福本伸行「賭博破戒録カイジ・地下チンチロ編(6)」 | ロロモ文庫

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逼迫

ざわつく45組。「勝つ?俺たちが?どうやって?」カイジは一度だけ奇跡を見せるという。「班長にはちょっとした癖があるのさ。場が沸騰してまさに今、ここぞって時、勝負強くなる癖が」「はあ」「感じたことはないか。やってて、そのあたりのこと」「まあ、確かにそれは」賭場の様子をうかがうカイジ。「頃合だな。いいか。一度だけだ。ここで班長の目を言い当てる」「え」「シゴロ」

そして大槻の目はカイジの予言通りシゴロであった。「うぐぐぐ。ってことは、イカサマか」「待て。誰がそんなことを言った」「え。違うのか」「違う。そんなことで、済ましちゃいけないんだ。合法だ。これは合法。ただ、このチンチロは俺たちに説明してないルールがあった。ゆえに、特別に強運なのさ、班長は」「……」「しかし、その強運には致命的なキズがある。よって一度だけ。本当に一回こっきりだが奇襲ができる」

「どうだ」「う」「どうよ」「ぐ」「これを利用せずしてどうする。今攻めなくてどうする。これはさんざ利用され続けてきた俺たちに千載一遇。最初にして最後のチャンス。今ここで立たなかったら、俺たちは生涯奴隷だ」カイジは全員の金をかき集める。「合計6万。これから3ヶ月。この金で凌ぐ」「凌ぐ?」「そうだ。これから3ヶ月、このわずかな金で6人の遊興費総てをまかなう。酒は禁止、タバコは一日一本、無論博打などもってのほか」「……」

「そして3ヶ月凌ぐ。そして前借り生活をクリアして、正規の給料9万をもらったら、その9万で班長を殺る。小銭じゃ班長を殺せない。MAXでぶつかるんだ。俺たちがなしえる最高のMAXで。さあ、もういい加減勝とうじゃないか。重ねろ。この奇襲。最終戦略に乗るものは、オレの手の上に手を」

 

団結

カイジたち45組は団結を誓う。「ずーっとこんな日を待っていた。グータラしてその日暮らしをしていたけれど、実は待っていた。こんな努力する契機を。立ち上がりたかった」「立ち上がろう。前田さん」45組結束。基本的に金はカイジが管理。タバコは前田が管理。甘いものは三好が管理。博打・酒は御法度。そして、ただ耐える。班長グループはそんなカイジたちを冷笑する。「なんや、連中企んでますね。多分結束してクリアーする気ですよ。給料前借り生活を」「ククク。続かない。続かない」

もうへこれたれない、と決意するカイジ。(これは、打倒班長とか、そういう問題だけでなく、生き死にの問題だ。さっさとケリをつけて外へ出ていかなければ、いつかは体をやられ働けなくなり、死を待つような日々が来る。それは明らかだ)カイジは船で世話になったという男が会いたがっていると聞く。(船?エスポワール?)

 

父子

カイジは眼鏡の若い男と会う。「カイジさんだろ?エスポワールの生き残り組の」「そうだけど」「話がしたいと思ってた。オレは石田広光。あんたに船で世話になった石田光司。その息子だ」「あ。そういえば面影がある。こんな大きな息子さんがいたんだ。へえ」「笑ったな」「え」「バカにしただろ。親子揃って落ちぶれてやがる、と」「何言い出すんだ」「いいさ。俺だっておかしくてしょうがねえ。風体どころか、そのダメさ加減までそっくり」

ボロボロ泣き出す石田。「あれほど、親父のようには、なりたくなかったのに。小心で酒飲みでダラシなくて貧乏で。なんの取りえもないクズ野郎。ヤツがしっかりしていれば、オレがこんなところに堕ちることはなかったんだ」「肩代わりか。親父さんの借金を」「馬鹿な。なぜオレがそんなことを。借金はオレの博打とか。いろいろ」「だったら、ここに堕ちたのはお前の責任じゃないの。どう考えても」

「違う。わかってない。俺の借金は300万。それくらいの金なら払うだろう。親なら。なのにヤツときたら、オレが頼んでも泣きそうな顔するだけで何もできない。しばらくして、なんとかすると出て行ってそれっきり。オレの300ばかりか、自分の150の借金もほったらかし」「それって、いつ」「船から戻ってしばらくだから、昨年の7月くらいだよ」

(そうか。やっぱり石田さんはあの橋で。あの時石田さんは、懸命に清算しようとしていた。なんとかしたかった。自分の借金。そして息子の借金を)なおもくだくだ親父の悪口を言う石田をぶん殴るカイジ。「馬鹿野郎。お前さんが親父さんとそっくりだと。笑わせるな。まるで違うじゃないか。お前は何でもかんでも他人のせいにするクズ。親父さんはそんな人間じゃない。受け入れていた。自分の弱さ、ダメさ加減を全部受け入れて闘っていたんだ。ふざけるな」

 

発止

憮然とする石田。(親父はあいつを大物といってたが、どこが大物だ。ヤツはただイライラしているだけの小物。親父はあいつはどんな絶望的状況でもあきらめないと言った。けっ、そのあきらめないというのがダメ。ここまで堕ちたら、それはもう長所でない。寿命を縮める悪癖)

石田は疲労がたまると仮病をすることが彼の凌ぎ方であった。(そうさ。ここまで堕ちたら変にジタバタせず、さっさと諦めたほうがいい。無理は禁物。オレのほうがはるかに賢明だ)

(聞けば、ヤツは45組といわれるE班の借金組で、その借金を無理に返そうと仲間で頑張っているとか。何それ。大バカじゃん。45組に堕ちたのがバカなら、その仲間を集って借金を一気に返済しようってのもバカ。そんな真似をしたら金を貸しているE班班長の気分を害するのは必至。ここで上に目をつけられてどうする。その点、オレは適当に上にゴマをすってるから、仮病も大目に見てくれる。こう生きなくてどうする)

カイジたちはシャワーを二度浴びている間に食事がないと石和に言われる。「ここの規則で所定の時間内に着席しなかったものは、食事を出せないことになっているんだ」(わかっていること)と毒づく石田。(上はその気になれば、なんだってできるんだ)

石和は大槻に報告する。「奴らが食事の時間に連れてきまして」「それはいかんともしがたいな。規則だからな。だが正規の食事はダメでも、わしらの特注料理ならかまわないんじゃないかな。どうだね、カイジくん。ここはひとつ我々と一緒に」

ざわつく一同。「なるほど。班長の見て見ぬふりもここまでってわけか。贅沢をもう一度味合わせて、倹約節制の糸を切ろうって魂胆」カイジを座らせる大槻。「どうだ。ビールもずいぶんやってないだろう」「金なんかねえぜ」「何を言う。金なんか取るもんか。これは100%善意のビールだ。最近カイジくん、ちょっとおかしかっただろう。わしはそんなカイジくんとただ仲直りしたいだけ」「好きにしていいのか。このビール」「もちろんだ」

カイジはビールを大槻にぶっかける。「遠慮なく好きにさせてもらったぜ」色めく石和。「待て。ただで済むと思ってんのか」