手塚治虫「ブラック・ジャック(63)」 | ロロモ文庫

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宝島

ギャングたちに捕まるブラックジャック。「先生は世界を股にかけてがめつくお稼ぎになった。総額ざっと100億ドル。そいつをそっくり我々に寄付してもらおうと言うわけだ」「そんなことと思った」「あれだけ稼いで金はどこへ消えてしまったのか。世界中の銀行を調べたがほんの2、3百万しか預けてねえ。不思議だ。とすると宝石に換えているか、または現金を持っているかだ」

「我々は一年間かけて先生を調べ上げた。そしてついにある女の名前をつきとめた。五條ミナ。この女は何者だ。先生のイロかい?えっへっへ。この女は島にいるらしいが、その島がどこにあるかわからない。先生、その島はどこにあるんだ」ブラックジャックは拷問を受けるが何も白状しない。「この男がしぶとい。このまま続けても時間の無駄だ。ちっちゃな女の子がいたな。ピノコとかいう。あれを連れて来い」

途端に降参するブラックジャック。「その島に案内してもらおう」「ピノコには手を出さないと誓え」ブラックジャックは沖縄の小さな島にギャングたちを連れて行く。「暑いな。先生、あんたは暑くないのかい」「そういえば、なんであんたはそんなものを着込んでいるんだ」「脱がせてみよう」コートの中にあるメスや注射器を発見するギャングたち。怒り狂うブラックジャック。「それは緊急用の医療器具だ。触るな」「こんなもんでもいざという時には凶器になるな」医療器具を海に捨てるギャングたち。

ある小島に到着する一同。「この島が100億ドルの宝庫なのか。フェフェフェフェ」「五條ミナって女はどこにいるんだ」「そんな女はこの世にいない」「誤魔化すな。ちゃんと調べたんだぞ」「じゃあ、教えてやろう。その女はもう墓の下だ。8年前に死んだんだ。私を可愛がってくれた看護婦だ。この島に埋葬してやったんだ」

「わかってきたぞ。その看護婦の墓が金の隠し場所なんだ」「違う。彼女は沖縄出身だった。だからこの島に埋めてやった。それだけだ」ギャングたちの目の前に小山のような墓が現われる。「なんだこりゃ」「これは亀甲墓といって沖縄の古いタイプのお墓だ。死者の霊が女の胎内に戻って生まれ変われるように女の子宮のかっこうをした墓なんだ。彼女の遺言で作ってやったのだ」

そうかい、ここに大金があるのか、と納得するギャングたち。そんなところに金はない、と絶叫するブラックジャック。「神聖な墓を荒らすな、馬鹿野郎」ギャングたちはハブに噛まれる。「畜生。なんとか手当てしてくれ」「だから言わないことじゃない。私はそのために医療器具を持っていたんだ。私は免疫血清を打ってあるから何ともない」次々にハブがギャングたちを襲う。

「馬鹿な奴らだ。この島に金なんかない。この島を私の金で買い取ったんだ。来るとき、気がつかなかったのか。こんな美しい自然の残っている島は珍しい。私は島に魅せられて、永遠に残そうとあちこちの島を買った。この島もそんな島のひとつだ。まだ疑うなら勝手にしろ。私は帰るぞ」「待ってくれ。連れていってくれ」「お前ら死ね。この空と海と大自然の美しさがわからんやつは、生きる値打ちなどない」