手塚治虫「ブラック・ジャック(23)」 | ロロモ文庫

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獅子面病

刑事がブラックジャックを逮捕しにやってくる。「警視庁のものだ。お前を無免許医師として逮捕する」「そりゃまた突然ですね」「免許を持たない腕で数え切れないほどの人の身体を切り、何パーセントは殺している。そんな人間が堂々と大手を振って歩く事ができると思っているのか」車に乗せられるブラックジャック。「どうして俺がむきになるか教えてやろう。俺の息子はお前のようなモグリの医者にかかって、治るどころか再起不能になったのだ。だから俺はそういうやつを憎むのだ」

ブラックジャックは警視庁でなく病院に連れて行かれる。「よく聞け。お前をテストするんだ。審査の先生たちだ。どの人も外科の大先生だ。患者をひとり診察し手術をしてもらう。そして見事治療できたら審査員はお前の医師免許をとってくれるそうだ。逮捕もやめてやる。だがデタラメな診断や手術をしたら途中でストップする。そしてお前は刑務所行きだ。もちろん医者としてもおしまいだ。二度とメスを持てないようにしてやる」

早速診察を開始するブラックジャックは患者の顔を見てうめく。「獅子面病だ」カルテを見るブラックジャック。「16歳。男。3歳の時に発病。骨変形著明。現在は口もあかず、目もふさがれている、か。こういう患者を私に押し付けるとは審査員の先生がたも人が悪いね。獅子面病はページェット氏病とも言われ、骨がどんどんふくれあがって背骨や顔がすっかり変わってしまう。しかも原因不明」「どうしますかな」「もちろん手術だ」

脳手術を行なうというブラックジャック。「脳下垂体部分切除及びラジウム片移植手術を」「そんな方法は聞いたことがない。脳下垂体を切っても治らんと思うね。末端肥大症なら別だがね」「私はアフリカで5人の獅子面病患者を手術したことがあります。この方法で三人は治り、二人は死んだ」「すると賭けだな」「そうです」「患者の命を生かすか殺すか賭けるとは許さん」

怒り狂うブラックジャック。「じゃあ、あなた方は賭けてないのか。あなたがたはいつも患者が必ず治ると保障して治療しているのですか。そんな保障できるのは神しかいない。我々は神じゃない。人間なんだ。人間が人間の身体を治すのは、賭けるしかないでしょう」手術は終わる。「患者は治りましたか」「いいや」「なんのために手術したんだ。逮捕する」「三ヶ月様子を見て、それから結論を出していいでしょう」

三ヶ月経ち、刑事は患者の所に来る。患者の顔は完全に治っていた。「パパ」「せがれ」涙を流す刑事。「ワハハ。お前の顔。もとの顔だ」「あの男は偉大な外科医だ。我々は免許状を申請しましたよ。しかしこのやり方はフェアでなかったね。誰にも治せないあなたの息子さんをテストの患者として手術させたんですからな」しかしブラックジャックの免許が下りないという連絡がはいってくる。怒る刑事。

「なぜです。どういうわけなんです」「あの男は患者を脅迫しているそうだ。あちこちの国で。患者を脅して大金を巻き上げているので世界医師会連盟に苦情が舞い込んでいるそうだ。だから免許はとれないらしい」「しかし、そんなことは問題じゃない。人の命を救っているんでしょう。人の命を」