尾川永次のブログ -307ページ目

尾川永次のブログ

小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

              スコットタント 3

頭と言っても正確には頭に乗せられた円錐状のガラスで出来た帽子のような
物の中にぶら下がっている星が光ったのだ。
ボーイと呼ばれていたその人形の身長は百二十センチほどで、三頭身の頭に
円錐形のガラスで出来た帽子をかぶり、手足は細く冷たい鉄の身体をゴムの
皮膚で覆いその上に洋服を着ていた。
ボーイは椅子から降りるとドアを開けて階段を上がり夕日に照らされた裏庭に
出た。
そして花々に溢れた裏庭を歩いていると早速声を掛けられた。
「ボーイ、さっき人達誰なの?」
「誰?誰?」
リスのチキとタキがボーイの周りをせわしなく走り回りながら言った。
「博士の娘さんだよ」
「一緒にいた太っちょの男は?」
「さあ。僕も初めて見る人だよ」
「ふーん、何だか意地悪そうな感じだったね」
「そうそう」
合いの手専門のタキが頷いていると羽根の生えた小さな妖精、メイルがボーイ
の肩にスーッと現れ顔を覗き込んだ。
「ボーイ、元気ないよ。どうしたの?」
「メイル、心配してくれてありがとう。でも大丈夫だよ」
「ホントに?」
ボーイはメイルに顔を向けてそっと微笑んで見せた。
そこへ狐のヘロンや兎のミック、ヤギのジョイが声を掛けてきた。
「ボーイ、歌ってよ」「ねえ何か歌って」
ボーイは立ち止まって頷くと静かに歌い出した。

「大きな大きな森の中。
 みんなみんな寝ているよ、静かに寝ているよ。
 まーるいまーるいお月様 みんなの寝顔観ているよ。
 小さな命も、大きな命も夢を観て寝ているよ。
 そよ風に 揺れる木々のざわめきと 川のせせらぎ子守唄。
 みんなで遊んでいるのかな。
 大きな大きな森の中、静かな静かな夢の中」

綺麗だけどどこか物悲しいメロディーの歌が終わると周りには沢山の動物や
精霊達が集まっていた。
「今日の歌は何だか寂しい感じだね」
「ねえもっと歌ってよ」
「ごめんね。僕はこれから博士とタントさんとお話してくるから今日はこれで
 おしまいだよ」
「それじゃしょうがないね。じゃね、ボーイ」
「ボーイまた歌ってね」
「また明日ね」
そう言いながら動物達も精霊達も夕闇が迫る森の中に消えて行った。
気が付くとメイルが肩に居た。
「メイルは?」
「ボーイと一緒に行く」
「僕達も行くよ」
下を観るとチキとタキがちょこまかと走り回っている。
「じゃ、一緒に行こう」
ボーイ達は静寂が訪れた花の中を庭の外れに向って歩き出した。

: ちょっとコーヒーブレーク :
この絵が主人公のスコットタントです。
これは私の教え子のウララさんが学生時代に描いたものです。
酒本幸平のブログ
いつかこれをムービーにしたいと思って話を作りはじめました。
どうなるかは自分でも分かりませんが私の何かを動かすのです。
突然途切れたりガラッと文体が変るかもしれませんがご容赦ください。
本当に行き当たりばったりなので・・・。



