赤毛 | ロロモ文庫

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慶応四年、相楽総三を隊長とする赤報隊は江戸に進撃する官軍の先駆けとなり、年貢半減を沿道各地の民衆を約束していた。次の目的地の沢渡は俺の生まれたところだと相楽に言う権三。「隊長。ここは俺にやらしてくれよ。どうしてもやりてえんだ」「よし。やってみるか」「隊長。恩に着るぜ。隊長、頼みがある。せっかく故郷に錦を飾るんだ。隊長のその赤毛を貸してもらいたいんだ」「これは赤報隊隊長の印だ」「四日でいい。いや、三日でいいんだ」

沢渡に着いた権三に官軍が来るんですかと聞くお葉。「あんたは誰だ」「私は馬宿の娘のお葉」「確か、10年前は馬宿の主人は武助だったが」「父の甚兵衛が武助さんから買ったんです」駒ケ根の虎三が好き勝手なことをしていると権三に話すお葉。「代官の神尾金太夫の手先になって、年貢が払えないと娘の体で払えと」「あの畜生。まだそんなアコギなことを。二足の草鞋を傘に着て、まるでマムシみたいなやつだ」

百姓の女房たちは金貸しの木曽屋嘉兵衛に金を貸してくれと頼む。「もう、うちらは瀬戸際なんです」みなさんは瀬戸際が多すぎますと言う番頭の左右吉。「私は去年の暮からこの店のお世話になっていますが、みなさんが瀬戸際と言うのをもう二回も聞いています」

権三を見て、お前は生きていたのかと驚く虎三。水飲み百姓だった権三は年貢の方に女房のトミを虎三に奪われ、簀巻きにされて川に放り込まれていた。「俺はもう昔のような百姓の子せがれじゃねえ。今は赤報隊の隊長だ」「しゃらくせえ。お前、この十手に刃向かおうってのか」

「そんなものはガキのおもちゃにくれてしまえ」「なんだと」「世の中はガラリポンとひっくり返ってるんだ。錦の御旗がついそこまで来てるんだ。お前みたいな二足の草鞋ももうパーよ。この赤毛が世直しの印だ」「……」「年貢は半減。女を証文で縛ろうなんて奴はこの俺が許さねえ」

権三は百姓娘と駆け落ちしようとしているスリの三次を助ける。俺は江戸っ子だと権三に言う三次。「だから官軍は大嫌いだ。その官軍野郎に助けられたとなったら目覚めが悪くていけねえ」「だからどうしようと言うんだ」「この借りは返させてもらうぜ」女郎屋の駒込屋に行った権三は女郎をみな自由にすると言う。「お前らの証文は虎三から分捕ってきてやった」喜ぶ女郎たち。「トミ。俺だ」「あんた。生きてたの」「トミ、お前はたった今から俺のかみさんだ」

用心棒の一ノ瀬半蔵にとんでもない奴が現れたと訴える虎三。「賭場は閉めろ、女郎は自由にしろと言いやがる」「慌てても時の流れは変わらないよ」「先生。そんな」「わかっておる。その赤毛とやらを殺ればいいんだろう」お前の親父は死んだと権三に言う母のウメ。「年貢が払えなくて、柿の木に首くくって」「何。あの柿の木にか」村の若者たちが代官所を襲撃すると聞いた権三は俺がやると言う。「あんなもの、俺一人で十分だ」

代官所に向かう権三に斬りかかる半蔵。「なんでえ。何しやがる」「赤毛を見たら虫唾が走る」「走ったってしょうがねえだろう。世の中が変わるんだ」「どう変わると言う。葵が菊に変わる。ただそれだけじゃねえのか」「それだけ変われば十分じゃないか。官軍の天下になるのが、そんなに嫌かよ」「いや。徳川の天下もあまり好きじゃなかったな」「ふん。おかしな野郎だな」

