たんと 1 | 尾川永次のブログ

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小説、ポエム、旅日記などなど徒然なるままに行きたいと思っています

かなり行き当たりばったりのお話なので、加筆、修正など多々あると
思いますがお暇なら読んでやって下さい。   

         スコットタント 1


  これはちょっとだけ昔のお話 です。


深い森をダークグレーの燕尾服を着て一時間も歩いて来た

五十過ぎのデックと言う名の男は額に汗して息を切らしていた。

  「ふー、この館ですか・・。話には聞いていましたが、かなり

 古いですね」

肩で息をしながらデックが見上げた先にはアイビーに覆われた

煉瓦造りの古びた館が建っていた。

館は長年の風雪に耐えたであろう傷みの激しい煉瓦に加えて

屋根瓦は所々が剥がれ落ち雑草も生えている。

そして館の周りには森の中と同様に半透明の色んなタイプの

精霊達が動き回っている。

「ほう、建物の周りにも精霊が多いのは珍しいですな」


「こんな森の奥に住むからよ。全く薄気味悪いわ。しっしっ」


同じくドレスを着て森を歩いて来た四十過ぎの細面の女が

怪訝そうな顔でドアの周りに居る精霊達を手で追い払うと

精霊達はスーッと消えた。

「何でも百年以上前に建てられた修道院だそうよ。二十年前に

 母親と弟が不慮の事故でが亡くなってから、父は廃屋だった

 この館を買い取ってここにこもりっきりでね」

不機嫌そうな顔で話す女の名前はルイーズ。この館に住んでいた
主の一人娘である。
 
「当時は偉大な発明家が姿を消したと世間の噂になって

 ましたよ」

「私が結婚して一人になってしまったせいもあるかもしれない

 けどね」

博士が亡くなられて三年ですか。早いものですな

「そう。遺言で亡くなってから三年は手を付けられなかったけど、

 やっと処分することが出来るわ」

  「でも、どなたかまだ居られるようで」  

デックは屋根の煙突から登る一筋の煙を見上げて言った。

  「父の世話をしていた執事のタントがいるけど一週間もすれば

 出て行くわ」

「タントとは変わった名前ですな」


「五年前に一度会ったけど何だか薄気味悪いお爺さんなのよ。

 本当の名前かどうかもわかりゃしないわ」

そう言いながらルイーズは錆び付いたドアノブを回した。

ルイーズは亡くなった館の主、ラウル・スコットの一人娘で、
一緒にいるデックは森の奥に建つこの館を売り出す為に付いて来た
不動産屋だった。