博徒 | ロロモ文庫

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縄張荒らしをして賭場を開くバラケツの卯之吉に何をしとるんやと注意する高田一家の代貸の立花猪三郎。「いや、わしらはあんさんらと違うて、稼ぎになるんなら博奕でも露店でもなんでもしますがな。博徒はあんさんら博徒しかできんと言うのはえらいおかしな話でんがな」「ええか、ヤクザの世界には縄張ちゅうもんがあんねん。博徒は博奕、テキ屋は露店と縄張が決まっとるさかいに、もめ事が起らずにすんどるんじゃ。それをお前らバラケツみたいに何でも手出してると血見んと治まらんで。わかったか」

阿倍野一家の襲名披露の知らせが来たと言う高田一家の親分の太田房五郎。「あの藤松が継ぎよった」藤松は東京から流れてきた御家人崩れに成り上がり者だと言う高田一家の貸元の五郎七。「奴はワイの一番嫌いの西洋かぶれちゅう奴じゃ。ワイはあんな奴の披露なんか行かんで」「でも、親分。一家から誰も顔を出さんちゅうわけにはいきまへんやろ」「猪三郎。男を売るええ機会や。お前が名代として行ってこい」猪三郎では貫禄不十分という五郎七に問題ないと言う房五郎。

襲名披露に行った猪三郎は若僧の癖にと冷たい目で見られる。心配する八軒山一家の若頭の安之助に文明開化の世の中でも極道の道は変わらんと言う猪三郎。「立派に名代を務めて見せるわ」ワイは駆出しですと言う猪三郎に、駆出しのペーペーはこっちですと答える藤松。そして猪三郎は立派に高田一家の名代の大役をこなす。

卯之吉は松島の売れっ子芸者で幼馴染である小里と熱い仲になっていた。やきもちを焼くボンクラたちに卯之吉はボコボコにされるが、猪三郎に救われる。貫禄でボンクラたちを追い払う猪三郎に、お前のおかげで俺の出番がなくなったと言う巡査の浜村。猪三郎の男気に打たれた卯之吉は子分にしてくれと言う。「してやってもええけど、極道の道はバラケツとは違うで」「どないなことでもしま」卯之吉をお前の子分にしろと猪三郎に言う浜村。卯之吉が自分と同じ孤児と知って。子分にする猪三郎。

猪三郎は弟分の銀二を卯之吉の教育係にする。「ええか。いったん盃もろうたら白いものも黒いものと言われたらはいそうですと言わなあかんのや。わかったか」「へえ」阪和鉄道の役員の大沢と会う藤松。「私に阪和鉄道建設のための強制立ち退きを手伝えとおっしゃるんですか」「会社もほんまに音を上げてるんで」

金を渡そうとうする大沢に、私は金では動かないと言う藤松。「私は薩長の成り上がり者が風を切っている東京が嫌で、大阪に来たんです。私は近い将来、市会議員に打ってでようと思ってます。おたくの社長の松丸さんが大阪きっての有力者だ。私の後援者になっていただきたい。これをお引き受けになるなら協力いたしましょう」

松島に行き小里と会う卯之吉であったが、小里に惚れる五郎七は卯之吉に出て行けと言う。反抗する卯之吉を殴る銀二。「五郎七親分はワイらにとっても親分筋じゃ。ワレのしとることは兄貴にも弓を引くことになるんぞ」店を飛び出した卯之吉は、これが白いものを黒いものにせにゃならんと言うことですかと銀二に聞く。「小里はワイの女や。それを叔父貴が好き言うたら、ワイら三下は引き下がらなあかんのですか」「時と場合によっては道理も通らんこともあるがな」

立ち退きに反対する住民を暴力で追い払う阿倍野一家。ヤクザが弱い者いじめしていいのかと言う猪三郎に、鉄道工事は社会のためなのだと言う藤松。「時代が新しくなるために必要だ」「時代がどうだろうとヤクザに何の関係があるねん」「その考えは古いよ。今は文明開化の世の中だ」「じゃあ手を引かん言うのかい」「その通りだ」住民の一人が瓦礫に埋もれて死んでしまう。怒り狂った銀二は阿倍野一家に殴り込みをかけて命を落とす。

身内がやられて怒った房五郎は藤松に果たし状を叩きつける。八軒山一家の貸元の次郎吉は親分の松兼が先代の未亡人と茶屋に行ったと聞いて苦り切る。「高田と阿倍野のどっちかに助っ人せなならんちゅう時に」ワイは高田につくと言う安之助に、お前は猪三郎と兄弟分だからなと言う次郎吉。「うちは阿倍野にお世話になっとるんや」酔って帰ってきた松兼はほっとけと言う。「どっちかが潰れる。ただで縄張が転がってくるんや」しかし喧嘩は観音の隠居の仲裁で手打ちとなり、流血の事態は免れる。