代官所に押し入った権三は、百姓たちに年貢半減を約束し、年貢米を奪い取る。喜びのあまり、ええじゃないかと踊り狂う村人たち。木曽屋に相変わらず百姓をいじめているようだなと言う権三。「めっそうもない。実は官軍に献金しようと500両を持ってきたんです」「わかった。確かにこの金は官軍が」

我々は商人だと権三に言う左右吉。「この献金を官軍のどなた様に送るか、はっきりお聞かせを」「そう言われても」「あなた様の上司は?」「赤報隊の相楽総三だな」「その上は?」「東山道軍参謀・荒垣弥一郎だな」「その上は?」「よくわからんな」「では官軍とはよくわからぬものと」「うるせえ。いい加減にしろ」

あなたは新政府のお役人様ですと権三に言う神尾。「その際はよろしく」「うむ。鞄持ちくらいにはしてやるぞ」神尾に江戸から早飛脚が届いたというお葉。<犬め。われらの目が光っていることを忘れるな。遊撃一番隊>という文を読んで。顔色を変える神尾。参謀の毛も赤毛なのとお葉に聞かれ、違うと答える権三。「参謀のは白い毛で長いやつだ」「参謀は隊長よりいい男?」「どうかな、ははは」

半蔵に権三を斬ってくれと再度頼む虎三。「ふん。2両では安すぎる」「では、20両」「その金、どこから出た」いい気になってるとやばいぜと権三に言う三次。「代官の様子がおかしいんで、懐を探ったらこんなもんがでてきた」「なんだ、それは」「脅迫状だ。陰で代官を操っているやつがいる。遊撃一番隊だ。江戸から来たことになってるが、それは嘘だ。ここで大将の命を狙ってる物騒な奴がいるってことだ」

権三に俺たちを助けてくれと言う百姓の袈裟治。「どうしたんだ、この傷は」「おらたちは年貢のカタだと言われて、毛無山で材木伐採させられているんだ。お前が来たというんで、おらだけが抜け出してきたんだ」「わかった。明日、俺がみな助け出してやる」しかし袈裟治は鉄砲で射殺されてしまう。

そこに現れた半蔵に懐の中の手を見せろと言う権三。二十両を持っている両手を見せる半蔵。「この手は煙硝の匂いはしないぜ。酒と金の匂いだけだ」「じゃあ、いったい誰が」「知らん。だが闇から鉄砲とは汚い。汚いやつには虫唾が走る。ま、気を付けな」「ふん。おかしな野郎だ」

翌朝、虎三にいじめられた夢を見たと権三に言うトミ。「トミ。安心しろ。もう大丈夫だ」「私、こんなに幸せでいいのかな。生まれた時から踏みつけられてきたのに、一晩でガラッと変わってしまって」「可哀そうになあ」毛無山にいる百姓を助けに行くので、馬を貸してくれとお葉に頼む権三。「それは大変ね」「なに。ガキの頃から遊びなれた山道だ」

トミに10年ぶりに抱かれた男の味はどうだと聞く虎三。「何の用さ」「しかし、権三が新政府の役人になったら、女郎上がりのお前を奥さんにすると思うかい」「……」「俺はお前を女郎屋の女将にしようと前々から思ってたんだ。だから俺の言うことを聞いてれば間違いないんだ」権三は毛無山に向かう途中で狙撃されるが、何とか難を逃れ、毛無山に誰もいないことに気付く。

権三は偽官軍だと訴える神尾。「奴は天から伊勢神宮の札が降ってきたと言っておるが、自分の懐から伊勢神宮の札を捲いて、皆をだましておったのだ。それが証拠に奴の書類袋にこの札が五万と入っておった」畜生と呟く三次。「誰があれを持ち出したんだ」権三は逃げたと言う神尾。「毛無山に行くと見せかけて、500両もって逃げたんだ」

