恋は五・七・五 | ロロモ文庫

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この学校が統廃合されてなくなるのは悲しいと国語教師の高田に言う松尾高校の校長。「せめて野球部が甲子園にでも行ってくれたらと思ったけど、それもかなわぬ夢だったし。統廃合までの2年間、こうなったらありとあらゆる大会に出場してみようと思うの」「はあ」「それで、あなた、これの顧問をやりなさい」「はあ。俳句甲子園ですか」「天川先生には漫画甲子園の顧問を頼もうと思うの」

チアリーダー部のキャプテンから運動部員から苦情が来ていると言われるマコ。「あなたを見ていると目障りでうまくプレーができないって。だから、言いづらいんだけど、あなたい辞めてもらうことになった」

ショックを受けて駆け出すマコは男性生徒に足を引っかけられて転び、胸を揉まれてしまう。「お前、無駄に巨乳なんだよ」男子生徒の腕を掴んで投げ飛ばす治子。それを見て「カッコいい」と呟く弘美。

校舎の屋上から飛び降りようとするマコに言い残すことはないのと聞く土山。「あれば伝えといてあげるけど」「次の世は、ましな私で、生まれたい」「ふーん」「何よ」「いやあ、辞世の句としてはセンスいいと思って」「辞世の句?」「人生の最後に読む俳句だよ。僕も死ぬ時そうしようっと」「……」

あなたの答案チェックするのは大変なのと治子に言う英語教師。「和訳しなさいと言うのは全部ひらがなだから。いくら帰国子女だからって、最低限の漢字書けないと、将来困るわよ。はい、漢字ドリル。これを夏休み中にやっておくように」「でも漢字書けない代わりに、英語喋れるから、それでチャラってことで」「しょうがないのよ。他の先生からも苦情が来てるし」「そういう日本的な考え方。決まりだとかしょうがないとか。ホントくだらない」

「あなたが色々な意味でカルチャーギャップを感じているのはわかるのよ」「カルチャーギャップどころじゃないです。男子はみんなバカで幼稚だし」「でもね、日本の悪い所ばかり見ててもダメだと思うの。あなたのいけない所は日本のいいところを知ろうとしないとこ」「日本のいいところ?」「ねえ、俳句甲子園、やってみない」「え」「ドリルとどっちがいい?」「……」

こうして俳句甲子園のメンバーとして治子、治子が好きな土山、土山が好きなマコ、そして野球部員で俳句マニアの山岸の4人が俳句部に入部する。8月13日から松山市で三日間、俳句甲子園が開かれると言う高田。「試合の進め方は5人1組になって、順番に句を詠み、その句に関して質疑応答していきます」

4人しかいないからダメじゃないと言う治子にどうしても出場したいと言う山岸。「僕は「おーいお茶」の投稿俳句に何回も応募してるのに、まだ一度も入選していないんだ。いったい伊藤園は何をしてるんだ」俳句なんでダサイと言う治子に、俳句はダサくないと言う山岸。「今や俳句はポップなんだ」「あんたのシンプルな顔でポップなんて言われても説得力はないの」そこに現れる弘美。「治子先輩。今日から私は先輩についていきます」これで5人そろいましたと言う高田。

俳句は575だけじゃダメだと弘美に教える山岸。「まず季語ってのを入れなきゃいけない」「なにそれ」「季節を表わす言葉。桜は春の季語。ハンカチは夏の季語。月は秋の季語とかね」「なんかチョー面倒くさい」「あと、切れ字ってのがあって」「なにそれ」「土山君わかりますか」「誰が切れ痔なの」「先生、説明してください」

説明する高田。「切れ字と言うのは、や、かな、けり、と言うのが代表的な切れ字なんですけど、有名なのが、古池や、蛙飛び込む。水の音、の古池やのやが切れ字なんですが、これが古池に、だったら微妙に情緒が伝わってこない。つまり意味や調子を一端そこで切って、あとで情緒を響かせる」「そうね。古池やの方が古池により俳句っぽくて、心に響く感じがする」とりあえず俳句を作ろうと言う高田。「お題は?」「じゃあ、レモンで」