安之助は男のクズである松兼をあの世に送り、そのことを猪三郎に告げる。「それで、ワイ、警察に自首したろう思うたけど、八軒山一の縄張のことが心配でな」「ワイにまかしとけ」浜村に安之助は発狂して人殺しをしたと言う猪三郎。「ほうか。気違いの仕業やったら、法律でも情状酌量の慈悲はある」「おやっさん。よろしく頼みます」

五郎七は小里を譲れと卯之吉に迫る。卯之吉は五郎七を刺そうとするが失敗する。房五郎は猪三郎にゆくゆくは高田一家の跡目を継がせたいと言うが、五郎七はお前の子分の卯之吉に狙われたと猪三郎に難癖をつける。卯之吉に辛抱しろと言う猪三郎。「ワイも五郎七兄貴のやり方には腹を据えかねとる。でもここは耐えるんや」しかし五郎七は博奕好きの乗念坊主をイカサマにかけて身ぐるみ剥がしてあの世に送ったことがバレて、高田一家を破門になる。

警察は賭博取締条例を出して博徒を検挙する。うちの賭場だけに手を入れないと他の親分が黙ってませんよと署長の和田に言う藤松。「あんたは別格じゃ。ほかの博奕打ちとは違いもうす」博奕とは縁が切ったらどうだと藤松に言う松丸。「市会議員の選挙も近いことやし」「まあ、私が阿倍野の二代目を名乗ってる間は一家の面倒を見ないといけませんから」

藤松に助けを求める次郎吉。「安之助が監獄に行き、わて一人が一家の面倒見てきましたけど、博奕場があげられ、わて一人の力ではどうにも」「俺にどうしろと」「せめて博奕場を開かせてもらおうと」「そんな話なら警察に行きな」「いえ。親分が警察に顔がきくことはよう知ってますんで」

出所した安之助を迎える次郎吉。「けっこう早く済んだな」「ああ。気違いのふりをするのも結構しんどかったで」藤松に頭を下げたことを安之助に話す次郎吉。そんな話は納得できんと猪三郎に言う安之助。「縄張はワイらの命や。それを渡してしもうたら、八軒山も終わりや」「次郎吉に藤松がついとるなら、お前にはワイがついとる。とにかく藤松に会うて話したるわ」

あんたは火事場泥棒だと藤松を罵る猪三郎。「八軒山の縄張を乗っ取ろうと言うド汚い根性が丸見えですわ」「立花君。私は一度頼まれた以上、手を引くわけにはいかない。世の中はどんどん変わってる。古い博徒ではやっていけない時代だよ」「くそ生意気なこと言うな。己の顔を見てるとこっちの腹はむしゃくしゃするんじゃ。ワイは安之助に新しい賭場を開かせたる。文句は言わさへんで」

安之助は賭場を開く。藤松に破門されてこの世界で飯が食えなくなったと言う五郎七。「そのあんたが私に何の用で」「行き崖の駄賃ちゅうやつで。猪三郎の奴、こちらさんに相当迷惑かけてるみたいで。ワイと取引しまへんか。ワイの方は房五郎の首や」「で、条件は?」「上海逃げる船賃と、どうでも連れていきたいおなごがいますねん。五百円でどうだっしゃろ」「金は出してやる。だが女は先にここに連れてくるんだ」「人質でっか」「そうだ」

五百円で小里を身請けして強引に連れ出す五郎七。そのことを知った卯之吉は小里を連れ戻しに行くが、藤松に射殺される。五郎七は房五郎を刺し殺して逃走しようとするが捕まってしまう。猪三郎に締め上げられて藤松に頼まれたことを白状する五郎七。猪三郎は藤松に果たし状を送るが藤松は無視する。「俺はバカな喧嘩はせん。これ以上騒ぐと市会議員の選挙に響く。すぐ警察に知らせろ」

藤松に無視されて怒り狂った猪三郎は五郎七をぶった斬って、馬車に乗って安之助とともに阿倍野一家に殴り込みに行く。止めなくていいんですかと言う浜村にこれでよかと言う和田。「両方がぶつかったところを一挙に殺人罪で逮捕するたい。そげんすれば藤松は選挙に出れんじゃろ。だいたい博徒が選挙に出ようちゅう考えがおかしか」「博徒も人間ですからなあ。こんなやり方がええかどうか」安之助は藤松の銃弾を浴びて死ぬ。猪三郎は藤松をぶった斬るが逮捕されるのであった。