考えても考えても自分の名前を思い出せない。どんなに考えてもだ!!

 仕方ない、とりあえず名前を思い出すのは諦めよう。

 と、思っていたら白い空間に突如テレビが現れた。

 レベルは32。(32型のことです。)

 シルバーの服を着ている。(シルバー色をしているということです。)

 こ、こいつは強い。倒せない。

 私はテレビに降伏して、テレビさんのご機嫌伺いをする。

「テレビさん、私は何をすればよろしいでしょうか?」

「とりあえず私の電源を入れて、どこかのチャンネルの番組を見てくれ。そうでもしないと、私は暇でたまらん」

 テレビさんに言われたとおりに電源を入れ、チャンネルを5に回した。

 刑事ドラマが放送されていた。私は1度も見たことがないが、噂によると面白いドラマらしい。

 出世に縁がなさそうな人が、

「暇か?」

と、高学歴のインテリ派と思われるメガネの人と、アウトドア派の好青年と思われる人に話しかけていた。

 それに対し、アウトドア派の好青年と思われる人は、

「暇だからここにいるんですよ!」

と、答えると、出世に縁がなさそうな人がバツの悪そうな顔をして、部屋を出ていった。

 その後、事件が起こり、それを高学歴のインテリ派と思われるメガネの人が解決して、番組は終わった。

 うん、三すくみの会話劇などがあり、とても面白い番組だ。今度からは毎週見ることにしよう。まあ、今度があるかは知らないけどね。

 と、そんなことを思っていたら睡魔が襲って来て、眠りについてしまった。


⇒「バイザー」~「山の上ホテル」~


しかしそれと同時に私はサムライを突き飛ばす。

そして部屋の隅まで何とか逃げることができた。




私には分かる。こいつは私の味方ではない。

この部屋は組織との連絡のために音声が記録されるようになっている。

今の会話を聞いた組織は今、確実に私が「赤い何か」に取り付かれたと思っていることだろう。




───それが奴の、狙い・・・!!


あとは私を始末し、金華猫の秘密を明かすことが目的か。

それともほかに目的があるのか?

ただ、どちらにしろ奴が潜入捜査員か、あちらの住人であることは、レポートを見るより明らかであった。


「ふん、まだ抵抗するだけの力が残っていたか。」


そう言ったと同時にサムライはこちらに向かってくる。

距離は約9,10メートル。

サムライはすでに剣を右手で構えている。




私はおもむろに懐の煌びやかに光るパイプを取り出し・・・・・・っと、右手は切られていたんだった。

気を取り直し、ライターで火をつけ、そして吸う。そこで、


「タバコぐらいゆっくりと吸わせてくれないか」


と私は試しに聞いてみる。

サムライは無表情のまま、


「俺も暇ではないんだ。」


などと言い捨てる。なんとも薄情な奴め。

そしてサムライはそのまま剣を振る。


ああ・・・。


なんでこんな・・・・・・・








なぜこんなに上手くいってしまうものなのか。




私は彼の剣をパイプで防御する。

それを無理やり跳ね除けようとする彼。


・・・・しかしなかなかパイプは斬れない。

苦悶する彼の表情がよく見て取れる。



「ダイヤモンド製。斬れないぞ。」


私のその言葉を聞き、サムライは剣をパイプから離し、間合いを取る。

そして約9,10秒の沈黙・・・・・・・。



「・・・・・なぜだ・・・・・・・・・?」


彼は唖然とした顔でこちらを睨んでくる。



「なぜ斬った右手から血が出ない・・・・・・?」


彼のその言葉に私は答える。





「・・・・私も長い年月を生きたものだ。

実に87年。その間に私も次第に衰えて行った。

そりゃあそうだ。老い、これは誰にも止められない、誰も回避することのできない。

生きる上での、枷・・・・・・・。


しかし私はその枷を見る前に一度生死をさまよってな。

なーに、アフリカへ旅行した際に地雷に引っかかってしまったのだよ。

両手両足を持っていかれ・・・・毎日のように悪夢を見たさ。

そして私は、生き延びるために、両手両足から枷という概念を捨てたのだ。


もうわかるだろう?










