戦国野郎 | ロロモ文庫

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永禄四年、戦国時代の只中。忍者の越智吉丹は同じ忍者の雀の三郎左に聞かれる。「お前は武田信玄様から逃げられると思うのか」「わからん」「何」「やってみなくてはな。人間は計算ばかりで動くとは限らない。肝心なのは心だよ。武田信玄。見損なったね。冷たい血の凍った腹の魚のように臭い奴」

斬りかかる三郎左を谷底に落とす吉丹。そこに現れた男は、俺は胴子播磨だと名乗る。「俺も信玄に頼まれてお前を狙っていたがやめた。とても勝てそうにもない。しかし武田の城からこの木曽路まで、さっきの三郎左で十八人。よくも斬ったな」「よくも数えたな。それが本当なら、次が十九」十九人目の忍者を斬る吉丹。

吉丹と播磨の前に猿のような顔をした武士が現われる。吉丹に話しかける武士。「お前は武田に追われてるそうじゃの」「……」「もし、わしがお前を追う武士だとしたらどうする」「斬る」「斬られてはかなわん。その訳を教えよう。ここでわしが斬られたら日本の歴史が変わる。ところで貴公、逃げおおせたら何になる」「一国一城の主になる」

「では貴公は親兄弟でも斬れるか」「……」「斬れそうもないな。この乱世にのしあがろうとする男にそれくらいの神経が持ち合わせてないと無理だ、と、あきらめるのはまだ早い。頼りになるヒモを見つければよい」「ヒモ?」「師と仰いで損のない人物を選ぶことじゃ」「それは誰だ」「木下藤吉郎あたりはどうかな」

そこに有吉党の馬借が現われる。「あれは塩や米や魚を運ぶ馬方だ」「馬方がどうして武装する」「武装しなくてどうして山賊を防ぐ。どうじゃ。あれにも潜りこんでみんか。追われる身なら、絶好の穴と思うが」「貴様は何者だ」「貴公と同じ、夢は一国一城の主。末は天下を掴もうと思う者。ここで出世の糸口を掴もうと考えておる。さしあたって馬借を使って一旗あげたい」侍に聞く播磨。「教えてくれ。どうすればあの中に潜りこめるか」

吉丹は播磨に追われるふりをして、馬借隊の中に逃げ込む。馬借隊のさぎりという娘が吉丹に事情を聞く。「どうしたの」「へい。俺があの侍の握り飯を盗んで食ったら、あの侍が怒って、俺を斬ると」「うふふ。握り飯一つで斬ったり斬られたり。二人ともよほど腹をすかしているようね。どう二人とも馬借の仲間に加えてあげようか」こうして二人は有吉党の馬借の一味となる。「播磨はハリネズミ、吉はバッタと呼ぶからね」

有吉党のリーダーの有吉宗介は新入りの六は使えるかと夏に聞く。「使えます。しかし農民か百姓か得体のしれぬ者。用心せぬと」「そうかな。得体のしれぬのはお前さんも同様」「なんと」「馬借に過去はない。無駄な詮議だてはせぬように。用は馬借の役に立てばよいのだ」そこにさぎりたちが帰ってくる。「さぎり殿」「夏。昔は侍の夏之助でも今は馬借の夏。殿呼ばわりはおよし」宗介の娘であるさぎりは吉丹と播磨を拾ってきたと宗介に報告する。

昼間会った山猿侍のような奴は苦手だという吉丹を笑う播磨。「越智吉丹は腕は立つが世間は知らぬ。あの山猿が木下藤吉郎だ」「え」「桶狭間の合戦で名を売った織田信長の家臣、木下藤吉郎だ。頼りになりそうなヒモだ」「それにしても汚いヒモだ」

宗介と会う藤吉郎。「乱世も治まりつつあります。そのかじ取りをするのがわが織田信長公」種子島をぶっ放す藤吉郎。「一挺の種子島は百人の兵に勝ります。宗介殿、この種子島を三百挺、泉州堺から尾張織田領まで運んでくださらぬか」「三百挺」「本来、武田に売られる約束のものをわしが買い取った。無事届けていただければ黄金百両を渡そう」「しかし、馬借は塩や米を運ぶもの。それを鉄砲とは」「それがわしの狙いだ。塩や米を運ぶ馬借がまさか種子島を運ぶとは思うまい」「しかし、相手が武田となると無事では済まされまい」

藤吉郎は宗介が鉄砲を運搬することをなかなか承知しないので、吉丹を伴にして堺に向かう。堺に着いた藤吉郎は村上水軍の滝姫と参謀百蔵と会う。「いかがでござろう。種子島三百挺。海路で尾張まで運んでいただけぬか」三百挺の種子島があれば水軍は鬼に金棒とほくそえむ滝姫は、藤吉郎の申し出を了承する。吉丹を追う武田の忍者は堺で雀の三郎左と会う。「三郎左殿。ご無事であったか」「越智吉丹を斬らぬ限り、わしは死ねぬ。わしはここで網に魚がかかるのを待っていたら二匹もかかりよった。一匹は種子島三百挺。もう一匹は越智吉丹」

