことはお前と俺しか知らない。勝男、何も言わずに親父のところに帰ってくれ。俺は帰りたくても帰れない男なんだ」

久しぶりに浅草にやってきた兄弟分の市原を迎える水野。「まあゆっくりしてくれ」「こいつ、お絹言うんや。わいの女房同然の女や。面倒みてやってくれや」もう渡り鳥から足を洗う決心をしたと言う市原。「北海道で落ち着いて暮らそう思うんや。この酉の市がわいの最後の舞台や」俺たちは勝手に商売させてもらうぜと言う小松に出て行けと言う政吉。「てめえら馬賊になめられるほど耄碌しちゃいねえ。菊屋の庭場に二度と入って来るな」

あんたのややがお腹で動いたわと言うお絹に後悔してないかと聞く市原。「そろそろ村上の奴もムショを出て大阪に戻ってくるころや」「やめて。うちの人のことは言わん約束よ。そんなこと言うてあんたの方が悔やんどるんやろ」「やめんかい」「ねえ、今すぐ北海道に連れてって」「それは無理や。世話になった水野の兄貴への仁義だけは果たしたいんや」

滝岡一家に草鞋を脱ぐ村上「うむ。旅歩きの多い俺たち稼業で女房を寝取る奴は生かしちゃおけねえ」「へえ」「ところでその男は菊屋一家の水野と兄弟分てのは間違いないのかい」「間違いありません」

デパートの進出は一経営者の利害の問題ではないと国分に言う杉屋デパートの経営者の大島。「この不況を乗り切るためにはぜひとも」「社長。私は一博徒です。難しい理屈はわかりません。ただ甲州の五代目の口添えがある限り、手伝いはさせていただきます。ただ一つだけ約束していただきたい。今日の浅草の繁栄は多くの小売商人の努力によるもの。それをお忘れにならないでほしいんです」「よくわかっております。その点は吉原の滝岡君ともよく話し合って彼からも支援してもらうことになってるんです」

父の具合が悪いから土地を売ると言うお咲に憤慨する勝男。「どうして浅草っ子のお咲ちゃんが出ていかなきゃならないんだ」「私だって勝男さんと別れるのはとても悲しいわ」「畜生。デパートさえやめさればいいんだ」大島に浅草から出て行けと言う勝男。「お前は浅草の人間を殺そうとする人殺しだ」

俺も勝男の意見に賛成だと言う竜太郎。「あっしは国分一家からの用心棒ですが、浅草に生まれたあっしたちにとっては弟の言うことが本当だと思いますが」「そのくらいのことはわしは知っとる。だから転業への補償金などはすでに払っておる。先日、滝岡君に十万円ほど渡しておる」

確かに十万円は預かっていると会合で言う滝岡。「ちょっと露天商に頼まれて貸しただけだ。すぐに耳をそろえて返す」「お前に潰された組合のメンツはどうなるんだ」「菊屋の。大きな口をきいているがそんなことが言えるのか。お前のところにいる市原って旅人は仲間の女房を盗った男だ。掟を破った男にショバやってバイさすなんて知らなかったじゃ事はすまされねえぜ。うまい具合に二人は預かってるが、女の亭主だった村上って男から俺は落とし前をつけてくれと言われてるんだ。このケリはどうつけるんだ」「これとさっきの話は問題が別だ」「お前さんがメンツのことをどうこう言うなら、お前さんの方からまず態度をはっきりさせたらどうだい」「わかった。落とし前をつけてやる」

この落とし前は自分につけさせてくれと政吉に頼む水野。「市原とあっしは兄弟分です。あいつもよくよくのことで憲法を破ったに違いないんです。どうか私に二人を引き取らせてください」「お前がそんなに言うなら仕方がねえ」市原を引き取りに行った水野にお絹は首を吊って死んだと言う滝岡。「それなのに生き恥をさらしているお前の兄弟分の図々しさに俺たちは呆れてるんだ」「何を言われても市原は私の兄弟分です。引き取らせてください」「虫のいいことを言うなよ。俺は女の亭主から落とし前を頼まれてるんだ」