義手・義足なんだよ。この体は。」


私はサムライがあっけに取られている間、1秒あるかないか。その間に懐にもぐりこみ、パイプを目に向けて吹いた。

灰が飛ぶ。侍の目を闇へと導く。


「ぐっ・・・」


そして私はもっていたライターでモスコミュールのかかった彼の服に火をつけた。





       7



「痛・・・・・・・」


目覚めると俺は真っ白の場所にいた。

床はつるつるふかふか、略してつるふかの絨毯が敷いてあるような間隔。

誰かいないかと辺りを見回すが、人の気配は感じられない。


まったく・・・・・・・・







俺は誰だ?






⇒「K」 ~「三すくみ」~

「本来、荒川の位置には俺が居たからな」
「位置、だと?」
「あの赤いアレ、アレを削除するのは俺の仕事だ。たとえば……」
 そう言って、サムライは後ろに振り返った。と、同時に抜刀する。空を切り裂く音がし、その後を追うように湿った音が響く。
 サムライの目の前には、あの赤いスライム状の何かが落ちている。しかしそれは切れたままで修復されず、段々と固まっていった。
 俺のほうを振り向きながら、サムライは言う。
「この通りだ。こいつらは、今のところこいつでしか切れない」
「……何故その刀は、切れるのだ」
「こいつのおかげ」
 そう言うと、彼はヒュッと刀を振った。透明な液体が、刃先をつたい、宙へと散っていく。雫はそのまま床に落ち、瓦礫の上に染みを作った。
 何故だろう、その染みに対する恐怖感が浮かぶ。
 恐れに俺は、サムライの顔を見上げた。
「この液体が、こいつらを固形化させる」
「なんだ、それは」
「モスコミュール、というかアルコール全般だな。俺のは特別、モスコミュールだ」
 誇らしげな顔をするサムライを見て、俺は心底疲れた。
 先ほどまで必死で戦っていたあの赤い奴の弱点は、なんと手近なところにあるアルコールだった。それなら、すぐ側の冷蔵庫の中にたくさん入っている。それで戦えたはずなのに。
 ……しかし、何故モスコミュールなんだ?
「それで、荒川が何か変なことを言っているのを聞かなかったか?」
「変なことだと」
「そう、変なこと。たとえば『ハイパーマグナムショッキングピンキレーザー』とか『エレクトリカルムサシソードセカンド』とか、やたらカタカナの多い言葉だな」
 ……。
 センスが無い。
 俺は記憶の中を探った。あの青年が現れてから、ケータイに荒川からかかってきた。それに答えて、あの扉の前まで連れて行った。そこで二、三話をして……。
「……スーパー・エレクトリック・ディバイン・デストロイ-弐式改」
「愛も変わらず長ったらしい」
「この言葉がどうかしたのか?」
「館長さん、あなたも荒川と長いと聞いているが。だったら、あの男が何かするときに決まってやる癖、覚えてはいないか?」
 思い出す。
 そういえば、前に博物館の蔵書整理をしているとき、奇声を上げていた。絵をずらすとき、センスの無い技名を叫んでいた。
 そういえば、あいつは何かをするたびに叫ぶ癖があった。
 そういえば、そう思えてきた。
 そういえば、そうだったのだろう。
「そう、奴は何かをするたびに技名を叫ぶ。そして館長さん、あなたが来たとき荒川はいなかった。その代わりに居たのは赤い奴ら」
 サムライは、まるで推理ドラマかのように語りだす。
「赤い奴らは、その後俺が来た時、増殖しつつすらあった。そのことから、あなたは赤いのを殺せたわけではない。にもかかわらず、荒川のような結果にならないでここに存在している」
 そういえばそうだ。
 そういえば、何故俺はここに居るのだ?
 そういえば、荒川はどこに行ったのだ。
「それって、おかしくないか?」
 サムライの右手には、抜き身の刀。その刃先が、そっと俺の喉元に向けられた。
「合理的な説明。可能性一、あなたは荒川と同じ運命をたどった。可能性二、先天的に何らかの赤い奴らへの対抗を持っていた」
 しかし何故だろうか、俺はその刀に恐怖を覚えなかった。それどころか、それを得ようとすら思えてくる。
「非合理的な説明。可能性一、あなたは赤い奴らにとって見方だった。可能性二、あなたは最強だった」
 手を伸ばし……。
「答えは……可能性その一、あなたは荒川と同じ運命をたどった!」
 その手は、切り飛ばされた。


⇒「バイザー」~「つるふか~」~