作:雁屋哲 画:花咲アキラ「美味しんぼ(121)」 | ロロモ文庫

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ぼけとつっこみ

若手人気漫才師の山坂すべっ太・ころん太を山岡と栗田に紹介するブラック。僕みたいな才能のあるものは漫才やったら損だと言い放つすべっ太。「笑いをとるのはボクなんやし、お客さんも僕目当てで来るんやし、僕の相棒かて、頷いたり、相槌打ったりするだけでしょう。この男でのうても誰でも務まります」「……」

酒が入りどんどん発言がエスカレートしていくすべっ太。「こんなアホと飯を食うたら気が滅入るわ。帰らしてもらう。ころん太。前から考えてたが、コンビは解消や。ほな、サイナラ」「なんて人だ。あんな身勝手な人見たことない」「すっかり天狗になってるな」「ええんです。すべっ太さんは、ホンマ才能のある人やから、僕と離れて大きく成長するに決まってます」「それじゃ、ころん太さんがあんまり」「ええんです。これでええんです」

人気と言うものは恐ろしいですと山岡と栗田に言うブラック。「一人になったすべっ太さんはアクが強すぎるのは嫌われて、まったくお呼びがからなくなりました」「ころん太さんはどうしてるの」「やはりパッとしません。一人では人の好い面がかえって泥臭くて野暮ったく見えて」「難しいのね」

「よし。皆で一緒に食事をして励ましてやろう」「賛成」「それはありがたい。ころん太さんも喜ぶでしょう」「じゃ早速すべっ太さんに連絡してよ。俺たちがご馳走したいって」「えっ、励ますのはころん太さんじゃないんですか。どうしてですか。悪いのはすべっ太さんでしょう」「ブラックさん、山岡さんの言う通りにして。何か企んでるみたいだから」

すっかり神妙になったすべっ太にどじょうをご馳走する山岡。「どじょうの塩焼きです」「頭を取って開いてあるのね」「これは香ばしいです」「はあ、さっぱりした味でんな」「どじょう鍋でございます」「あ、これはなかなか」「酒が進みますな」「柳川です」「今日の料理の中でこれが一番ね」「ごぼうですわ。ごぼうが入ってるから、こないに旨いんですわ」

今日の料理を振り返ってほしいと言う山岡。「まず、どじょうの塩焼き。パリッと香ばしいが、それだけだ。たいして美味しいもんじゃない。しかもアクがある。そして、どじょう鍋。あっさりして、それなりに楽しめるが、格別の旨味はなく、むしろ、どじょう自体が野暮ったく、泥臭い風味であることを再確認してしまうことになった。要するに、どじょうはそれ自体では味覚の世界で一本立ちできるスターではないと言うことだ」「……」

「一方、ごぼうはどうか。ごぼうも泥臭く、野暮ったく、アクの強い野菜だ。しかし柳川鍋ほど、ごぼうがその力を発揮できる料理はほかにない。どじょうはごぼうに出会えなかったら、自分の味を引き出せなかったろうし、ごぼうもどじょうに出会って、初めて本来の力量を発揮できたんだ」

深く反省するすべっ太。「山坂すべっ太ころん太は柳川鍋やったんや。一人だけではスターになりきれん。僕ところん太君が二人一緒になって、初めてスターになれたんや。それを僕は考え違いしてた。おおきに。ありがとうございました。やっと目がさめました。ころん太君に心から謝って、もう一度コンビを組んでくれるよう頼んでみます」「すべっ太さん。よく言ってくれたです」