手塚治虫「ブラック・ジャック(62)」 | ロロモ文庫

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ピノコ・ラブストーリー

ピノコはブラックジャックに聞く。「ねー先生。ソーアイって、ろうかくの」「ソーアイってなんだ」「ふたいれ、愛ちあうことよ」「どうして書くんだ」「いいかや、いいかや。おちえて」「ねー。こんろはハンモンろいう字をおちえて」「ハンモンとはブチのことかい」「そーじゃ、ないのわさ。ほや、よく恋ちてて、悩むれちょ」ピノコはラブレターを書いていた。「いったい誰に出すんだい。誰が好きなんだい」

「そう、いちいち聞かなくたって、いいれちょ。ピノコは18歳よ。ちゃんと恋ちてる人いるのよさ」「おい、私に教えてくれてもいいだろう。お前の保護者だぞ」「プライバチーに口をだちゃないこと。出ちてくゆのわよ」

ピノコは公園で5歳の男の子と知り合う。「遊んあげないっては、言ってないわのよ。恋人ごっこならやってもいいわのさ」しかしピノコは男の子に舌を噛まれてしまう。「まだディープキスは早すぎるんじゃないか」「ピノコ、ちっちゃいかや、あんな子とちか、つきあえないのよさ。大きくちて」「我慢しろ。それが似合いだ」「あん。もう、年ごよなのに」「お前はまだ0歳だと言ったろう」「先生バカ」

男の子が急病になって、ブラックジャックのところに運ばれる。「先生。うちの子がお嬢さんとお友達だそうで。これも天の助けとお伺いしました。今朝から急におなかが痛いと」

診察するブラックジャック。「ムッ。心臓が右にある。心臓だけですか。逆になっているのは」「この子は内蔵全転位症とか申しまして。全てがあべこべになっているんです」「造影剤を使ってレントゲンを取ってみましょう」感心するブラックジャック。「ふーム。これは珍しい。盲腸は左に。肝臓も左に。S字結腸も左にある。みぞおちの左がはれている。まともなら右側か。胆嚢か胆管の場所だ」

早く手術してくれ、と頼む少年の両親。悩むブラックジャック。(俺の頭には人間の身体の中が手に取るようにわかるんだ。血管一本、神経一本どこをどう走っていて、どう絡み合ってりるか知っている。だが、身体の中がまるで逆だと、こいつは厄介だぞ)「やってみましょう」ピノコが助手として手術室にはいる。「シウツのあいら、はいってこないれね」「あの子が助手をするのかしら」「心配になってきたぞ」

手術するブラックジャックだが、いつもと勝手が違うのでうまくいかない。(なにもかも逆になった世界が、こんなに手に負えないものとは)ピノコは鏡を持ってくる。「鏡見て。先生。鏡って逆にうつゆでちょう」「そうか。逆の逆だ。つまりまともに」ブラックジャックは何とか手術に成功する。「ピノコ。お前の恋人は助かったぞ」「恋人なんかじゃ、ないわのさ」

ブラックジャックに手紙が届く。「なんだ。ピノコのラブレターが戻ってきてるじゃないか。これは私宛じゃないか」自分へのラブレターなのか、と気づくブラックジャック。「字が間違いだらけだぜ」疲れて眠るピノコをそっと見守るブラックジャックであった。