動揺する若者たちに違うと言う三次。「大将はそんな人じゃない」そこに戻ってくる権三。慌てて代官所に逃げる神尾と木曽屋と虎三。500両を持ち逃げしなかったのかと言う三次に、俺は仏壇の下に隠したという権三。「そのことはトミに話しているはずだが」「……」「いや、言い忘れたかな」

畜生と神尾に言う虎三。「袈裟治に金をやって権三をおびき出し、トミのやつを言いくるめてうまくいくと思ったのに、死んだと思ったあいつが現れるとは」そこに現れた左右吉にいつまで我々を隠れ蓑にする気だと聞く木曽屋。「もうしばらくの辛抱だ」

いい加減にやめろと権三に言うウメ。「世直しだのご維新だの、いい気になってるととんでもない目に合うべ」「おっかあ」「お前はガキの頃から変わってねえ。ガキ大将とおだてられて、柿の木のてっぺんに上って、そっから落ちた。それから頭ぶって、頭が弱いんだ。こんなもの捲いて、お先棒担がされてよう」「本当の世直しだ。百姓の天下になるんだよ」「どんな世の中になっても、おらたち百姓の暮らしはちっとも変わんねえ」「……」「お前、とっとと逃げろ。命がいくらあっても足りねえぞ」

遊撃一番隊の目的は荒垣弥一郎を倒すことと半蔵に言う左右吉。「半蔵。力を貸してくれ。ぬしももともと旗本。徳川三百年の恩顧に答えるためにも」「時の流れに葵は流されたと思いませんか」そういう世の流れと知りながら一矢報いて死にたいと言う甚兵衛。「せめて美しく死にたいと」「死ぬのに美しいも醜いもありますか。すべてがなくなる。それだけです。だから私は生きている間、何かに燃えたいだけです」もうわかったと言う左右吉。「もうこれ以上頼まん。だが赤毛のやつは殺ってくれるな」「ではあの20両はあなたがたから」

あなたの身代わりになりたいと言うお葉に思い上がるなと言う半蔵。「その思い上がりが嫌で、俺は家を出たのだ」「……」「俺のような男とお前のような女が夫婦であったと言うことが不思議でならん」「では、なぜ私たちを追ってここに」「お前への未練と思うか」「では、何なんです」「……」「あなたは私たちの邪魔を」鉄砲を突きつけるお葉にやりたければやれと言う半蔵。「ちょうどいい。生きていくのが面倒くさくなった」半蔵を撃てずに抱きつくお葉。

トミに俺は百姓のせがれだと言う権三。「みんながちやほやするのはこの赤毛のおかげなんだ。俺なんかじゃねえ。俺はやっぱり頭が弱いのかな」「でも、あんたは嘘をつかねえ。みんなを救ってくれた」「トミ」「ねえ、あんたは本当に私をおかみさんにしてくれる」「当たり前だ」「ごめんよ。私が悪かった」「どうしたんだい」「抱いて。こんないい人を、私は。私を思い切りいじめて」

500両を相楽に届けたいと三次に言う権三。「やっぱり俺は官軍の赤報隊だ。この沢渡が約束通り三日間で鎮撫できたと聞いたら、隊長の野郎、大喜びだぜ」「わかった。俺が届けに行く。その代り、この赤毛を貸してもらうぜ」

三次は若者三人と官軍の陣地に行く。「お前たちか。沢渡から来たのは」「あなたが相楽様で」「俺は東山道軍参謀の荒垣弥一郎だ」「へえ。沢渡は全て鎮撫したと大将からの報告で」「あそこは神尾と言う代官が差配しておったはずだが」「へえ。その代官も大将が猫みたいに手なずけてしまったんで」「それは見事だ。で、本隊が進んでも何の障害もないわけだな」「へえ」「で、その軍資金は」「へえ、ここに。それで相楽総三さんは」「ああ、そこにいる」