物見やぐらで遠方を見るさぎりに声を掛ける夏。「バッタの帰りを待っているのか」「綺麗な空気を吸っていただけよ」「お嬢。わしの気持ちを」「汚れた空気は吸いたくなの」戻ってきた吉丹は、藤吉郎が村上水軍に種子島三百挺を運ばせる約束をとりつけたと播磨に言う。「今頃は堺で高いびきだろうよ」

しかし、藤吉郎が現われたのを見て驚く吉丹。「どういうことだ」「うむ。なかなか頼りがいのあるヒモだ」宗介に種子島三百挺の輸送を依頼する藤吉郎。宗介は馬借たちに藤吉郎の話を聞いてくれと頼む。藤吉郎は堺から尾張まで荷物を運べば、金七両と尾張での自由通行手形を与えると馬借たちに言う。六は何を運ぶか知らないが、金のためならその仕事に乗ると言う。同意する他の馬借たち。

種子島は村上水軍が引き受けたのではないか、と藤吉郎に聞く吉丹。「それがわしの作戦じゃ。本物と偽物の種子島を村上水軍と有吉党に運ばせる。武田はどっちを狙うかな」「どっちが本物だ」「さあ。どっちが本物かな。ふふふ」

俺はまっすぐ歩きたいと播磨に言う吉丹。「まだ青臭いことを言ってるな。山道を登るにもまっすぐに行けんぞ」「俺はまっすぐに歩きたいよ」「そんなことではこの乱世は生きていけんぞ」「時によっては親兄弟も斬る、か」「場合によって魂までも売る、か」

有吉党は荷物を積んで出発する。「六がいませんが」「かまわん」有吉党を見送る藤吉郎。六こと木下藤吉郎の家臣蜂須賀小六は堺に行き、滝姫に荷物を受け渡す。「種子島三百挺お渡し申した」「確かに受け取りました」藤吉郎は有吉党と合流する。

夜半になり、村上水軍の船を三郎左指揮する武田忍者軍団が襲う。しかし小六が預けた荷物は鉄砲ではなく石ころであったな。はかったなと呟き撤退する三郎左。藤吉郎、このままではすまさぬぞと怒る滝姫。

尾張に向かう有吉党。夏は怪しい者がいると森の中に行き、三郎左に捕えられる。「おぬし、命は惜しいだろうな」「……」「大事に使えばあと三十年は持つ」「……」「俺の言うことを聞け。聞かねば命は貰う」野宿する有吉党。そこに旅の地酒売りに化けた滝姫が現われ、眠り薬のはいった地酒を馬借たちに振る舞う。滝姫は百蔵と落ち合うとするが、そこに現れたさぎりと斬り合う。遅れて現れた百蔵はさぎりに催眠術をかけて、さぎりを眠らせる。

藤吉郎のもとに現れる滝姫。「滝姫、ねだりごとがございます」「なんじゃ、言うてみい」「まず一献差し上げて」「わしも果報者じゃの」しかし滝姫の持っていた酒瓶は何者かの投げた石つぶてで割られる。酒はここにもあると自分の酒を滝姫につがせる藤吉郎。「今宵はここに泊まらぬか」「その前に鉄砲三百挺いただきたたくて」「なに。わしの鉄砲はどうした」「藤吉郎。シラを切るのもいい加減におし」そこに現れる播磨。「わしにも一献してくれんかな。ほかの奴らはあんたの毒酒で寝込んでいるようだから」

百蔵はさぎりを抱こうとするが、そこに吉丹が現われる。正気に戻るさぎり。「バッタ」「お嬢。みんなが心配する。早く帰れ」「嫌」「お嬢、帰れ」「嫌」「さぎり、帰れ、馬鹿」「帰る」なんでわしを助けたと播磨に聞く藤吉郎。「惜しい人間を見殺しにできないわしの癖でな」今頃は自分の部下が種子島三百挺全部盗んでいると豪語する滝姫に、それはどうかしらと呟くさぎり。

浅はかだったと吉丹に言う百蔵。「鉄砲の囮を扱ったぐらいのことがどうしてわからなかった。木下殿の目には村上水軍に人物なしと映っただろうな」「納得がついたら一刻も早く引き上げることですな」「しかし、滝姫が」ふてくされて歩く滝姫を追う播磨。滝姫は播磨を刺そうとするがあっさりかわされて、畜生と播磨に泣きつく。えらい結果になりそうだと呟く播磨。

朝になり、後はよろしくと言って消える藤吉郎。毒酒の覚めた有吉党は尾張に向けて出発する。吉丹に播磨はどこに行ったかと聞くさぎり。「あいつは大人だ。どこに行っても間に合う奴だ」

