手塚治虫「ブラック・ジャック(24)」 | ロロモ文庫

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ある教師と生徒

「久男。学校はどうしたの」「今日は頭が痛いんだ。だから休む」「また。学校で何かあったんでしょう」「何にもないよう」久男はいやいや学校に行く。担任のごつい顔をした村正は厳しく久男に接する。「お前。物覚えが悪いな。もう一度幼稚園に帰るんだな。それで寝小便の始末をしてもらえ。25の2倍から15の2倍を引いたものはいくつだ。答えてみろ」答えられない久男。

村正たち教師はビアガーデンに行く。「実際、態度の悪いガキはぶんなぐりたくなるよなあ。村正君」「僕は絶対に暴力は使わない。しかし言葉で殴りつけてやるんだ。わざと厳しい言葉をたたきつける。生徒は殴られたと同じくらいまいってしまう」「そんなことをすると生徒から憎まれるだろう」「ああ。何人かの子供は僕を毛虫のように嫌っている。だけど、学校へ来れば否応無しに僕と教室で会う」「まあな」

「僕はそれで生徒が発奮して、畜生、となってくれて、ムキになって勉強してくれることを願っているんだ」「しかしそんなファイトのある子供ばかりじゃないからなあ」そのファイトのない久男はまた学校をずる休みする。「何かあるの。ママにだけは教えてよ」「担任の村正先生がいやなんだ。僕をいじめるんだもん」「それは気のせいよ。そのうちにママが先生によく伺ってみます。学校へお行き」

「嫌だ。行くぐらいだったら死ぬ」「久男。わがまま言うんじゃありません」泣きながら学校に向う久男。「病気になりたいなあ。怪我もいいな。そうすれば学校に行かなくてすむ。ノロノロ走っている車にぶつかってやれ」しかし車は急に走り出し、久男は大怪我をする。病院に電話する村正。「久男という子の容態は」「重体です。足を全部、それに右手を切断しなければなりませんな」

ショックを受けた村正はブラックジャックに電話する。「うちの生徒が事故で手足を切られそうなんです。切らないで治していただけるのは先生だけ、と聞きました。先生、お願いします」「私にどうしろと言うんです」「早く病院に行って手術してください」「私は慈善事業家じゃないんだぞ」「わかった。手術代をいくらお払いすればいいんです」「まあ1000万円ですな」「わ、わかりました。一生かかっても金は作ります」「いや。一度に払ってもらう」

村正は久男の母親から事情を聞く。「こんな話はしたくないんですけど。この子が学校がいや、特に先生が恐ろしいと申してまして」「車の運転手の話では、子供のほうから飛び込んできたそうです」「先生。うちの子はわざと」村正は車にひかれる。虫の息でブラックジャックに話し掛ける村正。

「ブラックジャック先生。僕が死んだら生命保険が1000万おりますから」「あんたは死にやしない。生命保険なんかとれないぞ。なぜなら私が治してやるからだ」ブラックジャックは2人を完璧に手術する。「ブラックジャック先生。どうして2人を同じ病室に」「フフフ。結構うまくいっているようですよ」村正は久男に話し掛ける。「25の2倍から15の2倍を引いたものはいくつだ」