第4回 愛知県高等学校軽音楽コンテスト 感想とアドバイス | バイク馬鹿 ロックベーシスト 西本圭介

バイク馬鹿 ロックベーシスト 西本圭介

テクニカルベーシストとしてベース・マガジンでも紹介 / ディープ・パープルのグレン・ヒューズ達と共にヨーロッパ11カ国を周り、また巨匠ビリー・シーンと共にKoRnのドラマー[レイ・ルジアー]のリズム隊として登場。

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本日は第4回 愛知県高等学校軽音楽コンテストに名古屋スクールオブミュージック&ダンス専門学校/NSMの講師審査員として参加してきました。
 
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前回は昨年末の12/29に審査員参加しました。
今回で参加3回目になります。
 
出演リスト
 
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結果は公式ツイッターで御覧ください。
 
今回は26組のアーティストを審査しました。
実施中の写真はありませんが、全体を通して感じた感想を書きたいと思います。
 
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まず、前回に「今日はチューニング審査大会ですか!?」という毒舌混じりに講評したチューニングが甘いバンドが多かったという点については随分と良くなった印象はあります。
ただ、随分と良くなったという印象なだけでいぜんとして数組チューニングがバラバラだった組が見られました。
 
もし賞をとる気持ちであるならば、精度の良いチューナーを思い切って買いましょう。
クリップチューナーは本当に使えるのは数社だけです。
またチューニングが440Hz(ヘルツ)で合わせているかも全員で確認しましょう。
生ピアノと合わす場合は別のHz(ヘルツ)の場合もあるので確認しましょう。
 
あと、思いっきり半音くらいチューニングがずれているかポジションが間違って弾いていてもメンバー全員が全く気が付かない(と思われる)バンドもありました。
楽器は合奏しているときの音をお互いに聞いて良いか悪いかを判断してほしい。
タブ譜で覚えたものを信じ切って演奏しないこと。
 
もしもおかしければ、そのメンバーのとこに歩いていって演奏しながら指摘してあげましょう。
ステージ上ではコミュニケーションが重要です。
 
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チューニングがおかしいというトラブル防止には本番が始まる前の軽く音出しチェック(今回は前日サウンドチェックだった為)の時点で全員で何のコードを出してチェックするかを決めておけば、その時点でチューニングが狂っていることなどがわかります。
 
サウンドチェックで開放弦を6本ジャラーンと適当に鳴らしてチェックしている人が多かったけど、それで何がわかるのかい??って思った次第です。
 
ほぼ全部のバンドがサウンドチェック時の方法とか段取りを決めていなかったことが残念でした。
 
僕たちプロでも勘違いで半音下げとノーマルチューニングがセッションなどでは混在している場合があります。
それも、ステージに上がって軽く音出しを段取っておけば、「あれ??おかしいな」と気がつくものです。
僕も何度か半音下げとノーマルを間違ってステージに出た経験がありますが、それもサウンドチェック時の心構えしておけば気が付きます。
 
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次にアンプの音作りが未熟なバンドが多かった。
これはある意味で仕方ない部分もあります。
高校生で初ステージの子がマーシャルやアンペグのアンプを使いこなせていたら、プロの面目がありませんので、使いこなせていなくても仕方ないかもしれません。
 
ただ、せめてツインギターの場合は二台の音量差については決めておきたいものです。
リードなのにサイドギターよりも音量が小さいのは、いくらPAがプロでも処理しきれません。
 
なぜなら、PAさんというのはあくまでもステージ上でのバランスがアーティストの意図だと信じて増幅して出すからです。
このようなコンテストの場合はとくにPAさんが華美な音響的な装飾は施さないですし、ギター・ソロが小さいからといって気を利かせて上げてくれません。
 
それはPAさんのサービスが悪いわけではなくて、コンテストの場合はそういうコントロールを演者ができているかも審査をしているので、PAさんが華美に音量コントロールしたり加工しないものです。
PAさんがいる場合でも基本はステージ上で音をまとめることが必要です。
 
まずはドラムがキチンとならせていることを基準として、スネアの音に対してベースの音を決めていきます。
ドラムとベースがステージ上でバランスよく聞こえるようにベースの音量を調整します。
それに対してギターのアンプの音をジャンルにあわせて調整します。
ツインギターの場合は一旦は両方を同じ音量にしておいて、役割によってはリードギターを大きめに設定するか、エフェクターで必要時に持ち上げるようにしてください。
 
モニターにはできるだけ頼らないほうがよいです。
ボーカルやキーボードのようにアンプを使っていないパートは除きます。
 
できるだけドラムとベーアンとギターアンプの音量でステージ上でボーカリストがバランスよく聞こえている状態にします。
というか、昔はボーカル以外はドラムは生音とアンプで音を会場に飛ばしてライブをしていました。
今でも小さな箱ではそうです。
基本はステージ上の音だけで会場の人が気持ちよくサウンドがまとまっていることが大前提です。
それをサポートするために多少音をPAさんで足してくれているくらいに思うほうが良いですね。
 
もしもベーシストがドラマーの音が聞こえにくければ、自分の音量が過剰に大きくないか確認の上でドラムにまず近づいてください。
最終的にモニターに必要な音を返すことも必要ですが、誰かのモノマネで「ドラム三点と他の音も全部返してください」というのは、かえって自分の音がマスキングされて聞こえにくくなるだけです。
 
