市民ケーン | ロロモ文庫

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「1941年、新聞王と言われたチャールズ・ケーンがこの世を去りました。彼の広大な屋敷には彼がコレクションした古今東西の美術品であふれかえっています。ケーン王国の全盛期には新聞社37、ジンジケート2、放送局1のほか、食料品チェーン店、製紙工場、アパートビル、工場、森林、定期船を所有。50年間に渡った彼の帝国には続々と富が流れ込んだのです。彼の財産は宿屋の女主人だった母親に一老人が宿賃代わりに遺贈したボロ鉱山の権利書に始まります」

「1895年から1941年、彼は取材し取材された。アメリカの参戦にも彼は影響を与えました。大統領選挙にもです。ケーンの新聞はあらゆる問題に意見を表明し、政治家に対しても立場を鮮明にして遠慮しませんでした。彼は結婚2回、離婚2回。最初の妻で大統領の姪エミリーは離婚後、交通事故死。彼は歌手のスージーと離婚の半月後に再婚しています。そして新妻のためにシカゴにオペラハウスを建設しました」

「彼は政界入りには失敗。世論操作の名人だった彼も選挙では勝てませんでした。しかし当選確実と思われた時もあります。州知事候補として圧倒的な前人気でした。大統領にもなれそうな状態でしたが、スキャンダルを暴かれてみじめな敗北。世界の変革に力を貸した彼も偉大な大衆紙オーナーとしての使命を終え、ほとんど人の訪れぬ広大な邸の中で崩れ去ろうとする彼の帝国を統括していました。しかし国民はすでに彼を見はなしていたのです。そして先週ついに彼にも死が訪れました」

これではただのニュース映画だと語る映画製作者たち。「要するに彼の死を伝えているだけだな」「そうだ。彼の人間が描けてない」「彼の最後の言葉は何だっけ」「薔薇のつぼみ」「大統領にもなりかけた男が死ぬ間際に言ったんだから何か意味がある」「上映は延ばせ。その前に薔薇のつぼみが何か調べるんだ。支配人バーンスタインや後妻に聞け。彼の旧社員や友達。味方も敵も皆当たれ」

新聞社のトムソンはサッチャー記念図書館に行き、ケーンの過去を調べる。

1871年、金が入ったからと言って息子を手放すことはないと妻に言うチャールズの父。「宿賃代わりに勝った株はわしにも権利がある」「私はもう決めました」「銀行は教育にない親からは子を取り上げるのか」そんなことはないと言う銀行家のサッチャー。「教育と衣食住の一切に責任を持ちます。25歳の誕生日まで銀行が管理運用します」なら仕方ないなと呟く父。

チャールズにサッチャーを紹介する母。「旅に連れてって下さるわ」「ママも?」私たちだけだと言うサッチャー。どこに行くのと言うチャールズにシカゴやニューヨークやワシントンだと言う父。「ママは何故来ないの」「宿屋の仕事があるわ」お前は金持ちになるんだとチャールズに言う父。「こんな田舎にいるのはよくない」一緒に行こうと言うサッチャーに雪そりを投げつけるチャールズ。サッチャーに謝る父。「あとでぶん殴ってやります」殴るのと言うチャールズにだから出るのと言う母。

25歳となったチャールズは金鉱や油田など興味はないので、新聞社だけをやりたいとサッチャーに申し出る。それからしばらくして君の新聞には問題が多すぎるとチャールズに言うサッチャー。「君はあの新聞の筆頭株主だぞ」「でも新聞発行者としては正義の血が燃えるんです。悪徳資本家に搾取されている庶民を」「守ってやりたいと」「それが僕の使命だと思うんですよ」

支配人のバーンスタインに薔薇のつぼみについて何か知ってるかと聞くトマソン。「さあね。若い頃知り合った女の名前かなんかじゃないかな」「50年もたって死ぬ間際にそんなことを」「君も若いね。人間の記憶なんてそんなものさ。私も55年にすれちがった女のことを昨日のように覚えている」「……」「劇評家のリーランドに会いたまえ。ケーンの学友だ。私とケーンとリーランドに新聞社に乗り込んだんだ」

インスクワイア紙に乗り込み新聞は24時間体制にすると編集長のカーターに言うチャールズ。「行方不明の人妻の記事を出せ」「うちはニュース新聞です」「殺人事件を扱え。記者を亭主のところにやって、女房の居所を言わんと告発するぞと言わせろ」「それでは新聞の品位が」「よろしく頼むよ」

