このワーゲンバスを買う前に、知っておいてほしいこと。16年間付き合った家族としての本音。 | ロックベーシスト 西本圭介

ロックベーシスト 西本圭介

テクニカルベーシストとしてベース・マガジンでも紹介 / ディープ・パープルのグレン・ヒューズ達と共にヨーロッパ11カ国を周り、また巨匠ビリー・シーンと共にKoRnのドラマー[レイ・ルジアー]のリズム隊として登場。

 


 

現在販売しているワーゲンバスについて、今日は少し長くなりますが、購入を検討されている方へ僕の本音を書いておこうと思います。

このブログから知ってくださった方。
ホームページの販売ページをご覧になった方。
ヤフオクなど、別の場所で見つけて来られた方。

いろいろな経路があると思います。

販売ページには車両情報をまとめていますが、それだけでは伝わりにくい「実際にこの車と暮らす感覚」があります。

商談の前に、そこを知っておいていただきたい。

当日、お互いの時間を使ってお会いする前に、僕が何を考えて手放そうとしているのか、そして、どんな状態の車なのかを書いておきます。


■ お互いの時間を大切にしたいので

個人売買をしていると、いろいろな方と出会います。

お問い合わせに丁寧に回答しても、その後は返信がない。
「今回は見送ります」の一言もない。

別のバイクの取引では、約束した当日に来られなかったこともありました。
 

反対に、現車を見て「買います」と、現金まで用意してくださった方もいます。

ただ、そのときは僕から、

「数日置いて、本当に維持していけるか、もう一度考えてみてください」

とお伝えしました。結果として、その方は購入を見送られました。
 

僕は、それでよかったと思っています。
 

その場の勢いで買って、あとから困ってほしくないからです。
 

購入を見送ること自体は、まったく問題ありません。ただ、やり取りをしたのであれば、最後に一言お返事をいただきたい。それだけです。

今回の文章も、購入希望者を試したり、追い返したりするためのものではありません。

「思っていた車と違った」を、できるだけ減らすために書いています。


■ 聖子が16年間、仕事の相棒にしていたバス

このバスは、2026年6月に不慮の事故で亡くなった妻・聖子(きよこ)が、16年間、たこ焼きの移動販売車として使ってきました。

移動販売のない日は、自宅前で固定店舗として営業。



週末や祝日は、出店先へ走らせる。

眺めて楽しむだけの車ではなく、日々の仕事を支える車でした。
 

そして、この16年間に、さまざまなトラブルと修理を経験しています。

今年の初めにも、クラッチまわりの内部部品が欠けるトラブルがありました。

必要な部品だけを単品で入手できず、ネットを駆使してミッションを探し回ることに。

最終的には、山口県の愛好家の方から中古のミッションを譲っていただき、修理につなげることができました。

ただ、型番が違えば内部の部品も違うかもしれない。買えば必ず使えると分かっていたわけではなく、ある意味、賭けでもありました。

聖子が築いてきた人とのつながりにも、助けられたと思います。

こうした、部品を探すところから始まる修理は、一度や二度ではありませんでした。
 


■ 車両代金を払えば終わり、ではありません

正直な話、一般的な国産のケータリングカーで営業していたら、もっと利益が残ったのではないかと思うくらい、修理にはお金をかけてきました。

聖子には、

「ワーゲンバスで、たこ焼き屋をやりたい」
 

という、はっきりした思いがありました。

仕事に必要だったことに加え、この車でやること自体に意味があった。だから、お金がかかっても修理を続けてきたのだと思います。

購入を検討されている方に、まずお伝えしたいのはここです。

買えることと、維持していけることは別です。

購入代金とは別に、整備や修理へ使うお金が必要になります。

部品を探す時間。
修理をお願いできる相手。
車が使えない期間への備え。

そういうことまで含めて、所有する車だと僕は感じています。


■ 思い出がある。それでも手放すことを考える理由

「聖子さんの思い出の車だから、残しておいたら」


16年前の納車の日
 

そう言ってくださる方もいます。

その気持ちはありがたいです。もちろん、僕にとっても大切な車です。
 

ただ、思い出があることと、これから維持し続けることは、僕の中では別の問題です。
 

妻を亡くしてから、これまでのように単身赴任を続けることが難しくなり、現在は休職しています。

自分一人の生活を続けていくことと、趣味のビンテージカーに継続してお金や時間をかけること。
その両方を、今の僕が同じように引き受けられるかというと、そうではありません。