さらし首になっている相楽を見て驚く三次。「これはいったい」「赤報隊は官軍先鋒と偽り、年貢半減など勝手気ままなふるまいをした。よって昨夜処分した」「でも年貢半減は新政府の命令では」「そのような命令を出した覚えはない。相楽の独断専行だ」「おかしいじゃねえか。うちの大将はそれを信じ切って。ガキじゃあるまいし、へえそうですか、と俺も引き下がるわけにはいかねえ」「これから発足する新政府が年貢が半分しか取れないでどうする」「わかった。今更取り消しができないんで、赤報隊を偽官軍に仕立てあげたんだ」「その偽官軍が沿道で馬鹿に評判がよくてな」「畜生、何が錦の御旗だ」「斬れ」

赤報隊が来るのを待つ権三の前に現れる半蔵。「やるか」「うむ」しかしそこに血まみれで帰ってくる三次。「どうした。三次」「みんな斬られた。赤報隊はニセ官軍だってよ」「なんだと」「相楽さんはさらし首にされてた。大将は騙されてたんだよ」あの世に行く三次。これは何かの間違いだと赤毛をかぶる権三。「俺は官軍だ。誰が何と言っても官軍だぞ。見ろ。この赤毛を」

そこに現れた東山道軍は権三に斬りかかるが、権三は半蔵に助けられる。「お前、どうして」「俺は官軍が嫌いと言っただろう。ニセ官軍にはもう用はねえ」「ちぇっ。おかしな野郎だ」神尾と木曽屋は官軍の大将にご注進したいと叫ぶ。「赤報隊の首領の権三は駒込屋という女郎屋に潜んでおります」「そうか」「あと、ここには官軍の首領を狙う不逞の輩が潜伏しております」お葉に射殺される神尾と木曽屋。

さっぱりわからんと言う権三に、葵が菊に変わっただけと言う半蔵。早く逃げろと権三に言うウメ。馬宿で何か始まったと聞いて、顔色を変える半蔵。「権三。命ってやつは一つしかねえよ。大事にするんだな」東山道軍との戦いで命を落とす左右吉と甚兵衛。馬宿に駆け付ける半蔵。「あなた」「お葉」ハチの巣状態になって死ぬ半蔵とお葉。

赤報隊の残党以外は出てこいと怒鳴る荒垣。出てくるなら今のうちだと怒鳴る虎三。みんなに逃げろと言う権三にお前は大将だと言うウメ。「大将なら大将らしくしろ」「おっかあ」「お前は柿の木から落っこちた時、柿の実をちゃんと握ってたぞ」「……」「お前はちゃんと世直しをやったよ。たった三日だけど、おらたち百姓の天下にしたよ」「……」

「誰にもできねえことをお前がやっただよ」「……」「権三よ。生きてりゃできる。なんべんでもできるだよ」「おっかあもそう思うか」「おらだけじゃねえ。みんなもそう思ってる」「……」「裏道なら誰も知らねえ。さあ、大将が腰を上げないとみんなついてこないぞ」

権三は逃げようとするが、トミがいないことに気付く。「トミ。トミはどうした」虎三に権三を助けてと訴えるトミ。「官軍の大将さんに頼んで」「うるせえ」「私、どんなことでもするから」「うるせえってのに」突き飛ばされたトミは虎三を刺し殺す。官軍の大将さんと叫ぶトミは撃たれて死ぬ。これが官軍かと怒る権三も撃たれて死ぬ。

大声をあげる女郎。「ははは。大神宮様のお札が降っただよ。赤毛の大将にはやっぱり神様がついてただよ。踊れ。踊れ、躍るだよ。ええじゃないか。ええじゃないか。ええじゃないか」「躍るだ。赤毛の大将こそ、本当の百姓の神様だ。ええじゃないか。ええじゃないか。ええじゃないか」「ええじゃないか。ええじゃないか。ええじゃないか」「ええじゃないか。ええじゃないか。ええじゃないか。ええじゃないか」