治子の写真を見ながら自慰にふける土山。「届かない、あなたを思う、レモンの香」レモンを投げながら呟く治子。「空高く、レモンを投げる、昼休み」叫ぶ弘美。「便秘には、レモンジュースが、効くらしい」土山を見つめながら言うマコ。「初夏の風、レモンの香り、恋の予感」シンプルな顔と言われた気分を謳う山岸。「傷ついた、心にレモン、丸かじり」

今日は吟行をすると言う高田。「吟行とは外に出て、いろいろなものを見ながら俳句を作ると言うことです」こうやって歩くといつもと違う景色が見れると喜ぶ弘美。叫ぶマコ。「ひまわりが、海に反射し、色変える」心の中で叫ぶ治子。(夏風や、ただ前向きて、波走る)

去年の優勝校である古池高校を見学に行った治子たちは、大声で俳句の合唱をする古池高校俳句部に圧倒される。そして夕立をお題に練習句会が始まるが、山岸は緊張のあまり何も言えなくなってしまう。

僕はもうダメですと言う山岸に本番で頑張ればと慰める治子。「いえ、どうせダメです」「そんな」「僕は野球部で3年間補欠でどんなに頑張ってもダメで、人前に出ることはなかったんです。だから俳句甲子園のことを知った時、これならベンチにいなくてもいいと思ったんです。ちゃんとホームランを打てるかもと。でもダメです」

確かに古池高校の俳句は上手でしたと言う高田。「でも、僕はあんな練習をしてほしくない。君たちは俳句を楽しんでください。そうでなければ意味がないんだ。うまく詠もうなんてしなくてもいいんです。楽しんで詠んでください。楽しんで詠んだ俳句はしっかり伝わるはずです、山岸君、いつかホームランを打てますよ」

いよいよ俳句甲子園が始まり、予選で明神高校と対戦する松尾高校。「お題はアジサイです、まず明神高校」「アジサイの、葉陰、宇宙分の一」「次は松尾高校」句を詠む治子。「アジサイや、昨日と違う、自分かな」「では、松尾高校、質疑を」「アジサイの葉っぱと宇宙の対比がよろしいんじゃないでしょうか」「では、明神高校」「そちらの句は、やとかなと二つ切れ字が入っています」「これは句として根本的に欠陥があると思います」「判定」「明神高校」

「では、松尾高校」「……」「松尾高校、どうぞ」句を詠むマコ。「アジサイや、好きなあなたと、雨の道」「では、明神高校」「アジサイの、集合の美を、学ぶべし」「判定」「明神高校」

「では、明神高校」「アジサイや、庭を閉ざして、鯨幕」「では、松尾高校」句を詠もうとする山岸。「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ」「判定」「明神高校」「3勝0敗で明神高校の勝ち」

予選落ちしたと落ち込む治子たちに、敗者復活があると言う高田。「これから松山城に吟行に行って、みんなで俳句を一句、それに合わせた写真を一枚。最後のひと踏ん張り頑張りましょう」

一同は松山城に行くが、高田にやっぱり帰ろうと言う山岸。「僕、もうダメです」疲れちゃったと呟く弘美。腹減ったと呟く土山。何言ってると怒る高田。「勝っても負けても最後の一句を作らないと、今までやってきたことが無駄になるんですよ」

私は帰ると言うマコ。「ちょっと待ってよ」「帰ると言ったら帰るの」「マコ」「治子はいいわよ」「え」「治子はキレイだし、私みたいにデブじゃないし、俳句だってメキメキうまくなったし、私なんてどうせ」マコを追いかけようとする高田を止めて、土山に追いかけてと頼む治子。「なんで僕が」「今まで気づかなかったの」「何が」

「マコはあんたのことが好きで、この俳句部に入って来たんだよ」「え」「いいから早く追いかけて」「君だって今まで気づかなかったのかよ」「え」「僕は君がいたから俳句部に入ったんだ」ちょっと待ってと言う弘美。「私は治子先輩が好きで俳句部に入ったのよ」僕もずっと弘美のことが可愛いと思っていたと言う山岸。うるさいと怒鳴る治子。「みんな何言ってるの。早くマコのことを」

城壁に登って、死んだ方がましなのと怒鳴るマコ。言い残すことはないのと聞く土山。「「あれば伝えといてあげるけど」「次の世は、ましな私で、生まれたい。辞世の句、土山君が結構センスいいって言ってくれたから。でも昨日、土山君のノートに治子の写真が挟んであるのを見つけたの、それで私」