余暇に乗って楽しむことはできます。

でも、これから先も修理やメンテナンスに費用をかけて維持し続ける。その覚悟や気持ちが、今の僕には十分にありません。

思い出を大切に思うからこそ、持ち続けるという約束を、自分に無理にさせたくないのです。


■ 僕の「快調」と、あなたの「快調」は違うかもしれない

現在、僕が趣味で乗っている範囲では、快調に走っています。

先日も往復約150kmのツーリングに出かけました。

走らない車を、調子が良いように見せて売ろうとしているわけではありません。

ただし、ここが難しいところです。

僕にとっての「快調」は、現代の車と同じ快適さや安心感を意味しません。

ヒーターは、あまり効きません。
外気の取り込みも、「こんな感じなのかな」と思いながら使っています。

サスペンションは、現代の車のように心地よくありません。ゴツゴツしています。

ハンドルは重い。
クラッチペダルは遠く感じる。
ブレーキの操作も重く感じる。
 

走れば、車内からガタガタ、ギシギシと音もします。
 

僕が慣れているからといって、それらがすべて正常だとか、点検や整備が不要だと言い切るつもりはありません。

僕が許容して乗っている状態を、買う方も同じように許容できるとは限らない。

だからこそ、現車を見て、操作感や状態を確かめていただきたいと思っています。


■ 写真の雰囲気だけで来ると、「くたびれとるな」と思うはず

ワーゲンバスは、写真になると雰囲気があります。

でも、この車はピカピカのフルレストア車ではありません。

外装には錆があり、腐食による穴も複数あります。
車内にも、錆で外が見えている部分があります。

塗装はクリアー層が失われてマットになっているところと、艶が残っているところが混在しています。

雨漏りする箇所もあります。僕としては、本格的に手を入れるなら、ゴム類も一通り交換を検討したいところです。
 


〈写真説明:ステップ周辺や車体下部の傷み。雰囲気だけではなく、こうした箇所も見て判断していただきたいです。〉
 

室内のマット類も、欠品していたり、傷んでいたりします。
キャンピングシートにも穴や破れがあります。

カーステレオのリアスピーカーも鳴りません。スピーカー自体の不具合なのか、途中の配線なのか、原因は確認できていません。

きれいに仕上がったキャンパーを想像して見に来られたら、

「思ったより、くたびれとるな」

と感じると思います。

僕は自分の車として、

「ここは、そのうち直そう」
「必要になったら交換部品を探そう」

という付き合い方をしてきました。

でも、買う方からすれば、「購入時には直っていてほしい」と思うかもしれません。

その違いは、商談前に知っておいていただきたいです。
 


〈写真説明:キャンパーの座席や収納を戻していますが、内装も補修を楽しめる状態、と捉えていただいたほうが近いと思います。〉


■ 鍵だけでも、「何本あるん?」という状態です

細かいところも書いておきます。

鍵は、一本ですべて済む状態ではありません。

  • 右側ドア: 専用の別の鍵です。施錠できますが、ときどき鍵で開けられなくなります。

  • 左側のフロントドア: 鍵での開閉は、現在問題ありません。

  • スライドドア: 手元の鍵では開閉できないため、内側からロックしています。

  • リアハッチ: 左側フロントドアと同じ鍵で開閉できます。

  • エンジンフード: 鍵は使えない状態です。

  • イグニッション: 始動用の鍵は別です。

「何本鍵があるん?」

という感じで、不便です。

僕は慣れてしまっていますが、気になる方なら、まず整理して直したくなる部分でしょう。

こういう小さな不便も、実際に所有すると毎日の付き合いになります。


■ ウォッシャーは、かなりアナログです

ウインドウォッシャーにも手が必要です。

もともとは予備タイヤの空気圧を利用して噴射する仕組みでしたが、その機構が壊れていたため、元のタンクは外しています。

現在はシャンプーボトルにウォッシャー液を入れ、手でポンプを押して液を出す、かなりアナログな対応をしています。

通常のウォッシャー機構としては、作動しない状態です。

僕は使用頻度が低く、そのままにしてきました。

汎用の電動式に替えようかな、と考えたこともありますが、まだ手をつけていません。

これも、「僕があまり使わないから、そのままにしていること」と「次のオーナーにとって問題がないこと」は別です。

必要な機能として、補修を考えていただきたい部分です。


■ ここに書いたことが、すべてではありません

分かっていることは、できるだけお伝えしたいと思っています。

ただ、ここに書ききれないこともあります。

僕が慣れてしまい、気に留めなくなっていること。
買う方なら、すぐに気づくこと。
点検や分解をして初めて分かること。

そうしたものもあると思います。

この文章は、車両の状態をすべて網羅した点検報告書ではありません。


 

