きしむドアを開けて二人が中に入ると閉じられたルーバータイプの
雨戸からこぼれる僅かな明かりでぼんやり部屋の中が見える。
ルイーズはその灯りを頼りに壁のスイッチを入れ電灯を点けた。
「ほう、こんな森の奥で電気が使えるとは」
「電気は側を流れてる川で作ってるみたいよ。何だか知らない
けど研究をするのに使ってたみたいね」
「家財類はどうします?」
「全部そちらで処分してくれると助かるわ。高く売れそうなら
上乗せしてよ」
「はいはい、分かっておりますよ」
デックは部屋を見渡すと前もって渡されていた建物の見取り図に
眼を落とした。
「部屋は描いていただいた通りのようですな」
「そうそう、描いてなかったけど地下に部屋があるのよ。変な物が
沢山置いてあるから研究室って言うの」
「あまり仲はお宜しくなかったようですな」
ここに来てからずっととげのある言い方を続けるルイーズに
デックは部屋の調度品を品定めしながら言った。
「私のせいじゃ無いわよ。父は母と弟が事故で亡くなってか」
変っちゃてね」
「お気持ちは察するに余りある物がありますな」
「それは私も一緒よ」
「そうでしたな」
ルイーズは暗い階段を手探りで降りるとドアを開けて地下室の
電気を点けた。そこには様々な実験道具が所狭しと並んでいる。「何の研究をなされていたのですかな?」
「さあ、何も聞かされてはいないわ」
沢山の機械の中、一際眼を引く物が有った。それは子供ほどの
大きさの人形が木の椅子に腰掛けていたからだ。「これは・・人形ですか・・」
「こんなの初めて観るわね」
デックは人形の顔を指で押した。
「中は鉄で表面にゴムを被せているようですな」
ここから出ましょう」ルイーズがそそくさと部屋を出ると電気を消したデックが後に続いた。
「ところで二階に居られる・・タントさんとおっしゃいましたっけ。
お声を掛けなくて良いのですか?」
「いいのよ、どうせ出て行くんだから」
デックはやれやれといった顔で階段を上がって行く。
そして二人は外へ出ると振り返ることも無く元来た道へと消えた。
やがて二人の話し声が森の中に消えて館に静寂が訪れると、暗い地下の
研究室に置かれていた人形の頭が光出した。