福本伸行「賭博破戒録カイジ・地下チンチロ編(8)」 | ロロモ文庫

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監視

当然だ、と思うカイジ。(沼川には青天井の親は受けられない。なぜなら、奴らが用意している戦術が有効なのは、2番目まで。座った位置で言うなら。石和と班長まで。3番目の沼川はもうあの戦術は使えない)沼川の親は終わり、次の親になるが、みんなスルーする。騒ぐ沼川。「見ろ。青天井だの限定解除だの言われたら、誰だって親なんか受け入れないんだよ。オレに限ったことじゃねえ。それをなんだ、偉そうに」「……」

「受けろよ。お前は受けろよ、親を」重々しく言う大槻。「受けるしかあるまい。アレだけの口を利いた以上」カイジが青天井の勝負を申しこんだことを知った連中が賭場の周りを取り囲み、カイジをあおる。しかし、カイジは親をスルーする。「ええ。それはないだろう。カイジくん」「そうだ」「そうだ」「受けろ」「受けろ」

やかましい、と怒鳴るカイジ。「オレの有り金はこれっぽっち。こんなんで、どうやって青天井の親を受けろというんだ。考えてみろ。流れもわからねえ第一投だぞ。どうしても受けろって言うなら、まず班長の方が先だ。奴らの方がはるかに金を持っているんだから」

「ちょっと待て、カイジ君。わしらが受ければ、カイジ君も親を受けるってことだな。逃げ回らず」「まあな」「聞いたか。皆の衆。わしらが受ければ、カイジ君は親を受けるそうだ。青天井の親を」「よっしゃあ」「いいぞ。カイジ」一気に盛り上がる賭場。石田はあきれる。(バカだ。そんな約束、取り持たれてどうするんだよ。圧倒的資金を持つ班長相手に青天井の親なんて、わざわざ潰されにいくようなもの。流されてる。この熱気に)

親は班長側の石和になる。「さあ、オレは受けるぞ。逃げも隠れもせん。青天井だ。来い、カイジ。班長を倒す前に、オレを倒してみろ」

 

弱者

一気に盛り上がる賭場。しかしカイジの張ったのは2万ペリカだった。「ええ」「青天井だろ」「もっと行け」「ギャラリーの言うとおりだ。カイジ君、2万は制限内だろ。せっかくその目障りな枠をとっぱらい、無限に積んでいい青天井にしたんだ」しかしカイジは動かない。舌打ちする石和。「なんだよ。ずいぶん慎重なんだな。面白くねえ」そして石和の第一投。「ぐっ」「ハハハハ」

石和はいきなりシゴロを出す。カイジは念をこめてサイをふる。しかしサイは2、6、6で2の目。ぐう、とうなるカイジ。高笑いする大槻。(なんだ、なんだ。ずいぶんムキになっとるから、なんか妙手でもあるのかとおもったら、まるでなし。空手かい。バカめ。歯を食いしばって投げることで目が出るっていうなら、誰が苦労する。お人よしめ。死ね。全部、吐き出して)

 

奔流

カイジは緒戦は最悪の倍払いになる。勝ち誇る大槻。「どうした、カイジ君。一つ負けたくらいで、そのしょげた面は。そんな不景気面じゃ、ツキは呼び込めんぞ。あー。だいたい2万なんて多く張ってんだか小さく張ってんだかよくわからん玉虫色の張りがいかん。博打の神様はの、潔い男っぷりと大金を愛しておる。そんなどっちつかずの半端金だから、神様に嫌われたのだ。どーんと来んかい。どーんと」

石和の二回目の親。「受けるぞ。青天井で」しかし、カイジの張りは1000で、ギャラリーをがっかりさせる。そして石和の目は3で、カイジの目は4で、カイジの勝ち。「ハハハ」「ククク」「ぐっ」カイジこれで1勝1敗。しかし実質はマイナス3万9000。それを見て一気にギャラリーの熱は引く。「なんだ」「期待はずれもいいとこ」「寝よう」終わった、と思う石田。(この行き違いは決定的。おそらく今日はこのあといくらやっても終わり。負ける。決着がついたんだ)

カイジの負けを見て、ざわつく45組。「三好」「大丈夫」「でも」「忘れたのか。この展開は勝負前にカイジさんが言っていた通り」

勝負前にカイジは45組の連中に言っていた。「初めにみんなに言っておく。心配しないように。まず初っ端、みんなを待機刺せて、俺だけ勝負に行くが、その初戦、オレはあえて負けようと思う」「え」「それも大敗。きっちり負ける。2万か4万」「はあ」「だから、そうなってもオタオタしないでもらいたい。それは予定通りの事態が起こっただけ。むしろ、いい兆候だ。そして2戦目は逆に少し勝つかもしれない」「勝つ。どうしてそんなことが」

「奴らのカラクリを考えると、2戦目は勝ちを拾えそう、ということ。もっとも2戦目は小勝ちになる。大敗小勝ちとかやらかすと、いかにもノーセンスって感じだが、実はそうじゃない。これは本流だ。俺たちを勝ちへと運ぶ列車。その車輪が載る。俺たちを勝ちに導くレールに」

(そう)と意を強くする三好。(問題ないんだ。ここまでは問題ない。ここまでは予定通り)

 

呼応

しらけた、とつぶやく大槻。「わしの親番だが、もう仕舞いにしよう。我々とカイジ君の勝負は仕舞い。カイジ、お前抜けろ」「え」「たいした勝負はしないお前はもう邪魔。そんな辛気臭い顔でいつまでも居座られたら、この場の空気まで落ち込むわ。ろくに張らんお前に用はないんじゃ」「張るさ」「あ」カイジは有り金全部の5万2000ペリカ全額を張る。蒼ざめる大槻。「てめえ、冗談じゃすまねんだぞ。一度出した金は」「もちろんだ」

そしてカイジは45組を呼ぶ。「もう一度確認する。あんたのこれからやる2回の親は、隣の石和と同じように青天井でいいんだな」「何を今更」「よし」45組は有り金の9万1000ペリカ全額を張る。「全部だ。オレの手持ちと5人分。計50万7000の張り」再び盛り上がるギャラリー。「やりやがった」「大勝負だ」「いいぞ、カイジ」「行け」ますます蒼ざめる大槻。(こいつ。企んでやがるのか、何か)