外装、内装、ゴム類、電装、鍵、雨漏りなど、本当にこだわって直し始めれば、やることはいくらでもあります。

錆の処理や板金をして、全塗装すれば、見違えるようになるでしょう。

ただ、僕がそこまで仕上げれば、販売価格にも反映せざるを得ません。

どこまで直すか。
どんな色にするか。
どんな使い方に合わせて仕上げるか。

その部分は、次のオーナーさんに委ねたいと思っています。


■ この車と付き合いやすいのは、どんな方だろう

僕が思い浮かべるのは、大きく二つの付き合い方です。

必要な予算を確保して、専門店と相談しながら板金や整備を進めていく方。

そして、

直していく過程そのものを趣味として、時間をかけて付き合える方。

後者の場合も、すべてを自分で直す必要はありません。安全に関わる部分などは専門家に頼みながら、自分でできるところを少しずつ進めていく形もあると思います。

反対に、

「購入代金を払えば、あとは普通の車と同じように使える」
「修理に大きなお金はかけたくない」
「不具合や不便は、できるだけないほうがいい」

という方には、この個体は合わないと思います。

「かわいいから欲しい」の、その先まで考えていただきたいのです。


〈写真説明:手を入れながら、自分の一台にしていく。その時間を楽しめる方に引き継いでいただけたらと思います。〉
 


■ この一台で、毎日の生活を全部こなすことは勧めません

聖子が亡くなってから、僕自身が乗る時間も増えました。

近所の買い物や、時間に余裕のある趣味のドライブなら、この一台でも何とかなるかもしれない。そう感じることはあります。

ただ、購入される方に、

「これ一台を、生活に欠かせない唯一の車にしてください」

とは勧めません。

修理で乗れなくなったときに、別の移動手段がある。その余裕は持っておいてほしいと思います。

そして、今の僕がこのバスで300km先の街へ行きたいかと聞かれたら、答えは「いいえ」です。

怖いし、疲れるし、燃費も気になります。

往復150kmのツーリングを楽しめたことと、いつでも長距離移動を任せたいと思えることは、僕の中では別です。

これは、この車が必ず300km走れないという意味ではありません。

今の僕が、この車に任せたい使い方の範囲の話です。

長距離を自走して帰ることを考えている方も、「普段乗っている車だから大丈夫」と決めつけず、現車確認のうえで、必要な点検や陸送を含めて引き取り方法を考えていただきたいと思います。


■ 納得して、次の時間を始めてくれる方へ

ここまで読むと、売りたいのか、売りたくないのか分からない文章かもしれません。

でも、僕としては、良いことだけを書いて引き渡すより、ずっと正直な説明だと思っています。

聖子が16年間、大切に使ってきた車です。

だからこそ、思い出に共感していただくだけで、購入を決めてほしくありません。

これから修理費を払うのも、整備の段取りをするのも、不便と付き合うのも、次のオーナーさんだからです。

僕たちの思い出とは別に、この車の現状を見て、ご自身の暮らしと予算で判断してください。

そのうえで、

「こういう状態なら、自分はこんなふうに直して楽しみたい」

と思ってくださる方と、お話しできればうれしいです。

原則として、対面での下見をお願いします。

状態を見て、説明を聞いて、気になるところを確かめる。その時間を経て、お互いが納得できるお取引にしたいと思っています。

見送られても構いません。

ただ、そのときは「今回は見送ります」と一言いただければ、それで十分です。

このバスとの次の時間を、無理なく引き受けてくださる方とのご縁を待っています。


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※記載内容は、執筆時点で所有者が把握している状態と、実際に使用した際の個人的な感想です。現在も使用や補修を行っているため、商談時には最新の状態をご説明します。