道中で馬借の三人が殺される事件が発生する。馬借の背中に刺さった手裏剣を見て、これは武田忍者の手裏剣だと呟く吉丹。急いで尾張に向かう有吉党であったが、馬借の一人が崖に突き落とされる。それを救いに行く吉丹。あとを追う夏は、吉丹をつなぐ縄を切り落とし、吉丹は転落死したと一同に告げる。「きっと谷底に落ちてバラバラになっておろうな」

涙するさぎりにバッタ一匹虫けらのことなどで悲しむなと言う夏。刀で夏の腕を傷つけるさぎり。「何をする」「人がバラバラになって平気な男でも、自分のかすり傷は人並みに痛むの」

森の中で三郎左と会う夏。「おぬし、よくやった。いささか見直したぞ。四人も殺るとは」「四人ではない。五人だ」「五人目は気にくわぬ。越智吉丹。あいつは俺の手で息を止めたかった。しかも正々堂々と。それをおぬしは汚い手を使った」「……」「俺はおぬしを許せないが、おぬしの仕事はまだ残っておる。荷を運ぶに必要な人間を残して、後の馬借はこの山中で消せ。山賊とは話がついている。よいか、娘を使うのだ」

「さぎりを」「惚れているな。おぬしにとってはよい役回りだ。山賊はそのさぎりを人質にとる。おぬしはそれを宗介に知らせに行く。皆が騒ぎ出したらお前は人数を借りて山賊を襲い、そこで馬借は消える。おぬしはさぎりを助ける。どうだ。いい役回りだろう」頷く夏。

さぎりは山賊にさらわれる。夏は人数を借りて行きたいと宗介に申し出るが、行くことはあるまいと吉丹は答える。「幽霊ではない」「どうして助かった」「天はまだ我を見捨てなかったということかな」吉丹は一人でさぎりを助けると言う。「馬借隊は月の光を借りて、先に荷物を運んでください。こっちがお嬢を大人数で助けに行くとかえって目立つ」吉丹は一人で山賊の砦に忍び込み、さぎりを救出する。

有吉党は木曽川目前にするが、そこに三郎左率いる武田忍者群が現われる。「馬借。その荷を武田に渡せ」「有吉党。荷を渡すより死を選ぶが誇り。火焔太鼓の旗印に賭けても渡しはせぬぞ」武田忍者と有吉党の死闘が展開される。「くそう。木曽川より三途の川が近づいた」そこに駆けつける吉丹とさぎり。喜ぶ三郎左。「吉丹。よくぞ生きていた」さらに激しい戦いが続くが、播磨率いる村上水軍が助っ人に現れる。

それを見た三郎左は総攻撃を仕掛けるが、武田忍者群は種子島の銃弾を浴びて、次々に倒れていく。はははと笑いながら百姓相手の釜や鍬を運んでいた行商人一行の中から現れる藤吉郎。あれ、ヒモの旦那だぜと呟く播磨。これからの戦は鉄砲に限ると言う藤吉郎に、あの種子島はと聞く吉丹。「ああ。あれは蜂須賀小六が釜や鍬売りに化けてここまで運んだ種子島三百挺じゃ」「なに」「さすがの武田勢もいっぱい食ったわけだ。ははは」では馬借の運んだ荷はと聞く宗介に、あれはただの石ころだと答える藤吉郎。

激怒する吉丹。「藤吉郎。石ころに命を賭けた者はどうなる」「ことわざにもある。小の虫を殺して、大の虫を生かす」「なるほど。親兄弟でもばっさりやれる顔つきだ。やり口は武田と同じ。武田は力でお前は頭。だまされるほうが悪いと言えばそれまでだが、俺は好かん」「その気持ちはわかるが、どうじゃ、俺のところで働かんか。一国一城は保証するぞ」「断る。俺はそうまでしてなりたくない」「じゃ、どうする」「馬借になる。小の虫かもしれんが雑草のように生きてやる」

これで吉丹は一人前だと言う播磨。「しばらく見ぬうちに青臭さがなくなった。俺はもう用はない。お嬢と二人、雑草らしく生きてくれ。では滝姫、行こう」「あい」俺はあんたにぶら下がるつもりだったと藤吉郎に言う播磨。「頼りになりそうなヒモだったからな」「どうして気が変わった」「海へ行くことに決めた。海は広い。狭い日本じゃ肩がこる。あんたが日本を征服しているころは、俺たちはもっと広い海で羽根を伸ばしているよ」じゃあと吉丹に別れを告げる播磨。

吉丹に別れの言葉を告げる藤吉郎。「俺も雑草だ。百姓生まれの雑草が踏まれているうちにこうなった。世の中にはこういう雑草もいるということだ。はははは」石ころを運んだ荷物に火がつけられ、荷物は炎となって燃え盛る。夏は背後から吉丹を斬ろうとするが、かろうじて生き延びた三郎左の投げた刀に胸を刺されて絶命する。負けたと呻いて炎の中に飛び込む三郎左。吉丹はさぎりに告げる。「火焔太鼓だ。馬借を立て直そう」吉丹とさぎりは馬に乗って明日に向かって駆けるのであった。