山本周五郎「ちくしょう谷」感想 | リタイアライフのつぶやき

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65才でサラリーマン生活からリタイア。さて、これから何をしていこうか。ブログでつぶやきながら日常生活を報告。参考になれば幸いです。

最近の読書は、ほとんど山本周五郎です。一度一人の作家に凝りだすと、続けて読まなければ気がすまないという困った性格です。一番最初は、「日本婦道記」で続いて「五辨の椿」「さぶ」「赤ひげ診療檀」

「雨あがる」「ひとごろし」「青べか物語」「ちいさこべ」「樅ノ木は残った」と感想文を書かせていただきました。大半が青空文庫です。

青空文庫とは、著作権が消滅した作品(著作者の死後50年経過後)や著者が許諾した作品のテキストを公開しているインターネット上の電子図書館です。スマホかパソコンで見ます。無料です。

今回は、「ちくしょう谷」です。山本周五郎の作品は、歴史物と人情物がありますが、今回は、人情物でもなく「罪を許す」のがテーマのような複雑な作品でした。新潮社の本の解説は以下の通りです。

「江戸へ剣術修業に赴いた朝田隼人は短気な一徹者だった。しかし、兄の決闘による死を聞き国許に戻った隼人は、なぜか慈愛に満ちた人柄に変っていた。

やがて彼は道場を辞し、流人村の木戸番頭を志願する。その村は「ちくしょう谷」と呼ばれ、住人は農耕を知らず、けもののように暮していた。

そして、木戸番には兄を殺した男がいた…。朝田隼人臼く、「ゆるすということはむずかしいが、もしゆるすとなったら限度はない」兄を謀殺された男のある決断を通して、「罪」と「ゆるし」に迫る問題作。」とあります。

兄を殺した男(西沢半四郎)は、流人村の木戸番をしていました。流人村とは、罪人を送り込む村で、木戸番を置いて誰も里に降りないように監視しており、その村は一般にはちくしょう谷と呼ばれていました。

その木戸番のトップに主人公の朝田隼人が希望して赴任います。

西沢は兄を殺し、妻子ありながら別の女を孕まし、500両を横領し、今度は、自分を殺そうとして失敗しました。こんな人間を、ここまでして救ってやる必要があるのかと私は思いますが、主人公は違うのです。

改心してこれから自首するという彼に兄の手紙を読ませ、「お前が自首して裁きを受けても兄は戻らぬ、自分は兄がお前が立ち直り生きていくのを望んでいるのでそうするだけだ」と主人公はいいます。あくまでも、兄の気持ちに立っているのです。

この小説は、確かに「罪」「許す」がテーマですが、物語としても先が読めずどうなるのかハラハラしながら読んでいきました。短編ですので1日でよめます。

それと、教訓のような文章がいいです。たとえば「人間のしたことは、善悪にかかわらずあらわれてくるもので、世の中のことは、長い目で見ていると不思議に公正に配分がたもたれている」とか「肝心なことは、事が失敗するか成功するかではなく、現にそれを実行していることが重要です。」になどがあります。

また、花、月、風といった風景描写が実に格調高く美しい文章が多いです。心地よくなります。

最後までご覧になりありがとうございます。

 

 

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