                  スコットタント  2

きしむドアを開けて二人が中に入ると閉じられたルーバータイプの

雨戸からこぼれる僅かな明かりでぼんやり部屋の中が見える。

ルイーズはその灯りを頼りに壁のスイッチを入れ電灯を点けた。

「ほう、こんな森の奥で電気が使えるとは」

「電気は側を流れてる川で作ってるみたいよ。何だか知らない

 けど研究をするのに使ってたみたいね」

「家財類はどうします?」

「全部そちらで処分してくれると助かるわ。高く売れそうなら

 上乗せしてよ」

「はいはい、分かっておりますよ

デックは部屋を見渡すと前もって渡されていた建物の見取り図に

眼を落とした。

「部屋は描いていただいた通りのようですな」

「そうそう、描いてなかったけど地下に部屋があるのよ。変な物が

 沢山置いてあるから研究室って言うの」

「あまり仲はお宜しくなかったようですな」

ここに来てからずっととげのある言い方を続けるルイーズに

デックは部屋の調度品を品定めしながら言った。

「私のせいじゃ無いわよ。父は母と弟が事故で亡くなってか」

 変っちゃてね」

「お気持ちは察するに余りある物がありますな」

「それは私も一緒よ」

そうでしたな」

ルイーズは暗い階段を手探りで降りるとドアを開けて地下室の

電気を点けた。そこには様々な実験道具が所狭しと並んでいる。

 

「何の研究をなされていたのですかな?」

「さあ、何も聞かされてはいないわ

沢山の機械の中、一際眼を引く物が有った。それは子供ほどの

大きさの人形が木の椅子に腰掛けていたからだ。

 

「これは・・人形ですか・・」
「こんなの初めて観るわね」

デックは人形の顔を指で押した。

「中は鉄で表面にゴムを被せているようですな」

「何か今にも動き出しそうで気味悪いわ。もういいでしょ、早く

 ここから出ましょう」ルイーズがそそくさと部屋を出ると電気を消したデックが後に続いた。

「ところで二階に居られる・・タントさんとおっしゃいましたっけ。

 お声を掛けなくて良いのですか?」

「いいのよ、どうせ出て行くんだから」

デックはやれやれといった顔で階段を上がって行く。

そして二人は外へ出ると振り返ることも無く元来た道へと消えた。


やがて二人の話し声が森の中に消えて館に静寂が訪れると、暗い地下の

研究室に置かれていた人形の頭が光出した。


かなり行き当たりばったりのお話なので、加筆、修正など多々あると
思いますがお暇なら読んでやって下さい。   

         スコットタント 1


  これはちょっとだけ昔のお話 です。


深い森をダークグレーの燕尾服を着て一時間も歩いて来た

五十過ぎのデックと言う名の男は額に汗して息を切らしていた。

  「ふー、この館ですか・・。話には聞いていましたが、かなり

 古いですね」

肩で息をしながらデックが見上げた先にはアイビーに覆われた

煉瓦造りの古びた館が建っていた。

館は長年の風雪に耐えたであろう傷みの激しい煉瓦に加えて

屋根瓦は所々が剥がれ落ち雑草も生えている。

そして館の周りには森の中と同様に半透明の色んなタイプの

精霊達が動き回っている。

「ほう、建物の周りにも精霊が多いのは珍しいですな」


「こんな森の奥に住むからよ。全く薄気味悪いわ。しっしっ」


同じくドレスを着て森を歩いて来た四十過ぎの細面の女が

怪訝そうな顔でドアの周りに居る精霊達を手で追い払うと

精霊達はスーッと消えた。

「何でも百年以上前に建てられた修道院だそうよ。二十年前に

 母親と弟が不慮の事故でが亡くなってから、父は廃屋だった

 この館を買い取ってここにこもりっきりでね」

不機嫌そうな顔で話す女の名前はルイーズ。この館に住んでいた
主の一人娘である。
 
「当時は偉大な発明家が姿を消したと世間の噂になって

 ましたよ」

「私が結婚して一人になってしまったせいもあるかもしれない

 けどね」

博士が亡くなられて三年ですか。早いものですな

「そう。遺言で亡くなってから三年は手を付けられなかったけど、

 やっと処分することが出来るわ」

  「でも、どなたかまだ居られるようで」  

デックは屋根の煙突から登る一筋の煙を見上げて言った。

  「父の世話をしていた執事のタントがいるけど一週間もすれば

 出て行くわ」

「タントとは変わった名前ですな」


「五年前に一度会ったけど何だか薄気味悪いお爺さんなのよ。

 本当の名前かどうかもわかりゃしないわ」

そう言いながらルイーズは錆び付いたドアノブを回した。

ルイーズは亡くなった館の主、ラウル・スコットの一人娘で、
一緒にいるデックは森の奥に建つこの館を売り出す為に付いて来た
不動産屋だった。