山本周五郎「樅ノ木は残った」感想 | リタイアライフのつぶやき

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65才でサラリーマン生活からリタイア。さて、これから何をしていこうか。ブログでつぶやきながら日常生活を報告。参考になれば幸いです。

やはり山本周五郎といえば、「樅ノ木は残った」です。これも、青空文庫で読めますが、この度、注釈付きで図版付がでましたので新装版でよみました。

 

本の裏の解説に次の事が書かれています。以下ネタバレにご注意願います。

(上)

「仙台藩主・伊達綱宗は幕府から逼塞を命じられた。放蕩に身を持ち崩したからだという。明くる夜、藩士四名が「上意討」の名の下に次々と斬殺される。疑心暗鬼に陥り混乱を来す藩政に乗じて権勢を増す、仙台藩主一族・伊達兵部と幕府老中・酒井雅楽頭。その謀略を見抜いた宿老の原田甲斐はただひとり、藩を守る決意をする。」とあります。

(中)

「幕府老中・酒井雅楽頭と伊達兵部とのあいだの六十二万石分与の密約。それが、伊達藩に内紛をひきおこし、藩内の乱れを理由に大藩を取り潰そうという幕府の罠であることを見抜いた原田甲斐は、藩内の悪評をも恐れず、兵部の懐に入りこむ。そして、江戸と国許につぎつぎひき起こされる陰謀奸策、幼君毒殺の計略をも未然に防ぎ、風前の灯となった伊達家安泰のため、ひたすら忍従を装う。」

(下)

「著者は、「伊達騒動」の中心人物として極悪人の烙印を押されてきた原田甲斐に対する従来の解釈をしりぞけ、幕府の大藩取り潰し計画に一身でたちむかった甲斐の、味方をも欺き、悪評にもめげず敢然と闘い抜く姿を感動的に描き出す。雄大な構想と斬新な歴史観のもとに旧来の評価を劇的に一変させ、孤独に耐えて行動する原田甲斐の人間味あふれる肖像を刻み上げた周五郎文学の代表作。」とあります。

本を読み始めて思ったのは、登場人物が多く、整理していかないと訳がわからなくなります。

しかも、一人の名前に対し、色々言いますのでますます訳がわからなくなります。例えば、茂庭周防定元で松山館主の場合、茂庭と言ったり、周防と言ったり、松山と呼んだりします。

幸い本には、主要登場人物一覧があり、人物のコメントがあり助かりました。また難しい言葉も沢山出てくるので注解を見て進んでいきました。そういう面では、読むのに時間がかかりましたが、内容が面白く興味を持って読んでいきました。やはり、主人公の原田甲斐が素晴らしい人間なのです。人柄がよく、人望も厚く、面倒見もよいため周りに人が集まり、敵を作らないのです。話は、老中酒井雅楽頭と伊達兵部少輔宗勝とが結託して仙台62万石を横領する計画で、内紛を起こし、藩士が死んでいきます。内紛に対する江戸幕府の沙汰は、仙台藩主・伊達綱宗の子亀千代(幼児)をもって相続とし、後見役として、兵部少輔宗勝、田村右京宗良の両人としました。

伊達兵部は、分与の為に様々な陰謀を張り巡らすが、それが伊達家取り潰しの口実になるとは思ってもいない。それに対し周防と安芸と原田で兵部へ対抗します。特に、原田甲斐は、味方をも欺いて、あくまでも目的を貫く男となります。人間、本音をはかないで生きていくのはどれほどつらいのかが伝わってきます。

故松平信綱が計画し酒井雅楽頭がその計画のあとを継ぐという。それは、伊達家を改易して、次に加賀、薩摩にも手をかけるという事でした。伊達兵部が内紛を起こしても、原田甲斐は、大事にならないようよう耐え忍びます。しかし、兵部の一派は、他の伊達氏一門と激しく対立し、ついに幕府への上訴という事態に発展していきます。伊達藩(安芸、外記、志摩、甲斐の4名参加)の評定の日、評定の前に、公儀の秘事を暴いたということで幕府により4名が討ち取られ、原田甲斐は、殺されます。自分は、本を読んでいく途中、どうなるかわからず最後のシーンでは、まさかこんなことになるとは想像もしていなかったので胸が張り裂けそうになりました。

幕府側(酒井雅楽頭)に伊達藩4名が討たれた時、原田甲斐が息を引き取る前に安芸の刀を抜き取り自ら仲間を殺したと訴えるのです。(原田甲斐一人が殺害の罪を被る)

結果は、原田甲斐の乱心とされ、お家断絶、子供6人は切腹となります。

伊達家の中には、原田甲斐の乱心を信じる人は、一人もいませんでした。

但し、仙台62万石が安泰で原田甲斐は、忠臣であるという事と甲斐が大好きな樅ノ木が残ったということであります。

この小説は、従来は悪人とされてきた原田甲斐を江戸幕府取り潰しから藩を守るために尽力した忠臣として描いています。

歴史小説作家の杉本苑子が歴史に埋もれた人を掘り起こすのが小説家の使命であると言った言葉を思い出しました。確かに司馬遼太郎の小説により、河合継之助、坂本龍馬、大村益次郎等を知ることができました。

今回も、原田甲斐という忠臣を知ることができうれしかったです。

この小説は、周五郎作品の中でも最も多く映像・舞台化されています。

NHK大河ドラマ

 

最後までご覧になりありがとうございます。

 

 

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