僕もまずは必要に応じて自分のベーアンから離れて聞きたい楽器に近づいて聞こえ方のバランスを取ります。
照明のシュートにより立ち位置を限定される場合もあるでしょうが、演奏優先で仕方ないこともあります。
 
そのような必要に応じて動くこともステージングとして視覚的に機能しますので、ステージングというのは、「踊れ!」という意味ではなくて、合奏するために必然として生まれたコミュニケーションをする為の手段だと初めは考えてほしいです。
 
ステージングの一つとしてエンディングは全員がドラマーに向いてアクセント(キメ)を合わせる。
またはボーカリストのアクションに全員がアイコンタクトしてキメを合わせる。
ギターソロとかドラムフィルがかっこよかったら、かっこよかったと振り返って微笑んであげる。
 
そういう当たり前のかっこよいじゃん!!という表情とかリアクションが合奏の醍醐味だと思います。
 
普通に生活していて友達同士で取るリアクションがステージ上でやれればベストです。
 
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次に選曲です。
コンテストだとやりやすい曲(難易度の低い曲)で合わせることは点数的な評価ではどうしても高くなる場合があります。
難易度の高い曲をやるとミスや技術的な甘さが露呈することもあるでしょう。
 
ただ、個人的には難易度の高い曲にチャレンジしてほしいです。
 
難易度ということについて、昨今の流行の楽曲のチョイスに対しては注意も必要です。
 
最近のプロ演奏では同期(コンピュータなどで奏者以外の音を流して合わせる)を駆使してパフォーマンスを成立させているバンドは少なくありません。
同期なしだと、なかなか聞くに堪えない演奏のプロだっています。
 
なので、最近の曲からのチョイスは注意しないと、どんなに頑張ってもスリーピースの奏者構成ではどうにもならないこともあるでしょう。
 
この話をするとおじさんが昔話をしていると感じるかもしれませんが、僕の青春時代である30年前には同期演奏のバンドなどほとんどいませんでした。
生身の人間がやれる演奏でしのぎを削っていました。
 
なので、僕たちが高校生の頃には例えばディープ・パープルのスモーク・オン・ザ・ウォーターが弾けないやつはステージに上がる資格はないみたいな、伝統とか風習があったことも事実です。
 
ある程度、バンドマンがクリアーすべきである定番曲というのがありました。
 
現在は趣味趣向が多様化し、ジャンルも細分化しすぎたこともあり、この曲が技術力アップに適しているというスタンダード(定番曲)がないように思います。
 
この話をし始めると、おっさんの小難しい説教になっていくと思うので、このあたりでやめておきますが、誤解を恐れずにいうならば、1970年代〜80年代。
まさにお父さん、お母さんが青春の頃の定番の洋楽をコピーするということは、今の時代だからこそ必要かもしれません。
 
なぜに洋楽かとよく聞かれますが、ジャンルの源泉(ルーツ)、アレンジの元祖という部分をたどるとやはり洋楽ということになってしまいます。
 
もちろん、80'sの邦楽にも洋楽を凌いで素晴らしい楽曲は多いですので、顧問の先生方においても、先生方の青春時代の定番曲に取り込ませるというチャレンジも必要かもしれません。
 
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軽音というクラブ活動を野球部やサッカー部のようなポジショニングにするという夢においては、部活の中での役割についても一考の余地があります。
 
演奏はしないけども、音楽に詳しくて耳の良い部員を誘致して、音響的な見地でアドバイスしたりサポートする部員も必要だと思います。
 
OBやOGがコーチとして参画して、ディレクションをしていくような縦のつながりも必要です。
 
また我々のような専門学校や大学さんの講師を有効に使って、定期的なレクチャーを受けることも必要かもしれません。
 
これは専門学校に進学してプロミュージシャンを目指しなさいという勧誘ではありません。
 
もしも、プロを目指すならば進路の一つとして選択してもらってもいいと思いますが、我が子ですら大学に進学して軽音に所属しているわけですので、必ずしもプロを目指して専門学校にいくことだけを推奨しません。
 
しかしながら、ある種、今回のような競争があるのであれば、将来の進路はいったんおいておいて、それなりの教育を受けることは大切だと思います。
 
僕自身はプロを育成することよりも、音楽、楽器演奏を通じて、豊かな人生になってほしいというのが最終目標(ミッション)だと思っています。
 
高校野球選手が全員プロを目指しているとは思いませんが、かといって、目標設定が低いわけではないでしょうし、可能性があるならばプロも視野に入れているほうが物事を打ち込むことに対しては健全といえるでしょう。
 
僕のような専門学校教員を是非理由してもらって、軽音のレベルアップをしてほしいというのが率直な思いです。
 
言いたいことはまだまだありますが、それは次にお会いするバンド君達に直接お話したいと思います。
 
まずは、結果が出た皆さんはおめでとうこざいました。
 
不本意な結果だと感じている皆さんは、逆に良いチャンスだと思います。
 
これを機会にして目標に到達できるように一緒に精進していきましょう。
 
そのためのサポートはできる限りしてあげたいと思います。
 
本当にお疲れ様でした。