今月の8月3日に、作家阿川弘之氏が亡くなりました(94才)。
阿川弘之といえば、「雲の墓標」を思い出し、自宅の本棚をゴソゴソ。
買ったかどうか、記憶にはなく、半信半疑でしたが、ラッキーな事に
ありました。買ったのは20年以上前でした。
時期が時期だけに、興味がわいてきたため、再読しました。
内容で本の裏の解説は、以下の通りです。
「太平洋戦争末期、南方諸島の日本軍が次々に玉砕し、本土決戦が叫ばれていた頃、
海軍予備学生たちは特攻隊員として、空や海の果てに消えていった……。
一特攻学徒兵吉野次郎の日記の形をとり、大空に散った彼ら若人たちの、生への執着
と死の恐怖に身をもだえる真実の姿を描く。観念的イデオロギー的な従来の戦争小説
にはのぞむことのできなかったリアリティを持つ問題作。」とあります。
実際、作者の阿川弘之は、1942年9月海軍予備学生として海軍に入隊し、
この小説は、作者自身の体験に基づき、あるいは、友人の手紙によるものなのか
わかりませんが、事実をあらわしているとするならば、海軍の中ては、何かに
つけてなぐるシーンが多く、読んでいて、いじめの世界がいやになります。
海軍兵学校出身者が、主人公ら学徒出陣者を補助的存在として、いじめたり、
命を軽視したりします。
本の中で、この時代の政治家、軍人らが笑って死ぬことしか考えず、この国を
再建することを考えている人は誰もいないと言っています。
出撃命令が出た時、とうとうきたかという感じで、いつも明日死ぬといわれ
つづけたら、諦めの心境になるものです。
だれだも、死にたくないのだから、出撃命令の時は、硬直状態になります。
喜んで死に行く人間なんて一人もいません。
この本の終わりに、両親にあてた遺書があります。特攻隊として、死んで
いく両親との別れの手紙には、思わず泣けてしまいました。
いえる事は、2度とこんな時代はきてほしくないということでした。
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