作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(151)」 | ロロモ文庫

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贅沢な献立

フランス料理店で夏子と夏子の恋人の北尾を食事をする山岡と栗田。そこに女を連れて現れる足田。「僕の高校の同級生です。赤坂で料理屋をやってる」「料理屋をやってるのは親父だ。俺は料理屋なんかやらん」「お前、店を継がないのか」「料理屋は客として食いに行く所だ。自分でやるなんてくだらん」「信子さんはどうしてる」「信子ならあとでここに来る。北尾、折角、ここで会ったんだ。後でワインを届けてやる」

ロマネ・コンティの1978年物が届けられ驚く山岡。「日本のレストランで飲むと1瓶20万するだろうなあ」そこに現れ足田に大金を渡す信子。「あの」「なんだ」「大旦那様が、もうこれ以上お金を出せないと」信子を殴る足田。「やかましい。親父と結託しやがって」「足田。なんてことを」「不愉快だ。帰るぞ」

事情を説明する北尾。「信子さんは築地の鮮魚仲卸し「宮一」の娘さんで、宮一が魚を納めているのが縁で、信子さんは行儀見習いに足田の店に入ったが、その信子さんに足田が惚れて、婚約ってことになったんだ」「そんな信子さんがいながら、どうして足田さんは」「若旦那は去年、ある女の人と恋に落ちたんです」「え、信子さんを裏切ったのか」

私は身を引く決心をしたと言う信子。「すると突然、今年になって、その女の人が他の男の人と結婚してしまったのです。それから足田家は新富町に持っていた地所を地上げ屋に売って、何億と言うお金が入ってきました。若旦那が正気とは思えない金の使い方を始めたのはそれからです。私は若旦那を助けたいんです。今の若旦那は病気なんです。あれは本当の若旦那ではありません」

高級料亭「河東」に足田を呼ぶ山岡たち。今日は贅沢料理を用意したと言う信子。「若旦那のお口に合えば幸せでございます」「前口上はいいから始めろよ」「では」

ほうと呟く足田。「見事な本マグロじゃないか」「今朝、築地市場のセリで宮一が落としたんだ」「何。信子の実家が?」「キロ2万5000円だ。こいつ240キロあるから600万だ」「むう。凄い値段だ」

大トロ部分を切り出し、串焼きにする山岡。「最高の大トロを串焼きにして塩だけで、ううむ、表面は焦げ目がついて、よい香りが立つ。しかし、中は生。生と言っても温かくなっている。大トロの脂肪は柔らかくなって、舌ざわりは滑らかだし、脂肪の甘味が膨らんで。ああ、これは何と贅沢な。ん、あのマグロ、残りはどうするんだ」「捨てます」「え」「最上の部位を召し上がった後に、それより落ちる部位を召し上がったのでは何もなりません。だから捨てます」「うぬぬぬ」

参ったと叫ぶ足田。「俺の負けだ。信子、頼むから、あのマグロを捨てないでくれ」「若旦那」「確かにこれ以上の贅沢はない。そして贅沢は実に愉快だ。しかし俺は料理人だ。あのマグロを捨てることはできない」「足田さん。あなたはやっぱり根っからの料理人だね」

俺は自分を見失っていたと述懐する足田。「俺は一人の女に心を奪われた。ところが突然、その女は他の男と結婚した。その男は地上げ屋の社長の息子だ。女は俺に言った。料理人の妻ができる贅沢なんてたかが知れている。私はもっと贅沢な暮らしがしたいんだと。俺はその女を喜ばせるために料理の修行をした。ところがそんなものは猫の額の土地の価値もなかったんだ。そう思うと、俺は料理人としての自分が情けなくなり、親父が土地を売った金で、死ぬほど贅沢してやろうと思ったんだ」

足田に信子はマグロを買うのに全財産をはたいたと言う山岡。「足田さんにこの料理を食べさせたい一心でね」「信子。お前、どうしてそんな大金を」「父が結婚資金に貯めておいたお金を使ったのよ。どうせ若旦那を結婚できないなら、持ってても仕方ないから」「信子、俺は料理人としてもう一度やり直す。お前の心を掴む料理を作ってみせる」「若旦那」