１８３８年、ヴイスボルグという街にフッターとその妻のエレンが住んでおり、新婚の二人は誰が見ても仲むつまじい日々を過ごしていた。しかしフッターの雇い主である不動産業者のノバックは胡散臭い男であった。フッターに仕事を命じるノバック。「オルロック伯爵からの依頼だ。トランシルバニアのお方で、この町で家を探しておられる。お前もこれで大金を稼げるぞ。汗をちょっと流すだけ。ことによると血もな。ははは。伯爵は静かな家を望んでおられる。お前も向かいの家がちょうどいいだろう。お勧めに行ってこい。トランシルバニアでは幽霊が出ると言うがただの噂だ」
夫がトランシルバニアに出張すると聞き、得も言われぬ不安に襲われるエレン。長旅の末、フッターはトランシルバニアに到着し、そこで「吸血鬼の恐るべき魂、魔力と七つの大罪」という本を読む。そこには、悪魔の精液からノスフェラトゥ誕生し、彼は人の血の気配に吸い寄せられる、その棲家は墓穴の奥、棺の中、墓地の呪われた土に埋もれている、と書かれてあった。
フッターはオルロック伯爵の城に到着するが、オルロックはフッターが誤ってナイフで指を切ると異常な反応を示す。「少し話相手になってくれんか。夜明けまで時間はまだある。私は日中寝て過ごすのでな。本当に深い眠りにつくのだ」脅えて気を失うフッター。そして朝になって目覚めたフッターは、エレンに手紙を書く。＜いつも君のことを思っている。蚊は本当に厄介だ。首を二か所も刺された。左右に一つずつ隣り合った所を。心配しないで待っていてくれ＞
夜になり、フッターはオルロックと家の契約について交渉する。オルロックはエレンの写真のはいったロケットを手に取る。「君の奥方は美しい咽喉をしている。この家を買おう。君たちの家の向かいの家を」
フッターは吸血鬼の本を読む。＜夜、ノスフェラトゥは生贄に爪を立て、その血で咽喉を潤し、命を輝かせる。彼の影に気をつけろ＞真夜中になり、フッターの部屋に入ってくるオルロック。そのころヴィスボルグでは、エレンが夢遊病者のように庭をさまよい、フッターがオルロックに襲われる幻影を見る。「あなた、気を付けて」フッターの部屋を出ていくオルロック。
オルロックは自らを棺に入れて、ヴィスボルグへの旅路に着く。城に閉じ込められたフッターはなんとか城を抜け出す。棺はヴィスボルグ行きの船に積み込まれる。たちまち船の中はネズミだらけとなる。死神ノスフェラトゥの接近をノバックは感じ取り、精神病院に入れられた彼は、血の海だ、と嬉しそうに叫ぶ。
一人砂浜をさまようエレン。その眼は愛する夫を求めていた。エレンにフッターからの手紙が届く。＜いつも君のことを思っている。蚊は本当に厄介だ。首を二か所も刺された。左右に一つずつ隣り合った所を。心配しないで待っていてくれ＞その手紙を握りつぶすエレン。
ノバックは、「トランシルバニアと黒海沿岸の港でペスト発生し、若者多数死亡。犠牲者全員の首に同じ独特の傷跡」という記事を読んで、膝を叩いて笑う。急いでヴィスボルグに向かうフッター。オルロックの棺を積んだ船では、船員が熱病にかかって次々と倒れていき、最後まで生き残った船長もオルロックの餌食となる。死の船の船長となって、船をヴィスボルグに進めるオルロック。
毎晩のように夢遊病者になり、庭をさまようエレン。「あの人だわ。迎えに行かなくては」船はヴィスボルグに到着する。歓喜するノバック。「ご主人さまがついに到着した」オルロックの入った棺は、フッターの前の家に運び込まれる。ヴィスボルグにペストが蔓延し、ヴィスボルグは死の街と化す。
フッターはエレンの元に戻ってくる。再会を喜ぶ二人は、吸血鬼の本には二度と手に触れまいと約束する。しかしエレンは魔力にあらがえず、その本を読んでしまう。＜夜、ノスフェラトゥは生贄に爪を立て、その血で咽喉を潤し、命を輝かせる。彼の影に気をつけろ。呪いを解く方法はただ一つ。それは純真な女性が吸血鬼を一番鶏が鳴くまで足止めにすること。彼女の清らかな血が吸血鬼を倒すのだ＞
エレンは毎晩向かいの家から幽霊のような男が自分を見つめるのに気づく。絶望に打ちひしがれるフッターとエレン。不安に脅えるヴィスボルグの街は生贄を出すことを思いつく。「ノバックがいい。あいつは看守を絞め殺して病院を脱走したそうだ」屋根に登ってへらへら笑うノバックに石をぶつける街の人々。森の中に逃げ込むノバックは逮捕される。エレンはオルロックの魔力に負けて、彼の元に行ってしまう。
朝がやってきて、一番鶏が鳴く。ご主人様、ご主人様と錯乱するノバック。エレンに足止めされたオルロックは朝の光を浴びて姿を消す。ご主人様が亡くなったとショックを受けて死ぬノバック。息絶えたエレンを抱きしめるフッター。ペストは太陽の光の前に消え去り、ヴィスボルグの街には平和が戻るのであった。