私は結構楽しかったと叫ぶ治子。「あんなど田舎に来て、退屈で、廃校でもなんでもなれと思って。でも自分でも信じられないけど、結構楽しかったんだよね。同じ最後の句なら、辞世の句より、私はマコやみんなと最後の一句を作りたい」「治子」

敗者復活戦で最後の一句を発表する治子と山岸。「ひ、ひ、ひ、ひまわりや、僕らにひとつ、ある言葉」「私、本当は俳句なんてカッコ悪いと思ってました。でも今は17文字でしか伝わらないこともあるのかな。日本語って結構ステキだなって思っています。写真の私たちの笑顔、ひまわりみたいに見えませんか。みんなで作った最後の一句、とっても楽しかったです」

「それでは敗者復活戦で勝ち残ったチームは?」「皆さん、吟行を楽しんでくれたようで、いっぱいいい句がありました。私たちも選ぶのに苦労しましたが、とっても楽しそうな写真と俳句のコンビネーションが素晴らしかった松尾高校」やったと喜ぶ高田。「みんな、これが最後の一句じゃなくなったぞ」

準決勝で松尾高校は古池高校と対戦するがいきなり連敗してしまう。「では、古池高校」「青薄、風と嵐を、押し戻す」「では、松尾高校」句を詠むマコ。「片恋の、涙に風の、薫りけり」「松尾高校、質疑を」風と嵐って漢字が似てると言う治子。「だから、似た言葉の繰り返しになってる気がする」「か、風と嵐を重ねることで強い風が吹いている感じを出したのです」

「古池高校、質疑を」「片恋の涙、情景としては非常にありきたりです」この句は片思いの句ですと言うマコ。「涙がいっぱい出て、それでも私は生きていかなきゃいけないと思って」「そういった個人的解説をしなければ意味をなさないのでは、俳句である意味がない」「ふん。あんたたちにはわからないわよ」

ただ失恋の句と読めばそれだけで終わってしまうと言う土山。「風の薫りけり。失恋の涙の後に、さわやかな風が吹いている。そして青空が広がる」涙するマコ。皆さんもそんな経験はありませんかと聞く山岸。あると叫び、あんたたちはないと笑う弘美。「それでは判定」「4対3で松尾高校の勝ち」

「では、松尾高校」句を詠む土山。「ひらがなの、ノオトよ風の、夏帽子」「では、古池高校」「青竹をゆすりて、黒南風の過ぎぬ」「古池高校、質疑を」「ひらがなのノオトにする意味がわかりません」ノートだと実用的だと答える山岸。「ノオトだと風が吹いてきて、パラパラとめくれる感じ。その横には白い帽子。作者はきっとその白い帽子の持ち主に淡い恋心を抱いているんだろうなあ。ああ、胸がキュンとしませんか」「ひらがなのノオトは一般的に小学生を連想する。恋心など少しも連想しない」

むっとするマコ。「だから、あんたたちにはわからないわよ」黒南風って何と聞く弘美。「梅雨時のどんより曇った日に吹く風のこと。雨雲の覆いかぶさる重苦しさこそ、この句のテーマです」重苦しさなんで詠むのと呟く治子。「楽しいの」「え」「年より臭いんだ」「え」「自分で見た風景じゃないみたい」「え」「生き生きとした魅力がない」「え」高田先生が教えてくれたと叫ぶ治子。「俳句は楽しんで詠まないと意味がないと」「それでは判定」「4対3で松尾高校の勝ち」

「さあ、最後の勝負、古池高校」「風雪に、耐えたる春の、城址かな」「では、松尾高校」句を詠む治子。「南風、わたしはわたしらしく、跳ぶ」「それでは判定」「7対0で松尾高校の勝ち」

校長に俳句甲子園で優勝したことを報告する高田。男性生徒に足を引っかけられて転び、胸を揉まれてしまうマコは、男子生徒を思い切り殴る。伊藤園の緑茶パックに印刷された自分の「松山や、行く夏惜しむ、甲子園」と言う句を見て感激する山岸。治子をフランケンシュタインのマスクで脅かす弘美。

学校を出る土山に一緒に帰ろうと言う治子。「えっ」「ウソよ」自転車を漕ぐ治子。「駆け抜ける、青春恋は、575」