マネージャーは続けて私に問うた。
「あなたは何故、山の上ホテルに入ろうとしたのですか?」
「そ、それは……」
記憶を取り戻すために……、などとはとてもじゃないが言えない。さて、どうしたものか。
そういえば、山の上ホテルは締め切り間際の作家が缶詰になることで有名ではなかったか?それとも、ジンギスカン作戦を指示した牟田口廉也が帰国後に最初に泊まったホテルだったか?いや、違う。絶対に前者だ。
なので、私はこう答えた。
「川端康成や三島由紀夫が缶詰になっていたホテル。読書家の私なら、一度訪れたいところです」
「ほう!あなたは読書家なのですか?」
私がそう返答すると、川瀬佐重喜さんが話に割り込んできた。
「それで、あなたは最近の作家では、誰が好きですか?」
「そうですね。佐藤友哉さんとかですかね。他には……」
⇒「バイザー」~「ウィワクシア」~