浦沢直樹「MASTERキートン(42)」 | ロロモ文庫

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青い鳥消えた

西ドイツ・ハイデルベルグ。あるアパートにジュリーという英国人女性が引っ越して来る。「パティ。パティ。パティ。あの娘ったら、どこ行っちゃたのかしらね」そこに婚約者のノーマンから電話がかかってくる。「ええ、さっき着いたところ、あ、運送屋さんだわ」そして運送屋に聞くジュリー。「近くで5歳くらいの女の子を見ませんでした」「いいえ」

運送屋はうっかりうさぎのぬいぐるみを落としてしまう。あわててぬいぐるみを拾うジュリー。「あ。ちょっと気をつけて」「ドイツへはお仕事かなんかで」「いえ。結婚するんです」「そりゃあ、おめでとうございます。ご主人はドイツのかた?」「いいえ。私と同じ英国人。新聞社の仕事でこちらに駐在しているんです」

パティは行方不明となり、ジュリーはハイデルベルグ警察に届出をする。「パティ・キャロル。英国人。5歳。髪はブロンド。瞳はブルー。身長は120センチ。あそこにいる母親と一緒に、今日英国にやってきたばかりそうです」そこにノーマンがやってくる。「パティは」「今のところ、手がかりが」「何をのんびりやっているんです」

ノーマン・カワードは有名なジャーナリストだった。「聞きにくいことですが、あなたを恨んでいる人間に心当たりはありませんか」「思い当たりませんね」「ではジュリーさんには?彼女の前のご主人は?」「4年前に事故死したと聞いています。ジュリーは孤児だったんです。友達といえば、古いうさぎのぬいぐるみぐらいで。彼女はパティを孤児院時代に世話になった先生に預けていたんです。その仕事先が、私の本社のタイプ室で」「失礼ですが、あなたも再婚だそうですね。前の奥さんは?」「ドイツ人です。ミュンヘンにいます」

ジュリーは荷物を梱包して、パティに関するものは一切合財ないことに気づく。「写真もなくなってますか」「ええ」「写真なら、パティを預かってくれた英国のエミリー先生のとことにあるわ」「刑事さん。エミリー先生の住所は、私があとからお伝えします」刑事はノーマンを呼び出す。「あなたはパティと会ったことがありますか?」「いいえ。実は一度も」「あなたの書いてくれたエミリー先生の住所。これで間違いないすね」「はい」

「電話の相手は、ジュリーもパティも知らないといってます」「何が言いたいんです」「パティはこの世に存在しません」「馬鹿な」「奥さんのぬいぐるみの名前は」「パ、パティです」「ジュリーさんとは会社で知り合われたと申されましたね」「いえ。実は私も前の家内とのことで、神経が疲れていて。それで、会社が紹介してくれた医師の家で」「そこは、精神科の医師の家、ですね」「……」

そこにやってくるジュリー。「あなた。パティは。パティは見つかったの」「もういいんだ。ジュリー」「え」「もういいんだ。パティはもともといないんだ」「!!」「君は病気なんだ」「あなた、何を。パティは。私のパティは」ショックで失神するジュリー。ジュリーは気づくとベッドで寝ていた。ジュリーに話しかけるノーマン。「大丈夫。君を一生守ってあげる。僕はちょっと外出してくるが、君は外に出てはいけないよ」(いるわ。パティはいるわよ)

外出しようとするジュリーの前に一人の女性が現れる。「ルイーザ・メルクと申します。あの、ノーマンの前の家内です」「え。ああ」女の子の写真を見せるルイーザ。「あなたにそっくりでしょう」「いえ。パティにそっくりです」「?」「私の娘です。いなくなったの」「「その写真はケイト。ノーマンの妹です」「?」「ノーマンの生い立ちをご存知?」「……」

「ノーマンが10歳、ケイトが5歳のとき。二人は義母と折り合いが悪く、家出をしたんです。森で暮らそうとしてね。おなかがすきすぎて、ケイトが泣き出したとき、ノーマンは彼女を元気付けるために隠れんぼうをしました。そしてケイトは誤って池に落ちて水死しました。それが、ノーマンの心に深い傷を負わせたのですね。彼がずっと妹が生きていると信じ込んでいました。私はそれに気づいて、医者と彼の治療にあたりました。ケイトに見立てた人形を火葬にしたの」「……」

「彼は完治した。その後、私たちは別れました。でも一ヶ月前のことです。ノーマンから電話がありました」「ルイーザ。君は嘘を言ったね。ケイトは生きているじゃないか。誰も知らないところで、僕は一生彼女を守るんだ」

蒼ざめるジュリー。「まさか、ノーマンが。警察に行かなくちゃ」しかしノーマンが戻ってきて、ルイーザを撲殺する。「ケイト。もう大丈夫だよ」「パティは」「パティ?ケイトだろ。彼女は僕の隠れ家で元気にしているよ」「ああ。パティ」「ママ、やっぱりケイトをいじめたね。ママア」棒を振り上げるノーマン。そこにやってくる太一。「私はエミリー先生に依頼された探偵です。もう大丈夫。パティなら無事ですよ」部屋に入ってくるパティ。パティを抱きしめるエミリー。