新聞は単なる読み物であってはならんと言うチャールズ。「ガス灯くらい重要なものにするんだ。記事は分かりやすく面白く、そして公正に」たちまちインスクワイア紙が全米ナンバーワンの部数を誇るようになる。我が世の春を誇るチャールズは大統領の姪のエミリーと結婚する。

エミリーは薔薇のつぼみじゃないなと言うバーンスタイン。「離婚しましたからね」「そしてスージーと結婚したがそれも離婚した。とにかくリーランドに会いたまえ。よくケーンに反対していた。米西戦争の時も反対した。おかげでパナマ運河が手に入ったがね」

病院にいるリーランドと会うトマソン。「彼は卑劣なことをしたよ。卑劣な人間じゃなかったが行動がね。友人は私しかいなかったのに。いや、私も取り巻きの一人だったのかな」「薔薇のつぼみは?」「葉巻を持ってないかね。若い医者に禁止させられて」「薔薇のつぼみは?」「エミリーのことかな。彼女は随分寂しい思いをした」

深夜遅く帰ってくるチャールズに何をしてるのと聞くエミリー。「エミリー。君のライバルは新聞社だけだよ」「大統領の攻撃はやめて」「お人よしの叔父さんだ。悪党どもに政治を任せている」

ケーンは歌手志望のスージーと知り合う。「私は楽譜売りをしてるけど、母は私をオペラ歌手にしたかったの。こんな声じゃ無理なのに」「君は私が誰か知らないのか」「名前はケーンってことは知ってるけど」

チャールズは州知事選挙に立候補して対立候補で現知事のゲティスの不正を徹底的に弾圧するが、ゲティスに君とスージーのことを世間に公表すると脅される。見損なうなと怒鳴るチャールズ。「汚職したり卑劣な行為をするような安っぽい政治家とは違う。貴様は監獄に送ってやるからな」月曜日にチャールズとスージーのスキャンダルが紙面を飾り、チャールズは選挙に惨敗し、エミリーと離婚する。

民衆が僕よりゲティスを選んだから仕方ないと言うチャールズに、君は民衆は自分のものだと思っていると言うリーランド。「奉仕する者にチップでもやるような感覚だ。労働者に対しても」「……」「君には本当の愛情がない。愛してやるから奉仕しろと言う態度なんだ。何でもそうなんだ」「……」「シカゴに転勤させてくれ。向こうで劇評家を求めていたろう」

チャールズはスージーと再婚し、彼女のためにシカゴにオペラハウスを建てて、スージーをオペラ歌手としてデビューさせるが、リーランドはスージーを酷評する。

その記事をチャールズは載せましたねとリーランドに言うトマソン。「有名な話ですが、理由は何でしょう」「それが彼さ。正直なところを見せようとしたのさ。ところで頼みがある。いい葉巻を二本ばかり買ってくれんか」

ケーン氏について思い出すことはありますかとスージーに聞くトマソン。「思い出すことを話すとキリがないわ。レッスンはきつかったわ。劇場まで建ててくれたけど、私が頼んだんじゃないわ。何でも彼の独断よ。別れた時以外は」

スージーにまったく才能がないとうんざりする教師にとにかくレッスンするんだと言うチャールズ。自分を酷評する記事を見て、私はもうやめると言うスージー。「元々好きでもないし」「歌を続けるんだ。僕が人に笑われる」「笑われてるのは私よ」自殺未遂をしたスージーに歌手をやめさせ、彼女のために豪邸を買うチャールズ。

「たまには外出したいわ」「ダメだ。君はここにいるんだ」「あなたはお金で私を買収しようとしてるだけじゃない」「愛しているさ」「嘘よ。愛させようとしてるだけよ。欲しいものをやるから俺を愛せと」家を出ると言うスージーに行かないでくれと頼むチャールズ。「君がいないと僕が困る」「それが嫌なの。やっぱり自分のことしか考えてないじゃないの」

ケーン氏も気の毒な人ですねとスージーに言うトマソン。「そうね」「薔薇のつぼみについては」「彼がそんなことを言ったのは聞いたこともないわ」

チャールズの邸宅に残された膨大な美術品を評価する鑑定士たち。「良くこれだけ集めたな」「ガラクタは処分しよう」「それにしても薔薇のつぼみは何だったんだろう」焼却炉に入れられるガラクタの中に<薔薇のつぼみ>と書かれた薔薇の花が描かれた雪ぞりが含まれていたのであった。