落とし前をつけるために小指を斬ると言う水野に、そんな指一本で我慢できるかと村上に聞く滝岡。「我慢できねえ」「そうだろうな。じゃあ我慢できるようにしな」市原を刺し殺す村上。何をすると怒る水野はめった突きにあって死ぬ。誰かに自首させろと言う滝岡。「こいつの体に喧嘩状をくっつけて菊屋一家に送り返してやれ」

菊屋一家と滝岡一家が出入りになったそうだなと言う国分に盃を返したいと言う竜太郎。「馬鹿野郎。テキ屋同士のいざこざはテキ屋同士でつければいい。俺とお前の盃はそんな簡単なものじゃねえんだ」「……」「俺はお前に国分の跡目を継いでもらうつもりなんだ。滅多なことをして国分の金看板に傷をつけてくれるな」

出入りは山形の音頭で手打ちとなる。これでお前の出番はなくなったと喜ぶ国分。「どうだ。俺の跡を継いでくれるな」「親分。その話が涙が出るほど嬉しいが返事は明日まで待ってください」

俺と旅にでないかと夢子に言う竜太郎。「二人で浅草を出ていくんだ。俺は女をどっちかと言うと憎んでいたが、一からやり直したいんだ」「……」「三十何年、この浅草にしがみついていたことがだいたい間違いだったんだ」「本気で言ってるのね」「本気だとも。俺には国分一家の跡目は継げねえ。親分って柄じゃねえよ」「あたし、どこまでもついていくわ」「明日の大阪行きの夜行切符を二枚買っとけ。ここを出る前に一つだけやっておくことがある」

政吉は大島の呼び出しを受けて料亭に向かう。私の我儘を聞いてありがとうございますと大島に感謝する竜太郎。「いやあ、君の浅草を思う気持ち、親父さんに尽くす気持ちに打たれたよ」「親父が露天商のために身を投げ出しているのを見ると、どうしても会ってもらいたいと思って」「最初から君の親父さんに会えばよかったんだ。今夜はじっくり意見を聞かせてもらうよ」「親父も来ると思いますんで、それじゃあ」

しかし料亭に着いた政吉は小松に腹を刺される。倒れる政吉を抱き起す竜太郎。「親父。しっかりするんだ」「竜太郎か。大島社長を呼んでくれ」現れた大島に二年間デパートの建設を待ってくれと言う政吉。「……」「お願いだ、二年間だけ」「よろしい。待とう」「よかった」俺はこれで本望だと呟く政吉。「親父」「竜太郎。勝男を頼むよ」竜太郎の腕の中で死ぬ政吉。

政吉の亡骸に語り掛ける竜太郎。「親父さん。五年ぶりにこんな形でこの家の敷居をまたぐとは思っても見ませんでした」そこに現れるお咲。「竜太郎さん。勝男さんが滝岡に殴り込むんだとたった一人で」「なに」急いで滝岡一家に向かう竜太郎。夜行切符を見つめる夢子。

滝岡一家で暴れる勝男を押える竜太郎。「勝男、てめえのようなガキの出る幕じゃねえ」「あんちゃんが菊屋を継いでくれればいいんだ」「馬鹿野郎。こんなことはグレるだけグレた俺にまかせておけばいいんだ。勝男、死ぬ間際まで親父はお前のことを心配していた。お前は親父の跡を立派に継いでくれ」

小松を地獄に送った竜太郎は屋根の上で滝岡と対決し、お互いにドスを突き刺し、屋根から落ちて死ぬ。泣き悲しむ夢子とお咲。竜太郎の亡骸に語り掛ける勝男。「あんちゃん。もう苦しまなくていいんだよ。三途の川を渡る時は親父の手を引いて」涙する勝男なのであった。